山尾悠子『迷宮遊覧飛行』を読んだ
好きな人の好きなものは私もきっと好きなので、知ると触れたくなる性があるものの、あまりに多くのきらきらした宝箱を見せてくださるので目移りに次ぐ目移りで、私にとってはまさに迷宮だった。初めて聞く名前も多く、自分の無知と教養の無さを思い知るばかり。今の積読解消後、読みたい最低限のメモ。山尾悠子の文章は小説しか読んだことがなかったので、読書遍歴や等身大のエッセイを読めるのが珍しく、同じ世界で生きてるんだと実感できる瞬間が不思議で楽しく読んだ。
倉橋由美子『聖少女』
金井美恵子『兎』
太宰治『魚服記』
ボルヘス『バベルの図書館』
高橋たか子『人形愛』
笙野頼子『硝子生命論』
長野まゆみ『45°』
澁澤龍彦『思考の紋章学』
礒崎純一『龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』
ミヒャエル・エンデ『鏡の中の鏡 迷宮』
須永朝彦『就眠儀式』
中間にある短編が非常に好きだった。
突然の啓示から始まる出会いと覚悟と危うく絢爛な世界は虎の毛皮のイメージ。
身近な卵の話。夢見る卵か夢の中の卵か。
不眠症故のろくでもない思考にからめとられないために生み出した理想は塔の上、明るい陽の射す部屋で眠り続ける彼女。
エレベーターの悪夢。
ラプンツェルのように塔の上でただ眠って暮らせたらどんなに幸せだろうと仕事に追われて生きるのが嫌になると私もよく考えるので、思わぬ共通点ににこにこしてしまった。ただ、ダイヤモンドの様な形の窓格子から差し込む光がベッドに落とす光と影の美しさ。直射日光の当たらない影で眠る少女。同じシチュエーションで想像していたからこそ、細部に宿る美しさやこだわりの違いにため息がでる。私の妄想のなんと雑でこだわりのないこと。理想だと謳って頭の中で構築してすごすなら、もっとこだわり抜きたいもの。自分だけの世界だとしても。
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