「ブランディング」とは何か? BRANDとINGに分けて考えるとわかりやすい
ブランディングというと、セルフブランディングといった自分を目立たせる「売り込み」のような文脈で語られたり、ロゴのような「デザイン」中心に語られたりと、その定義は実にさまざまで、その本質を捉えきれていないような気がします。
ここでは「ブランディング」について、私の考える定義をできる限りわかりやすく解説したいと思います。
結論からいうと、ブランディングとは、「モノ」から「ブランド」へ、企業や商品をブランド化していく活動。つまり、企業や商品に、理想的な意味や価値を付け「あるべき姿」として規定し、それを「カタチ」にして「伝えていく」活動といえます。(※「モノ」と「ブランド」の違いについては、前回の投稿を参照)
具体的に、次の2つの点から考えていきましょう。
1.送り手と受け手の二者の視点で考える
「ブランディング」とは何か?とあらためて考えるには、送り手と受け手という二者の視点で考えるとわかりやすいかと思います。コーポレートブランドの場合、送り手が企業、受け手は顧客やステークホルダーを指します。
その時に、送り手側が持っている「あるべき姿」や、「こう思われたい」という意識と、受け手側が捉えている「こんな姿だ」「こういうイメージだ」というブランドの姿にギャップがあることが多いのではないでしょうか。端的にいえば、そのギャップを埋める活動がブランディングです。
これは、一個人をブランドと捉えて考えてみると理解しやすいでしょう。たとえば、「自分は知的で、クールに思われたい」と思いながらも、周囲からは「のんびりしていて、いい人だけど頼りない」と思われていたとします。「そのギャップを埋めるにはどうしたらよいか」と考えたとき、ふだんから自分のあるべき姿を意識して、話す言葉や振る舞い、身だしなみから服装にまで、自分のあらゆる行動を「あるべき姿」をベースに変えていくことで、少しずつ送り手側と受け手側のギャップを埋めていこうとするのではないでしょうか。
つまり、送り手側があるべき姿をしっかり認識して、その行動を変えていくことで、受け手側のイメージとのギャップを埋めていく。その一連の活動がブランディングであるといえます。
2.BRAND+ING に分けて考える
では、実際のブランディング活動ではどのようなことを行うのか。「ブランディング/BRANDING」という言葉を「BRAND」と「ING」の二つに分けて説明してみましょう。
BRANDは「あるべき姿を規定してカタチにする」、つまり自分たちの会社や商品はどんな価値を持ち、何をめざしているのかを明確に定義して、それを言葉やデザインでカタチにしていくというアイデンティティ開発。INGでは、「あるべき姿をあらゆる活動を通じて、伝え、浸透させる」コミュニケーション活動だといえます。
つまり、あるべき姿を規定して「カタチ」にし(BRAND)、それを「伝えていく」(ING)活動が、ブランディング(BRANDING)です。
さらに分解すると、BRANDは「ヴァーバルアイデンティティ」と「ビジュアルアイデンティティ」の2つのアイデンティティ開発に分けられます。理念やスローガンなど言葉でカタチにするものと、シンボルマークやロゴなどビジュアルとしてカタチにしていく活動です。なかでもCI(コーポレートアイデンティティ)とは、コーポレート(企業)を対象に、言葉と視覚でカタチにしていく活動といえるでしょう。
そしてINGは「インターナルコミュニケーション」と「エクスターナルコミュニケーション」に分けられます。あるべき姿を社員に浸透させ、共有する社内コミュニケーション活動と、社外に向けてあるべき姿を発信し、世の中に認知・理解させていくコミュニケーション活動です。
このBRANDとING、言いかえれば、「何を伝えるべきか(What)」をしっかり考え、そののちに「どう伝えるか(How)」を考える作業だとも言えます。
特にブランディングで誤解されがちなのは、ブランディングのために「広告をたくさん打とう」とか、「SNSを活用しよう」、「ホームページのデザインを変えよう」などと、つい「どう伝えるか(How)」というINGの部分ばかりに目を向けてしまうことです。それよりまず「何を伝えるべきか(What)」のBRAND部分、つまり「あるべき姿」が明確になっているかが重要です。
なぜなら、あるべき姿が明確になっていないと、さまざまなコミュニケーションの施策に一貫性がなくなり、効果的に価値やイメージを受け手側に蓄積させることができないからです。
INGを検討する前に、企業として何を伝えていくのか、どう見られたいかをはっきりさせ、「あるべき姿」をしっかりと定義してから、コミュニケーション活動を考えるべきです。
私がブランディングを進める際に注力するのも、BRANDとINGのうち、BRANDのほうで、あるべき姿を明確にすることに9割の力を注いでいると言ってしまってもいいほどです。
「あるべき姿」を規定すること。それがブランディングの ”はじめの一歩” となるのです。
詳細は、拙著『選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方』(講談社+α新書)でも触れておりますので、もしよろしければご覧いただけますと幸いです。
また、こちらのnoteもあわせてどうぞ。
『いまさら聞けない!? 「ブランド」っていったい何なのか?』
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