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ぶらり散歩、金沢。
城下町、金沢はわたしが好きな街のうちの一つだ。美しい街並みに、工芸品、そして美味しい食べ物たち。
先日、妹と三度目である金沢を訪れた。
初めて金沢を訪れた人の多くが向かうであろう日本三大庭園である兼六園だったり、金沢城だったりは今回はパスすることに。
ホテルからてくてく歩いて向かったのは、尾上(おやま)神社。
加賀藩祖である前田利家公とその妻、お松の方を祀る由緒ある神社である。
もちろん中には、前田利家公の銅像が。
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なんで、シンデレラのカボチャの馬車のようなものを背負っているんだろう、と思ったが、ちゃんと立札に説明がなされていた。これは、母衣(ほろ)と言い、流れ矢を防ぐために鎧の背にかけた布のことらしい。戦国時代に騎馬武者はこれを背に戦場を駆け巡って、連絡の役を務めたそうな。
ちなみに、このような騎馬武者を母衣衆と呼び、織田軍団の衣衆は佐々成政を筆頭とした、十人の黒母衣衆と前田利家を筆頭に九人の黒母衣衆とで合計十九人だったらしい。
目立つので、諸隊のガイド的役割を果たすけれど、逆にいえば敵側からも目立ってしまう危険なこのポジション。
まさに命がけ・・・。
きっと機敏に動けて、とっさに戦況の判断ができる優秀な武士しか任せてもらえなかったのだろうな。
さすが、加賀百万石の前田家を一代で築き上げた男・・・。
わたしは学生時代、古典や歴史について学ぶのが好きだった。
何百年前もの過去にこの国で何を考えて生きてきたのか、どう生きてきたのか、その軌跡をたどれることへのロマンや、ふとした折にそこに浮かび上がるいつの世も変わらない人間くささが堪らない。
こうやって大人になって、様々な土地に実際に足を運んでみると、その人ゆかりの土地だったり、建物だったり、教科書で学んだ人物たちが全国各地に息づいているから面白い。
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蓮子をかたどったものとベンチを見つける。
くるくるした植物は、春の味覚、ぜんまいだろうか・・・?
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近づいてみると、カエル・・・!
可愛い。右端のカエルなんて愛想よくにっこり笑っているように見える。
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茎のところにも、2匹のカエルが・・・。下のカエルのぽってりしたフォルム、なんとも言えない感じでこれまた可愛い。
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なぜカエルなんだろう・・・。何か、前田利家公にゆかりがあるのだろうか。
何か説明されていないかなと、立て看板らしきものを探してみるのだが、それらしきものは見つからない。
きっと利家公がなんらかの窮地に立たされたときに、このカエルたちは大事な役割を果たしたんだろう。それか、妻のお松さんがカエル愛好家で飼って愛でていたのかもしれないなどと思いながら、その場を後にする。
ちなみに。
後で調べてみたのだが、特に前田利家公やお松の方とこのカエルは関係がなかった。『夏の夕刻』という作品の一部で、今まで身をひそめていたカエルが夏を迎え、そろそろ出番だなと姿を現したところを表現して作られたそう。
・・・まあ、可愛いかったから、良しとする。
ちなみに尾山神社といえば、有名なのがこの神門。和・漢・洋の三つの建築様式が用いられていて、全国的にも珍しいらしい。国の重要文化財にも指定されている。
訪れた方の多くが、この門の写真を撮られていた。
この日は曇り空模様だったのだが、もし晴天だったなら、最上階のステンドグラスが光を浴びてさぞ美しかったんだろうなあ、と思う。
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重い雪から木の枝を守るためにツリーのような形に施されている、雪吊り。
目にすると、金沢に来たぞって実感できてなんだかうれしくなる。
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お参りした後は、いくつか並んでいたうちのおみくじの一つが何だか珍しかったので、ひいてみる。
昔何かで聞いたことのある話だけれど、おみくじをひくときは、何も考えずにひくのではなく、今悩んでいることや知りたいことを心で唱えながらひくと良いらしい。そうすると、それに答えてくれるようなおみくじがひけるそうな。
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ここからは、21世紀美術館へ向かう。
何十分か歩くが、ここから金沢城や兼六園へも行ける。
金沢は、観光スポットがぎゅっと近くに固まっているのもうれしいポイントの一つだ。
この時は、11月の三週目だったが、すっかり秋。
色付いた葉が美しい。
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地面に落ちた葉も、なんだか哀愁があって晩秋らしくて良い。
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見えてきた21世紀美術館。
21世紀美術館は、「 新しい文化の創造」と「新たなまちの賑わいの創出」を目的に開設された美術館である。地下の「スイミング・プール」の存在でこの美術館を知った人も多いのでは、と思われる。
普段あまり現代アートと馴染みのないわたしでも楽しめる企画展が多く、何気に3回の金沢訪問にて3回とも足を運んでいる。
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美術館の周りにもちょっとしたアートが点在している。
「何に見える?」とわたし。
「赤血球。」
と妹。
…もう赤血球にしか見えなくなってきた。
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そのときやっていた展示は、「DXP デジタル・トランスフォーメーション・プラネット 次のインターフェースへ」とコレクション展は「電気 音」だった。
デジタル・・・トランスフォーメーション・・・プラネット??
