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【読書記録】"銀座のユダヤ人"と呼ばれた男

1.はじめに

 今回の読書記録はさっそく書籍のタイトルを発表しちゃいましょう。
 藤田 田 著
ユダヤの商法
 ビジネス書好きの方は読んだことのある人も多いのではないでしょうか。藤田田(ふじたでん)さんは、あの日本マクドナルドの創業者にして、この著書はソフトバンクの孫正義社長が学生時代に感銘を受け、実際に藤田社長に突撃するきっかけとなった書籍です。

 これだけでおもしろすぎる本なわけですが、『ただビジネス書読み漁るためにたどり着いたんでしょ?』と思われそうなので、この本を選んだ理由をいつも通り語っていきたいと思います。
 それでは今回の読書記録、始めます。

1.はじめに
2.本を選んだ理由
#1 ユダヤ教に興味があった
#2 私の経歴
3.ユダヤの商法とは
#1 78:22の法則
#2 女と口を狙え
#3 必ずメモをとる 
#4 雑学を積む
#5 辛抱は3ヶ月まで
#6 必ずアポを取る
#7 未決書類を残さない
#8 厚利多売せよ
4.ユダヤの商法のバックボーン
#1 人生の楽しみ方
#2 ユダヤの英才教育
#3 一人合点しないこと
5.ユダヤ商法とマクドナルド
#1 公道を利用する
#2 脳みそを柔らかく使う
#3 きらいなものを売る
6.おわりに

2.本を選んだ理由

#1 ユダヤ教に興味があった

 みなさんは宗教と聞くとどんなイメージでしょうか。日本人の多くが抱くのは『なんだか怖い』というものでしょう。
 それは最近で言えば安部晋三元首相の暗殺事件もありましたし、地下鉄サリン事件もありましたし、戦後教育では古事記の教育はGHQによってタブーとされたという歴史があるからだと思います。
 しかし、私はこの2年ほどでやっと知るのですが、宗教とは世界的には教養なのですね。これを知るか知らないかで国際社会の見え方は大きく変わると思いますし、その中でもなにより世界的大企業の社長にはユダヤ人が多いのです。
 現在で言えばGoogleの創業者ラリー・ペイジ氏がその筆頭と言えるでしょう。
 では世界的教養である宗教のひとつであり、大企業の社長たちが信仰するユダヤ教とはどんなものなのか。その教えにはいったいどんな秘密があるのか。これを知りたいと思っていました。

#2 私の経歴

 私の経歴と題したので『なんだ!?』と気になった読者の方もいるかもしれません。そんな大層な経歴なのかと。そんなことはありません。
 単純にマクドナルドでバイトをしていたというだけでございます。
 しかしここにシンパシーを無駄に感じてしまうのが私なのです。
 知りたいと思っていた知識があり、そのことについて書かれていそうな書籍があり、その著書はアルバイトしていた大規模チェーンの創業者だ、と。ここに人生のおもしろさを感じずにはいられないでしょう。
 そう思いまして書籍の存在を知ってすぐにAmazonに駆け込んだのでした。
 余談ではありますが『ユダヤの商法』という書籍は1972年に最初の出版があり、漫画版などもありますが、今回は新装版のものを読ませて頂きましたので、ひとつ参考になればと思います。

3.ユダヤの商法とは

 長々と自分のことを語ってしまいましたが、さっそくユダヤの商法とはなんなのか、これを解説していきたいと思います。
 しかしまずお伝えしたいことは、『ユダヤ教の商法』ではないことです。
 ユダヤ人というのは鋭いワシ鼻という身体的特徴をもち、2000年に及ぶ迫害の歴史を持つひとつの民族であり、その商法とは5000年にも及ぶ歴史の中でユダヤ人の商人たちが培った商法ということです。決してユダヤ教の教えということではないのです。

#1 78:22の法則

 色々な動画や解説本でも紹介され尽くしているものだと思いますが、肝となるひとつの考え方になりますのでこれはまとめておきたいのですが、78:22の法則とは『世の中のあらゆるものが78:22の比率でできている』ということです。
 空気の比率(窒素78%その他22%)や、正方形と内接する円の面積比(内接する円78%残り22%)という例えが書籍にも登場しますが、これがビジネスにおいても言えるということです。
 それは富の量においても、大多数の一般層貧困層がもつ資産の合計よりも、少数の富裕層がもつ資産の合計の方が圧倒的に多いのです。であれば、ビジネスにおいてここを狙わない手はないだろうということを書いてあります。
 この法則はユダヤの商法を語る上で欠かせないポイントと言えるでしょう。

