髪
これは、限りなく私の思考に近づいちゃうお話。
髪をのばし続けて5年くらい。
今の私をみて「髪が短い」と表現する人はいない。
きっかけは特になかったと思っているけど、
心のどこかで髪がきれいなあの子に
憧れていたんだと思う。
ところで「髪が長い人」をみた多くの人が無条件にぶつける質問、
「髪、どこまで伸ばすの?」問題。
この質問の最適解はなんだろうね。
私の場合、(だるいなあって思いながら)
「ヘアドネーションしたくて!もう少しかなあ」と返すようになった。
実際はそんなことなくて。
髪が伸びると格段に容姿がよくなる。
これは肌感でもあるし、粗が隠れるから事実として多分そう。大人っぽくなれる。
それに騙された男性は、私の後ろ姿(時に目の悪い人は正面の姿)を見て、
声をかけようと思ってくれるらしい。
悲しいかな、私はいつからかそれを喜ぶようになってしまった。
少し長い髪が、平凡な私のアイデンティティと化してしまった。
そしてファッションも、メイクもそれらしく変わってしまった。
「それでいいの。きっと今は。」と
慰めることが、私にできる唯一のことになった。
お風呂からでてアイスを食べながらSNSを見ていると、女の子がメンズカットに挑戦する動画がでてきた。
「本当はどうしたいか知ってるよね?」と語りかけるように。
嬉しそうな表情で短い髪を眺める女の子を凝視し、いつものように「今はいいんだよ」と自分に言い聞かせて、そっと画面を閉じた。
いつか、本当にばっさり切れる日を夢見て
今夜も数十分のドライヤータイム。
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