妹が21世紀美術館に行ってみたいということで行程に入れてたが、もし近くの美術館でやっていたとしても、正直なかなか足が向かないようなテーマの展示である。
普段なかなか関わりの薄い分野のアートで、難しいものも多かったけど、わたしの知らなかった世界を垣間見れて良かった。生きていれば、自分の興味のあるものや話題になるものばっかりに目を向けがちだから。
書けば長くなるので、今回の記事では展示の中身については割愛することにする。
21世紀美術館を満喫すれば、すっかり夕方の気配に。
ここから、金沢文化を代表する茶屋街の一つ、「ひがし茶屋街」へ向かう。
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ひがし茶屋街まで、あと少し。川の向こうに、立ち並ぶ建物といい、どこか渡月橋から見た京都の嵐山みがある。
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以前ここに来たときは昼間だったが、夜はまた雰囲気ががらりと違う。
電灯に優しく照らされる情緒あふれる町並み。
なんだかタイムスリップしてきたようで、思わずほうとため息をついてしまう。
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金沢の工芸品といえば、九谷焼、輪島塗、加賀蒔絵、金沢箔(金箔)、加賀友禅などなどたくさんある。
ここには飲食店の他、伝統工芸品を扱うセレクトショップも数多く立ち並ぶ。
夜ということもあり、お店は開いていたらラッキーくらいだったので、ぎりぎり間に合ってうれしい。
たとえ手が届くお値段でなくても、意向を凝らした美しい品々は、見ているだけで心が潤ってゆく気がする。
もう少し年を重ねたら、こういう一生ものの器を買って愛でたい。
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展示されていた鷹。
金色ってつくづく、華々しいなあ。
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金箔の使い方が素晴らしい食器。
こういう素敵なお皿、欲しいけれど何を乗せたらいいか迷うからきっとわたしは使いこなせないな・・・。
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ちなみに写真を撮る場合は、作品によっては、写真OKのもの、NGなものいろいろあるので、注意が必要である。
並ぶのは作家さんの高額な一点ものから、実用的な漆器や陶器まで値段も様々だ。
ちなみに前回は、金箔入りのガラスの箸置きとお茶碗、そして今回は九谷焼のお香立てを購入した。
旅先で一目ぼれしたものたちを、日常にそっと持ち帰れるというのはなんだか心躍る行為だ。
最後に金沢グルメで終わろうと思う。
北陸といえば・・・白身魚の王者、のどぐろ。
あっさりしているのに、濃厚な旨味。
はあ、なるほど、いかにも高価そうな味だと思ってしまったのは、そういう気持ちで食しているからだろうか。
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金沢の郷土料理、「治部煮」
江戸時代の加賀藩の時代から、武家や庶民の間で親しまれている料理だそう。鴨や根菜、お麩などいろいろな具材が煮込まれていて、滋味深い味で美味しい。
とろみのあるお汁が、冷えた身体にしみる・・・。後半わさびを溶かしすぎたので舌にもしみたけれど・・・。
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あと、金沢は麩も有名である。金沢駅構内で食べた、不室屋(ふむろや)さんの「麩スペシャル定食」も様々なお麩が一度に堪能できて面白かった。
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小料理屋さんなどでも見かけるとついつい頼んじゃう、生麩。
生麩のもっちりとした弾力ある歯ごたえとよもぎのほのかに甘い風味が期待を裏切らない。
左上のお皿は、衣をつけて揚げたお麩。
一口かじった妹が、
「カツかと思ったのに・・・。」
と何ともいえない表情をしていた。
そう、全部これお麩なのよ。なんかごめんね。
華やかな色合いの豆皿が素敵で思わず食べ終わった後に撮った一枚。
いろんな色鮮やかな九谷焼を見ていたら、我が家の食卓にも欲しくなってきちゃう。
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また近いうちに行けるといいな、金沢。