碧魚 まり

小学校の先生。食べることと旅行と喫茶店が好き。子どもたちのこと、食べもののことなど気ま…

碧魚 まり

小学校の先生。食べることと旅行と喫茶店が好き。子どもたちのこと、食べもののことなど気ままなエッセイを綴ります。子どもたちの瞳がきらきらする瞬間を引き出すために奮闘中。2024秋 出産予定。 公式コンテスト受賞#わたしだけかもしれないレア体験 #どこでも住めるとしたらetc…

マガジン

  • エッセイ

    これまでに書いたエッセイをまとめています。🍀

  • 先生だって、あのね。

    碧魚の、小学校の先生としての日常をちらり。

  • 母になるまで。

    妊娠が分かってから、わたしがお母さんになっていくまでの日々を綴ったエッセイたち。

  • わたしの口福

    食べることが大好きな人の、フードエッセイ。

  • わたしの、すき。

    わたしが愛してやまないこと、もの、場所など。

最近の記事

  • 固定された記事

家庭訪問先でステーキを食べて泣いた話。

「さあさ、もう焼き上がりますんで。」 玄関で靴を脱いでいると、にこやかにそう言われた。 もう、焼き上がり、ますんで・・・? 漂う焼けるお肉の、暴力的なまでにそそられるいい匂い。お昼に食べた給食はすっかり消化し終えている。ほどよく空っぽの胃が、物欲しげにきゅるきゅる動く。 ・・・ちょうどご夕食の準備中だったのだろうか。タイミングが悪くて申し訳ない。早くお暇しなければ。 そんなことを考えながら案内されつつ、部屋に続く廊下を歩く。 「さあさ、先生、こちらです。」 そして通さ

    • 「買いもの」の可能性 #未来のためにできること 

       服や鞄など、私は身につけるものを買う瞬間が好きだ。  色は、機能性は、質感は、心惹かれるデザインか。その価格は私の見出す価値に釣り合っているか。そうあらゆる角度から吟味し、いい買いものをしたと思えるものを手に入れたときは、晴れやかな気持ちになる。  しかし、大抵のものは手に入れたその日がときめきのピーク。時間の経過とともに、その気持ちは緩やかに下降してゆく。かつて、心惹かれたものも時間が経つと部屋の片隅に眠る。そしてまた新たなときめきを探しにゆく。「ものを買うこと」はそ

      • 創作大賞の結果を受けて

        昨日、2024年創作大賞の中間選考の結果が発表された。 碧魚まりの名前でやっているX(旧Twitter)アカウントには、創作アカウントが多いので、タイムラインはその話題でもちきりだった。 わたしは、だめだった。 先週から発表まだかなまだかな、とそわそわして結果を待っていた。数日前から何度も確認したメールボックスには何の知らせも入っていなかったから、だめだったんだろうなと思いながらも、もしかしたらの期待を捨てきれずにずらっと並ぶ作品名をスクロールした。 やっぱり名前はなかった

        • 給食の魔法 #未来のためにできること

          美味しく食べてもらう雰囲気づくりをすること。これが私が未来のためにできることである。 私は小学校で働いている。小学校といえば学校給食。担任を持っているときは、子どもたちと配膳の準備をし共に同じものを食べている。 年間約60万トン。 環境省の調査によると、それだけの量が学校給食から廃棄されているそうだ。1学級で食べ残される給食も毎日、そして全国と積み重なればこれだけの莫大な量になってしまう。 食べることは、命を頂くこと。多くの人々が手や心をかけ、食材や料理にしたものを生き

        • 固定された記事

        家庭訪問先でステーキを食べて泣いた話。

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        • エッセイ
          135本
        • 先生だって、あのね。
          35本
        • 母になるまで。
          10本
        • わたしの、すき。
          28本
        • わたしの口福
          36本
        • 旅エッセイ〜あの日あのとき。
          17本

