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#小説

「衝動的なんて言葉で片さないでください。これは僕らの同意の上の完成形なんですから。寧ろ僕の意思よりも相手の意思が強かったんですから、これは相手の望みを叶えた結果なんですから。ねえ、そうなんですよ。君が、君が、『あなたになら、この人生を終わらせられてもいい』って言ったから。」

「だから、それに適うような人間になりたくて、人生を止める方法として思いついたのがこれだったんです。でもこれは相手が望んでい

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いち

 寂しかったんだ、ただそれだけで。愛してたんだ、君のことを。僕の心には薄暗く濁った水溜りがあって、それが零れてしまっただけだと思うんだ。

 夢なんじゃないかと思った。鮮烈な赤、赤、赤、あか、
心がぎゅっと締め付けられてしまって、鼻の奥を抉るようなその香気に心拍数が高められていくのがわかった。血流がどんどん速くなる。手のひらにこびりついた嫌な感覚、肉を貫く感覚、血管を刃で食い千切る感覚、全てを脳内

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