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夏目漱石「こころ」の雑感

2年前夏目漱石の「こころ」をはじめて読んだ。
その時感じたことを記したiPhoneのメモを先日発見したので、稚拙ではあるもののそのまま投稿してみる。
当時、この本に猛烈に引き込まれて、本を読んだ感想や考察を語り合う仲間が欲しかった。
これを見つけ、一緒に紐解いてくれる仲間がいたら幸いに思う。

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私の中で引っ掛かっているワード
覚悟、浄土真宗、日蓮宗、廻る、血潮

・精神的に向上心のないものは馬鹿だ→僕は馬鹿だ
・君の心でそれを止める覚悟はあるのか
・一体君は平生の主張を、どうするつもりなのか
・「覚悟、覚悟ならないこともない」

先生:恋にうつつを抜かして、馬鹿げている。今までの考えを捨てて、この恋にに身を委ねていく覚悟はあるのか。それくらいお嬢さんを愛しているのか。責任(結婚)する気もあるのか。 と言った?

K:色恋に溺れそうになっている?(Kは苦しい)。そのような馬鹿げた無精進をして、今までの信仰、行いに背いている行為だ。Kはその罪(恋)の責任をとって、自分を戒める(自死する)覚悟はあるのか。 と言われたと思った?

進むが、この恋の進展と、自殺
退くが、この恋の終わりと、生き続けること
ですれ違っている

2人の言葉の捉え方はずっと勘違いのまま進んでいく(アンジャッシュのコントのように?)

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Kについて

本当は『浄土真宗、日蓮宗、養子 などが関連した様々なこと(ここがまだ私の中で咀嚼できてない)』があって、自身や家族に、生きることを肯定されていなかった。

大切にしてくれた養子先も裏切って、本家からも絶縁された。死んだように生きていた。
そんな中お嬢さんに恋をした、自分の信仰に背く行為。苦しかった。

誰にも言えずにいた。恋に進んでいくつもりはなく、その苦しさを打ち明けた。先生と話し、「精神的に〜馬鹿だ。覚悟はあるのか。」と言われた。先生が言っていた意味は分かったし、本心でないこともわかっていたけど、受け取った時に覚悟の意味を自死に変換した。その後先生とお嬢さんとの縁談を聞いた。恋に敗れたことを理由に死んだことにしよう。家族には純白のまま記憶を汚したくない。死ぬ前に自分を理解してくれた(しようとした)先生には自分の思いや生きた記憶を覚えていて欲しい。先生の顔を一眼見たくなった。手紙を書き、首を切って自殺。襖、畳には血飛沫。(生きた血潮、Kのアイデンティティ?を先生にかけ流した。)


先生について
遺書を書いた。(この時既にKの血潮をかけられている)
本当はKや妻のことで思い詰めて、それを打ち明けることも、死ぬこともできずに、死んだように生きていた。自分がいなくなった後の妻はあまりにも可哀想だ。

妻に殉職のことをからかわれた。冗談だと分かっていたけどその時死のうと思った。妻には汚れなき純白のままいて欲しい、辛い思いをさせたくないので、明治天皇の殉職を理由に死んだことにしよう。

私に自分の生きてきたことを記憶していて欲しい。一眼見たい、会いたいと思ったが、会えず手紙を書いて私に残し自殺。

「自らの心臓を破って私の血潮を君に…」(この時「私」は、Kと先生の血が混じった血潮を、手紙越しにかけられた)


私について

この小説は時系列が行き来する。1章は現在から過去を振り返るかたち。現在(先生の死を知り、先生の記憶を得た)の視点を持ちつつ、出会いから最後にあった夏の日までの過去を振り返りながら書かれる。(私の語り口は、誰かに当てて書いた文章)

2章、両親と私では、私自身も家族との間に問題が発生する(仕事のこと、危篤の父をおいて飛び出してしまったこと)

小説では描かれていないが、私の父親が死んでしまった後は、罪の意識に苛まれることになる?(私は先生(と先生の中にいるKの2人分)の血潮を浴びている)

***

1章は誰かに向けて、先生と私の出会いを記した、私の文章。

この本は遺書で終わっているため、先生の遺書を読んだ後の私がどうなったかはページ上では描かれていない。

しかし、1章に過去を振り返る形で、現在の私(遺書を読み終え、家族に罪を犯してしまった)が登場している。この後、先生たちと同じ運命を辿り、自殺することになることが予測される。

この作品はK、先生、私の生きた記憶なのではないか。心、という作品(若しくは前半2章)自体が、「私の遺書」なのではないかと考える。


小説の中で、たびたび「廻る」という言葉が使われる。

人の心は伝播する?Kの思いは先生に、私に、そして、これを読んだ私たちに廻るようにも構成されている?(ずっと同じような事象を繰り返している)

もしくは、人はこころが誰かに廻って(伝わって)ほしいと願うのか。


この考え方でいくと読んでしまった私たちすら、自殺する可能性がある。とも考えられる。


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その他、検討事項


①もし輪廻しているのであれば、その根元であるKについて深掘りしていく必要がある。(咀嚼が終わっていない、浄土真宗、日蓮宗、養子やKの生い立ちについて、より深めていくことが、この作品を深めることになる?)

→ Kは浄土真宗の家に生まれて家族から絶縁されていること。先生との旅の中で日蓮宗(浄土真宗を批判している宗教)の誕生寺を訪れることの関連性を掴むこと。

②その上で、先生の死の経緯を、Kとリンクさせながら考える事が必要。Kの死について、K目線での経緯は文章に記されていないが、先生の死については詳細に書き記されている。Kの血が流れた先生の死を解釈する事がKの死を解明することになる。

③2つが解明すれば、「私」が2章で経験したことを踏まえて、その後どうなったかの予測に繋がる?

④全てを踏まえた上で、私たちがどう生きていくのかを考えることに繋がる?

⑤こころは、表面的には「人はお金と恋で悪人にもなりえること」「人のこころの危うさ、不安定さ」のようなものがテーマ。


しかし、本当のテーマは
エゴイズム、廻る(伝わる)こと且つ、廻って欲しいと願う人のこころ?

言葉の受け取り方(2人の勘違い)、そのニュアンス、その人たちのルーツとか含めて、「こころ」自体を考えることがテーマなのかもしれない。

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