#2 女と口を狙え

 あまりこのような強い口調は好きでは無いのですが、あえてユダヤの商法に伝わるとされる金言をそのまま引用しました。
 この言葉は聞いたそのままのイメージであると言えます。
 古くからお金というものは男性が稼ぎ、女性が消費するというのが基本だったようです。現代ではそうとも限らない価値観もあるでしょうが、たしかに女性の方がファッションや美容に拘りがある方が多い印象ですよね。
 逆に男性向けに商売をするのは10倍以上も難しいとされています。しかし女性を狙った商売というのは商品選びなどの才能が必要だといいます。

 そして口を狙うというのもそのままの意味です。
 食品の生産や卸、加工や飲食店のことを指します。これはあまりビジネス的な感覚が無くても分かりやすいと思います。しかもこれらの業種は凡人以下の才能があっても儲けられるというのです。

#3 必ずメモをとる

 ユダヤ人はどんな場所でもメモをとるそうです。とは言ってもメモ帳を持ち歩くわけではなく、ユダヤ人のメモ帳はタバコの空き箱だそうです。
 タバコを買うと中身はシガレットケースに入れ、空き箱はポケットにしまいます。そして商談での大事な案件や約束をその場でメモして、後ほどメモ帳に整理するのです。
 ここで重要なのはユダヤの商人たちは商売において"あいまいさ"を絶対に生じさせないということです。
 たとえば日本人では『約束の日時はいつだったっけ?何日じゃなかったか?いや、何日だったような』というようなあいまいさをそのままにしたり、逆に利用して押し通すような商売人がいます。しかしそれはユダヤ商人には絶対に通用しません。
 ユダヤ商人にそのようなことをしようものなら弁明しても無駄です。『こいつは信用ならない』となって、すぐさま契約破棄や損害賠償請求を受けることになってしまうのです。

#4 雑学を積む

 ユダヤ商人たちはとにかく迅速で的確な判断ができます。
 それは基本的に多言語を操れる人が多く、母語以外の言葉も並列で考えることができることで生まれる迅速さと多面的な視野をもつことだとも書かれていますが、雑学の豊富さも彼らの武器だと藤田氏は綴っています。
 しかもそれは広く浅いような雑学ではなく、ひとつひとつの雑学について深掘りして語れるほどに博学なのだそうです。これによりユダヤ商人たちはさらに広い視野からの判断力を兼ね備えることができるのです。
 日本人的な『商人はソロバンを弾けばいい』『農家は畑を耕せばいい』など一面的な見方しかできない視野の狭さでは、人間としても半人前なら商人としても失格だと強く述べられています。

#5 辛抱は3ヶ月まで

 日本人の価値観として、
 『辛抱強く努力することが成功の重要な要因だ』
というように語られることは少なくないと思います。藤田氏はこのことについても批判的です。
 『何かあればすぐに腹を切ろうとするような日本人より、2000年の迫害を耐えてきたユダヤ人の方がよっぽど辛抱強い』と綴っています。
 しかしそんなユダヤ商人たちもビジネスとなると話は別です。どんなに資金と人材を投入しても3ヶ月で成果が出ないものからは手を引くのです。
 これについても日本人だと『石の上にも三年』や『3ヶ月がんばった努力を報いねば…』などと考えますが、彼らは違います。
 1ヶ月目、2ヶ月目と資金や人材をどんどん投入しますが、3ヶ月目に好転の兆しが見られないとなればすぐに見切りをつけます。そこに後悔はなく、すぐに次の手に移行する判断力を持ち合わせています。

#6 必ずアポを取る

 ユダヤ商人の格言のひとつに『時を盗むな』というものがあります。この言葉から彼らが如何に時間を大切に扱っているかが分かります。
 そのなかでもアポイントのない来客には絶対に対応しないというものがあります。
 これは『ちょっと近くに寄ったもので』などと言って顔を出す日本人と真逆とも言えますが、彼らは『何月何日の何時から何分間』というアポイントを厳守するのです。
 この『何分間』というのが重要で、こちらから30分間頂けないかと交渉しても、『では10分だけ』『では1分だけ』などと分単位で平気で短くされます。これは彼らにとってそれくらいの価値の面会しか提示できなかったということになります。
 それぐらい時間を大切に扱うユダヤ商人ですので、時間に遅れることもオーバーすることも絶対に許されないのです。

#7 未決書類を残さない

 ユダヤ人は出社して1時間ほど"ディグアウト"という時間を必ず設けます。それは前日の退社から今日の出社までに溜まった商取引のメール等の処理の時間です。
 そしてこのディグアウトの時間はどんな人間もシャットアウトして、業務をこなします。
 これには彼らに即刻即決というモットーがあるため、前日の仕事を持ち越し溜まっているというのは、恥であり屈辱的なことだと考えているからです。

