あっぱれ蔦屋重三郎の破天荒ぶり「蔦屋」谷津矢車版

書店で何度か見かけた蔦屋重三郎の本のタイトル。文庫版だけでも数冊ある中からまず選んだのが谷津矢車作の「蔦屋」。で、これが大正解でした。ドラマ仕立てで蔦屋とある書店主を主軸に展開するストーリー・・・・・

その物語をちょいと現代風にアレンジしてみると・・・・・・・・

日本橋で老舗書店を営む小兵衛も歳を重ね、そろそろ店じまいを決意する。店舗売りたしの張り紙を出したところへ息子ほどの歳の若造が飛び込んできた。買い取る金はないが終生老いた自分にずっと年金を払ってくれるのだという。おまけにリース・バック方式でこのまま店にいてもいいと。おまけにその店舗で働き続けてくれればなお良いと・・・・・!!

この男、銀座・人気ホステス名鑑を売り出して飛ぶ鳥落とす勢いの蔦屋書店を創業した重三郎だった。日本橋にもぜひ2号店を開店したいのだという。なんでも書店ビジネスでこの書店ビジネスを一変させたいのだと、野望を抱いての買収話だった。・・・・話はまとまり、雇われ店主となった小兵衛の元へ、訳ありの若い貧乏画家が転がり込んでくる。やがて筆名を歌麿と名乗り人気絵師になる男だ。

重三郎はといえば毎晩作家たちを高級クラブで豪遊させ、版権を独占する。遊興も仕事のうちだ。書店主であり出版元で編集プロデューサーでもあるのだ。新店舗で毎年正月発刊の世相風刺コミック・シリーズは時の政権を面白おかしく揶揄して庶民の人気をさらっていた。店の前にも毎年長蛇の列が。・・・・・・が、時の安倍政権にしてみればどうも面白くない、高市総務大臣の権限で作家に圧力をかけようとするではないか・・・・・・売れっ子狂歌作者の一人だった某高級官僚が処分を不服として自死してしまうのだった・・

果たして重三郎はこの危機をどう乗り切ろうというのか?風刺コミック本は確かな需要がある。だが他の作家たちのモチベーションは下がるばかり・・・・・品数が足りない!路線変更も考えなければ書店経営も危うくなりそうだ・・・・・・

来年大河ドラマ「べらぼう」でビジュアル化が決まっている蔦屋重三郎を描き、ついに文庫化された八津矢車の人気作「蔦屋」を現代風に改めるとこんな感じでしょうか?


デビュー前に歴史群像大賞・優秀賞をとった谷津矢車の代表作はキャラクターの個性が光り、音や匂いまでも伝わってきそうなリアリティ溢れる描写が魅力です。一見破天荒に見えて実は冷静な計算もちゃあんとできている重三郎。慎重な上にも面倒見の良さとベテラン版元としての目利きが冴える小兵衛、街中で美人を見つけるやたちまち美しい似顔絵にしてしまう才能溢れる歌麿・・・・・・登場人物が生き生きと目に浮かび、江戸の風や匂いまでもが感じられそう。

終盤にはどんでん返しとも思える種明かし?があったり、結末にホロリとさせられてしまうドラマチックな急展開やら、読み始めたらもう止まらない魅力溢れる作品です。果たして横浜流星は連続ドラマの中で1年間どんな重三郎を演じてくれるのか?ちょっと興味津々で来年、日曜の晩を待つことになりそうです

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