        記事

          妊娠後期の最大の悩み。

          眠れない。最近本っっ当に眠れない。 ただ今妊娠9か月、妊娠後期と呼ばれる期間に入った。 お腹が息苦しいとか、立ち上がりにくくなったとか、トイレが近くなったとか、足がつりやすくなったとかマイナートラブルは何かとあるものの、最近のもっぱらの悩みは夜眠れなくなってしまったことである。 産休に入る前は、長時間の昼寝や朝に寝すぎなどの場合を除いて、ベッドに入るとものの数分で、すやあっと眠りの世界に飛び立っていた。 が、今はどうだ。 脳内に幾匹の羊に柵を越えさせても、大海原で泳ぐ鯨

          妊娠後期の最大の悩み。

          桃を引き寄せた話。

          もしもこの世に「引き寄せの法則」なるものが本当に存在するならば、わたしはこの夏、4回も桃を引き寄せてしまった。 1回目は、夫の会社でいただいたお中元のおこぼれ。 「じゃーん、お土産がありまーす!」 そう言って、取り出したのは見事なまでにどっしりした桃。芳香としか表しようのない、魅惑の香りを放っている。 これがわたしが出会った今年初の桃だった。 ご存じの通り、桃は高い。大きいものだと1つあたり400円~500円くらいはする。庶民にとって、そうやすやすと手を出せる果物ではない

          桃を引き寄せた話。

          昨日行ってきました、文フリ! いろいろ買えてほくほく🧡 お話できたみなさま、ありがとうございました✨ #大阪文学フリマ #文学フリマで買った本

          昨日行ってきました、文フリ! いろいろ買えてほくほく🧡 お話できたみなさま、ありがとうございました✨ #大阪文学フリマ #文学フリマで買った本

          丁寧な暮らしとは…自分なりにリスト化してみた。

          「丁寧な暮らし」なるものに並々ならぬ憧れを抱いている。憧れを抱くということはすなわち今の暮らしが丁寧な暮らし、とは程遠いことを意味している。 世間ではコロナ禍を経て、これまでよりさらに理想とする「豊かなお家時間」への認識と需要が広がったように思う。 その結果「丁寧な暮らし」「心地良く暮らす」「ミニマルな暮らし」「心が満たされる暮らし」様々なフレーズで、雑誌、書籍、SNS…あらゆるところで目につくようになってしまった。 そうして今の自分の暮らしの有様とおのずと比較してしま

          丁寧な暮らしとは…自分なりにリスト化してみた。

          予定日まで2か月を切った、今の心境。

          なんだか最近、道端や店で見かける赤ちゃんや子どもを、以前にも増して無意識で目で追ってしまうようになったな、と気づいた。 職業病の一種なのか、以前からわたしは就学前や小学生の子どもたちを見かけると、ついつい「ああ、あの子は4歳くらいかな」「あの子は高学年だろうな」なんて瞬時かつ無意識に、年の頃を予想してしまう癖があった。 自分に娘ができるとわかってからは、さらにそこに様々な感情がよぎるようになった。 わあ、よく眠っていて可愛い赤ちゃん、何か月くらいなのかな。 あの子、こん

          予定日まで2か月を切った、今の心境。

          メロンクリームソーダとおじいちゃん。

          メロンクリームソーダ、その姿を目にするたびになんて完成された飲み物なんだろうと、わたしは惚れ惚れしてしまう。 山奥の清流の如く透き通って煌めくエメラルドグリーン。そこに浮かぶ、ころんと丸い優しい乳白色。 頂上に乗っかるのは、不自然なほど艶やかな赤色のシロップ漬けサクランボ。 グリーンと乳白色の爽やかな色合いを、この赤色がきゅと全体を引き締めて、魅せている。 メロンクリームソーダをいただくとき、わたしなりの作法が存在する。 まずは、ストローで底からメロンサイダーを吸う。

