第22回: 代替食品に流れ込むマネー
2021年4月28日掲載
脱炭素化に向けて世界の動きが加速しています。今月米国のバイデン大統領が主催する気候変動サミットが開催されました。40の国・地域と機関の代表らが参加して温室効果ガスの削減に向けた政策が協議され、今後の世界経済の行方をも占う発表が相次ぎました。特にバイデン大統領が打ち出しているグリーン政策は過去最大規模の公共投資であるため、大きな注目を集めています。そこで今月は、脱炭素化の中の食とマネーについて考察します。
相次ぐ目標引き上げ
サミットでは各国首脳からこれまで以上に踏み込んだ発言が相次ぎました。バイデン大統領はこれまで温室効果ガスの排出量を2025年までに26%~28%(05年比)削減する目標を掲げていましたが、今回それを50%~52%へと削減目標を大幅に引き上げました。
世界最大の排出量である中国は昨年掲げた「60年までに実質ゼロを目指す」ことは変えなかったものの「30年までにピークを迎える排出量をその後の30年間で実質ゼロにするには大変な努力を要する」として、各国に理解を求めました。
日本の菅総理は政権発足後に「30年目標は26%減(13年比)とし、50年には排出ゼロを目指す」としていましたが、今回のサミットでは「30年に46%削減」とこちらも目標を上積みしました。ただ具体策についてはまだはっきりしていません。エネルギーミックス(電源構成)の議論がまとまっていないからです。政府は再生可能エネルギーの比率を増やそうとしていますが、世論の影響もあって、原発の位置づけすらまだ定まっていないのが現状です。
いずれにせよバイデン政権は消極的だった前政権のエネルギー政策を大きく転換しました。そして各国は、環境問題が世界共通の差し迫った脅威であることを改めて思い知らされたのでした。
マネーは代替食品へ
脱炭素化に向けての食で注目されているのは、フードセキュリティ、アグリテック、フードテックです。バイデン政権は200兆円のインフラ計画の中で環境対策を重要な投資分野と位置づけ、「行動した国はクリーンエネルギーブームの恩恵を受けるだろう」とまで述べています。そうした背景から、今特に投資資金を集めているのが代替食品です。
図は動物性食品を代替するタンパク質の開発案件への投資の推移を示しています。ご覧のように17年以降資金調達した案件は急増し、20年は前年の3倍となる31億ドル(約3,300億円)に至りました。中でも植物性食品が圧倒的なシェアを占めており、代替肉、代替乳、代替卵といった商品に投資マネーが流れ込んでいるのが確認できます。
ついでシェアが大きい発酵タンパク質は、微生物由来のタンパク質でつくられる乳製品や肉製品を指します。畜産と比べ使用する土地、水、温室効果ガスが圧倒的に少なく、近年開発する企業が増えています。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や元米副大統領のアル・ゴア氏も投資している新興分野です。
これから注目される日本の食材
盛り上がる米国ほどではありませんが、日本でも資金調達のニュースが続いています。代替肉を開発するネクストミーツ(東京都新宿区)は今年1月、米国の新興市場であるОTCブルティンボードに上場を果たしました。同社は日本国内やシンガポ−ルでの販売を加速させているだけでなく、今後米国はじめ各国に生産拠点を設けることも発表しています。創業から7カ月での上場は異次元の成長と評され、今後の動きに注目が集まっています。また、大豆由来の植物肉原料を開発・製造するDAIZ(熊本市)は、今月シリーズBラウンドにおいて18億5,000万円の調達を発表しました。累計資本調達額は30億5,000万円で、代替肉新興企業としては国内最大となっています。
このように、国内の代替食品への投資は植物肉関連のものが多いのが現状です。しかしながら本連載16回でご紹介した通り、米国の代替食品市場の売上トップは植物性乳で、その売上高は植物性肉の2倍以上です。つまり日本では、今後新たな代替食品が多数出現する可能性があると考えられます。
例えば海外の投資家は、日本の発酵技術に関心を寄せています。特に日本特有の発酵カビである麹菌は旨味を引き出す上添加物なしでも貯蔵性が高いとして注目されています。先述の代替食品がフードテックと言うのであれば、日本の発酵技術はいわば日本古来のフードテックと言えます。従って今後は、こうした発酵技術やブランドをもつ企業や新興企業だけでなく、老舗企業への投資も期待されます。コロナが落ち着いて訪日客が戻ってくる頃、海外投資家による日本の新旧フードテック探しが流行するかもしれません。
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