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真夏の車中泊


縁側から、虫の声が聞こえる。

なんという名前の虫なのかは知らないが、五月蝿いことこの上ない。クーラーが無い部屋はただでさえ暑いというのに、虫の声のせいでさらに暑さが増しているように感じる。

ベッドに潜ってから、何時間が経過しただろう。
午前3時。
もう夜明けがだいぶ早くなったから、あと1時間もすればすぐに窓の外も明るくなってくる。なのに私の目は昼間より開いていて、手元にある四角い鉄の塊と天井とをもう何時間も行き来している。


眠れない。

仕方ない、今日もやるか。あれを。


用意するのは鉄の塊と、煙草とライター、ヘッドフォン、そして車の鍵。

近くで寝ている妹と弟を起こさないよう、そっと部屋を抜け出す。ここまでは順調。難関なのは玄関から一番近い部屋で寝ている母を起こさないよう玄関から出ることだ。
私の家の玄関は田舎でよくある「(ガラガラ)ごめんくださーい」のタイプの扉だ。音がかなり響いてしまううえに、開けるとカランカラン音が鳴る木製のドアベルがかけてあるので、さらに難易度は高い。

家もボロなので歩くたびに床がぎしぎし鳴るので、細心の注意を払わなければならない。ゆっくり、音がならない位置の床を見極めて家を抜け出すのだが、多分、きっとバレている。

まあそんなことはどうだっていい。
どうせバレていたって何もありゃしない。
「家をこっそり抜け出して遊びに行く」ごっこがしたいだけだ。


家を出たらそんな遊びのことなんてくだらなくてどうでもよくなるので、玄関先ですぐ煙草に火をつける。念の為言っておくが、決してヤニカスではない。ただ、1日に1箱吸わないくらいの本数の煙草を吸う程度だ。
深く吸い込んだら、空に向かって吐き出す。うまい。
ついでに星もよく見えるので一応それなりに眺めたりしてみる。唯一田舎に帰ってきて良かったなあと思うのは、星が綺麗に見えるということぐらいだ。あとは厄介なことしかないので、やっぱり田舎は嫌いだなあと再確認したところで、ヘッドフォンを耳に当てる。

梅雨もあけて夏本番とは言え、まだ最近の夜はそれなりに過ごしやすい気温だ。私が暑いのが平気な方だからそう感じるのかもしれないが。
だから夜の空気を感じながら吸う煙草はいつもより美味しく感じる。気が向けば散歩なんかもしたりして。
昼間の私は大変真面目なので歩き煙草なんてしたりしないが、夜は別に誰も見ていないのでしていないのと同じことだ。まあ、見られていても知らん。


散歩が終わったら車に乗り込む。
過ごしやすいとは言え歩くと少し汗ばんでしまうので、じっとり身体に纏わりついた熱気を車の冷房で一気に冷ます。暑いのは得意な方だと言ったが、やっぱり真夏にクーラーガンガンは「ふぇー」と声が出てしまう程度には気持ちがいい。

ある程度適温になったところでクーラーを止め、窓を開けて煙草を吸いながら夜明けを待つ。ここまでで大体30分くらいなので、あと1時間くらいはまた鉄の塊にお世話になる。

ここで眠れそうなら気にせず眠ってしまうのだが、眠らずに朝日が登ってくるのを見てから寝られた日は大変満足してよく眠れる。朝日は何故こうも人を眠りに誘うのが上手いのか…私は将来朝日のような人になりたいものだ。いや、なりたくはないかもしれない。朝日のような人と結婚するくらいがいい。


以上が、最近の「真夏の車中泊」ルーティンである。
引っ越して一人の時間が減ってしまった私の、真夏にしか出来ない(いや、冬以外なら出来ると思うけど)新たなストレス解消法だ。

一人になりたいときや考え事をしたいときに丁度よいのだが、熱中症になるリスクがあるし、周りの人にもかなり心配されることをご了承頂いたうえで実践して頂くことをおすすめする。
熱中症になっても私は責任を負わないからね。まじで危ないんだと思う。


でもさあ、夜中とか明け方涼しくて超気持ちいいの。まじで。
夜もうだるような暑さにならない限りは多分やると思う。

突然私のnoteの更新が途絶えたら、本当に熱中症で死にやがったコイツ、アホかな。くらいに思っておいて頂けると幸いです。

それでは皆様、よい夜を。

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