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流浪の月 凪良ゆう 感想

知人に借りて読みました。

普通に面白いです。でも、めちゃくちゃ面白いから絶対読んで!ではない。しかし好きな人にはぶっ刺さる作品だと思います。文学的かつ心理的。
ページ数はありますが、文章が難しくないのでさっくりと読めると思います。読書感想文とかにもおすすめな感じ。

あらすじ

自由な父母を持ち幸せに暮らしていた更紗だったが、父を亡くしたことで母が蒸発し、状況は一変。預けられた叔母の家の息子に性的虐待を受けるが言えないでいた。そんな中、公園で一人で子供を眺めていた通称”ロリコン”の文に「家にくるか?」と誘われついていく。文とは幸せな2カ月余りを過ごすが、少女誘拐の罪で文は捕まってしまう。
そして数年が経ち大人になっても、”ロリコンに誘拐された少女”とのレッテルを張られ、生きづらいままだった。
そんな時名前を変え喫茶店を経営する文と再会する。DV彼氏や文の恋人となんやかんやあり、二人は一緒に過ごすことになる(ハッピーエンド)

実は文はロリコンではなく男性の二次性徴が来ない病気で、厳しい家庭環境もあり、女性を愛せない…的な感じ。
更紗も性的虐待の過去から男性が得意ではない。
だから二人は恋人ではないが、更紗が幼少期あこがれた父母のような自由に生きるパートナーになった。みたいな感じ。

感想

本当は文は悪いやつではないんですが、子供の更紗は「性的虐待を本当に受けていたのは親戚の息子なのだ」とどうしても言えないんですね。で「文は悪くない」というと周りは同情したように振舞うだけで、信じてくれない。だから周りに期待するのをやめて、あこがれた父母のように周りを気にせず自由に生きることもやめて、自分を殺して生きるんです。
これ、別に更紗のような経験がなくても、誰しも大人になるとある程度理解できるんじゃないかな。
社会っていう枠組みから外れていくことは、常識がない、つまり悪であるとされてしまう。
違うといってもそれは建前だと勝手に判断されてしまう。
それに抗い、理解してもらうのは、とても疲れる。だから、あきらめてしまう。
そんな経験ありませんか?
それを、この本は更紗と文の物語を通してゆっくりと伝える……って感じですね。
とても情緒的かつ文学的です。
私みたいにこうだぜ!という明確なメッセージを突き付けてくる作品が好きな人にはぶっ刺さりはしませんが、こんな趣のある作品が好きな人には絶対に名作だと思います。
つまり、私好みではないものの、確実な秀作なんですね。

前にも話しましたが映画や漫画、本は自分の過去を読むようなもの。
自分の経験になぞらえて作品から何かの感情を読み取るわけです……。
この本、疲れた大人にこそ響くものがありそう。

真理ってことだよね!って主張の強い作品は好きですが、やんわりと教えてくれる本作も芸術的です。

読書の秋も深まってきました。気になった人はぜひ。

ちなみにこの作品映像化されているんですが、作品の趣旨からすると映像化しても面白くないんじゃないかなと思います。ただのダラダラとした物語になりそう。
私は邦画嫌いなので絶対に見ませんが。

ただ、キャストはものすごくはまっていてびっくりしました。
特に文役・松坂桃李とDV彼氏役・横浜流星は素晴らしいキャスティング。ほかにいないんじゃないかってくらい、イメージ通りでした。

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