#8 厚利多売せよ

 日本人的な商売として薄利多売があげられます。しかしユダヤ人から言わせると、なぜそんな商売をしているか分からないとまてま言われるそうです。
 彼らは商品に十分な利益を乗せて取引をします。それは商品に絶対の自信があるからで、値下げ交渉には応じない、値下げするくらいなら売らないというのがスタンスなのです。
 そもそも薄利で売って他社と競争するというのは、どんどん安売り競争になってしまいますから、いわば死のレースとも言えます。
 では厚利多売のコツとはなんでしょうか。
① 金持ちから流行らせる
 流行には2つあるといいます。富裕層から大衆に流れる流行と、大衆の流行です。大衆の流行は長くても数ヶ月で終わるのに対し、富裕層からの流行は大衆まで流れるのに2年ほどかかるそうです。つまり2年はその商品を売れるわけです。
 これには人々のアコガレ心理が働いていると藤田氏は綴っています。人は多くがワンランク上の人間の生活を見て、憧れているものであり、大衆になるほど人数は多くなり、商品の値段は下がるのです。
 たとえば、最上層の金持ちが10人いてそこに流行らせられれば、次の層の金持ちは20人いて倍の数を売ることができ、大衆に流行るころには安価で利益の薄い商品になってしまうため、それまでに手を引くようにすれば、売れ残ってしまうということはないのです。
② 稀少価値を売る
 モノは稀少価値が高ければ、海外で1000円で買ったものが国内で100万円で売れることもあると藤田氏は語っています。
 書籍に出ている例を紹介しますが、豊臣秀吉に壺を売った堺の商人がいました。その壺はフィリピンから仕入れたものでしたが、『イギリスの宝物だ』として献上され、秀吉は戦功をあげた大名に褒美として授け、その後家宝として代々受け継がれていったそうです。そして後々になってその壺が西洋の便器だったということが明らかになってしまうのです。
 これは笑い話のように語れてしまう内容ですが、その当時西洋の便器がそのひとつ以外に国内に存在しなかったから成立したのです。これが稀少価値というものなのです。

4.ユダヤの商法のバックボーン

 ここまでユダヤの商法について見てきましたが、この商法のバックボーンとは何があるのでしょうか。どのようにして彼らはその考え方を手に入れるでしょうか。それを見てみましょう。

#1 人生の楽しみ方

 人生の楽しみとはなんでしょう、現代では色々な考え方も増えてきたと思いますが、ユダヤ人の人生の楽しみとは『贅沢な晩餐を和やかに楽しむひととき』のことです。
 彼らはこの贅沢のために働き、そのためならどんな手段を使ってもお金を稼ぎたいと考えているのです。
 それは"キャッシュを抱いて死にたい"とまで描かれる小説があるほどの執着を生むのです。
 日本人はどうでしょうか、"働くために食べている"という人間は少なくないはずです。ファストフードをかきこんで、四六時中働く。『早寝早起き早メシは三文の得だ』という言葉のなんたる貧乏性っぷりでしょうか。
 ユダヤ人から見れば、たかだか三文ばかりの儲けのために人生を棒に振っているのが日本人なのです。

#2 ユダヤの英才教育

 彼らは幼少の頃からユダヤ商法の基礎となる教育を徹底して受けています。それらが重要なバックボーンであることは言うまでもないでしょう。
① 父親は最初の他人である。
 藤田氏がユダヤ人の家庭に招かれた際に見たユダヤの教育法に驚かされました。その家庭の父親が3歳になる息子をマントルピースに乗せて、
 『さあ、パパの方へ跳んでおいで』
と、手を伸ばします。子どもは遊んでくれていると思いますから、父親の方へジャンプします。そこで父親は伸ばしていた腕を引っ込めるのです。
 当然、子どもはそのまま落下して、床に体を打ちつけてしまい泣いてしまいます。
 これは一見すると虐待にもとられかねない衝撃の光景ですが、
 『たとえ父親であろうとも盲信してはならない、あくまでも信じられるのは自分自身だけだ』
というれっきとした教育なのです。
② 金銭教育も幼少から
 ユダヤ人の子供たちはお金の稼ぎ方を親から幼少の頃より学びます。至ってシンプルな方法で、ひと言で言うなら"お手伝いをした報酬としてお小遣いがもらえる"というものです。
 日本の家庭でもこの方式のお小遣いだというところは少なからずあると思いますが、ここでのポイントは完全に能力給だということです。
 たとえ年上の兄や姉、年下の弟妹であろうと、同一労働同一賃金で統一されているのが重要なポイントです。
 日本は年功序列の意識の強い国民です。それ故に家族はおろか、社会においても年長者の方が多く給料をもらう/払うのは当然だという考えが浸透しています。
 年功序列の賃金が悪いことかどうかはさておき、日本で能力給の仕組みがなかなか浸透しないのは幼少期からの教育の差なのでしょう。