          メロンクリームソーダとおじいちゃん。

          下鴨神社、古本まつりと真夏の参拝。

          数年前から気になっていた、夏の下鴨神社での古本まつり、今年ようやく訪れることができた。 …それにしても暑い。暑すぎる。 涼しい車内から出た身体には、もったりと湯のように身体を包む熱気は少々酷である。 古本市が並ぶ場所は、木陰になっているとはいえ、ところどころさんさんと日が差している。糺の森、と名づけられた自然豊かなここ。真昼は活動の盛りではないのか、頭上からは控えめな蝉の声が降ってくる。 日傘で暑さを凌ぐか否か。 本を手に取ってまわるには、いちいち畳んだり広げたりしなけ

          下鴨神社、古本まつりと真夏の参拝。

          産休に入って、1番したいこと。

          ついに、産休に入った。 毎年この時期は、さあそろそろ2学期が始まるぞ、と気を引き締める時期なのに、それがないなんてまだ夏休みが延長されているような不思議な気分だ。 約1か月前にあった終業式は、明日から夏休み!と1年で最も開放感に溢れた喜ばしい日のはずなのに、目の前の子どもたちと会えるのも、もしかしたらこれが最後かもしれない、と考えると無性にさみしいような悲しいような気持ちになった。 まるで、翌年異動が決まっている前の3月の修了式のような。 ただ、異動のときと違うのは、

          産休に入って、1番したいこと。

          コロナ禍の影響、そして水難事故防止のために。

          今朝、とてもとても苦しい夢を見た。 まるで、見た光景も感情も確かに起こったことのようにすごく鮮明な夢だった。 夢の中でわたしは、海が目の前すぐに見える学校で働いていた。休みの日、海で何人かで遊んでいた子どもたちの内1人が行方不明になっているという。みるみるうちに消防隊や警察が駆けつけ、騒がしくなる浜辺と学校。必死の捜索を試みるが、見つからない。 その時点でかなりの時間が経っており、その子の生存は絶望的だった。しかし、せめて見つけてその子家に帰してあげたいと言う願いのもと、

          コロナ禍の影響、そして水難事故防止のために。

          あさがお観察カードに並んだ点々の意味。

          その日の生活科の学習の時間は、一人一人自分の植木鉢に植えたあさがおの成長の様子を観察カードに記入する活動だった。 るかちゃん(仮名)も今日は、こちらに顔を向けて静かに話を聞いている。 るかちゃんはダウン症の児童だ。 支援学級に在籍していて、まだ自分で平仮名を書いたり、感じたことを文章に表すことが難しい。 国語や算数の時間は、支援学級で彼女に合った内容やスピードで、支援学級担任の先生と学習している。 そして生活や図工、体育、給食といった国語算数以外の学級で過ごす際は、支援

          あさがお観察カードに並んだ点々の意味。

          ジェンダーリビールの葛藤と結末。

          妊娠6か月を迎え、エコーで性別がわかる時期になった頃の話。 次の健診くらいでわかるんだろうか…? と、健診に行く前からわたしはそわそわしていた。 正直、男の子、女の子どっちでもいい。 どっちでも同じくらいうれしい。 はっきり性別がわかると、より具体的にまめちゃん(わたしが名付けた赤ちゃんの愛称)に関する想像がはかどって楽しいに違いない。 健診のエコー中、 「性別、概ね分かったけど伝えようか?」 そうお医者さんに確認され 「お願いします!!」 食い気味に答えるわたし。 聞

          ジェンダーリビールの葛藤と結末。

          わたしってば、喫茶店の招き猫。

          「ここ、好きやと思う。」 そう友人から教えてもらった喫茶店が、出てくる食べ物といい、お店の雰囲気といい、わたしの好みドンピシャだった。 まず、お店に入る外装。 なにこのわくわく感。 内装もアンティークな調度品たちが堪らない。 様々な珈琲がある中で、「苦く重めのものではなく、軽めのがいいです」と伝えると丁寧に教えていただけた。 「マスター」と呼ぶに相応しい落ち着いた穏やかな物腰で、なんだかうれしくなった。 良い喫茶店、とは飲み物や食べ物のお味はもちろんのこと、雰囲気や

          わたしってば、喫茶店の招き猫。