#3 一人合点しないこと

 前述した『信じられるのは自分自身だけ』というものにも関連するのですが、ユダヤ人は過去に取引がある相手と再度取引をすることになった場合でも、毎回が初回であり新しい取引だと考えて商売をします。
 絶対に、『前回も問題なかったのだから大丈夫だろう』という勝手な一人合点はしないのです。
 これにも藤田氏の実際の経験が例として挙げられています。
 ある画家のユダヤ人と藤田氏がキャバレーに行ったとき、その画家がキャストの女性をデッサンしました。そして次に藤田氏の方に体を向け、デッサンを始めたのです。
 時折左の親指をこちらに向けて、なにやら寸法を取りながらデッサンしている画家。
 『なるほど、ならば描きやすいようにしてあげよう』
 藤田氏はそう考えて、少し顔を横に向けるようなポーズをとったのです。
 『よし、できた』
 そう言って画家が見せてきたのは、その画家の左手親指のデッサンだったのです。そして彼にこう言われたのです。
 『"銀座のユダヤ人"とは言っても、まだまだだね』
 藤田氏はこちらを向いてデッサンをしている画家を見て、何を描いているのか確認せずに自分を描いているのだと一人合点してしまったのです。
 このような一人合点をするのは愚かなことだと教えられるエピソードでした。

5.ユダヤ商法とマクドナルド

 ここからは日本マクドナルドと藤田氏についてのお話です。
 日本マクドナルドの第一号店は1971年に銀座三越の1階に50㎡の広さでオープンしました。当初の売上予測は、三越側は1日に15〜20万円で、藤田氏は30万円だろうという予測だったそうです。
 しかし、実際はこれを大きく上回り、1日に100万円の売上が連日続きました。想定外の売れ行きに"絶対に故障しない"と評判の良いキャッシャーが故障したり、製氷機が故障したりと大波乱だったそうです。

#1 公道を利用する

 そんなバカ売れ状態ですから、50㎡の店舗は一瞬で満席になってしまいます。しかし皆さんご存知の通りテイクアウトして歩きながらでも食べられるのがハンバーガーです。
 銀座三越に構えた店舗は国道1号線沿いにあり、日曜日になるとそこは歩行者天国になるのです。そう、天下の公道はマクドナルドのイートインスペースへと早変わりしてしまうのです。しかも一切の土地代を払わずにです。

#2 脳みそを柔らかく使う

 藤田氏がハンバーガーをやるぞと言ったとき、周囲からは様々な声があがったそうです。
『日本人は米と魚なのだから、肉とパンなんて売れるわけがない』
 しかし当時既に米の消費量は減少傾向にあり、時代が変わり始めていることを藤田氏は確信していました。
『日本人好みの味にした方がいいだろう』
 しかし味を変えて売れなかったときに、味を変えたから売れなかったのだとなるのだから、と味を変えることはしなかったのです。
 どちらもありがちで納得しそうな批判に聞こえますが、藤田氏はハンバーガーがユダヤ商法における"第2の商品=口を狙う"ものだと確信したうえで、日本マクドナルドの設立に踏み切りました。

#3 きらいなものを売る

 世の中には好きなものを仕事にする人々が多いなかで、藤田氏は敢えて自分がきらいなものを売るのだと言います。
 人は好きなものを売ると溺れてしまいがちですが、きらいなものを売るとなると、どうやったら売れるかを考えますし、必死になります。
 藤田氏は貿易商として女性のアクセサリーやバッグを扱っていましたが、それも『男性だから冷静に眺められた』としています。ハンバーガーも『主食は米だからこそ』なのです。
 世の中勝てば官軍です。商売だって勝てば官軍だ。
 この章に書かれてあった文章で、個人的に私がとても気に入った部分です。どんなにバカにされて始まった商売でも売れてしまえば勝ちなのです。

6.おわりに

 いかがだったでしょうか。
 正直言ってめちゃくちゃおもしろかったです。ビジネス書としてだけでなく、シンプルに読みものとしておもしろいので、すらすらと読み進めることができました。名著として100万部を超えているのも納得です。
 読み始める前はユダヤ教的な部分があるかと思っていましたが実際にはそれがなかったのが少し残念というか想定外ではありましたが、読んでよかったと思わされる本でした。

 記事にしたのは私が個人的に重要だと感じた章をまとめたものなので、まだ読んでない方はぜひ手に取ってみてほしいと思います。それぐらい好きな本になりました。

 最後まで読んでいただきありがとうございます!
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それではまた次の記事でお会いしましょう。

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