読書感想 『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』 「21世紀のビジネスパーソンの必読書」
「ファスト映画」という言葉を知って、だけど、音声メディアを「1・5倍速」で聴くのが常識にもなっている時代なら、それを公開することが違法として逮捕されるのは当然だとしても、手っ取り早くなんとかしたい、という傾向は、「コスパ」という言葉とともに加速しているのではないか、というちょっとした怖さはあった。
だけど、それに対して、何もできないし、自分とは違う速度で社会が流れている感覚はありながら、でも、同時に、矛盾するようだけど、それでも、図々しいとしても、生き残れることはできないだろうか、という思いもある。
著者はレジー氏。恥ずかしながら、全く知らなかった。
それでも、読み終わった後は、読む前に思っていた内容と違っていて、このページ数で、ここまでチャレンジしたことに、素直に敬意を持てた。
『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』 レジー
「今の時代」について批判的な言葉が出てくるのは、いつものことだと思う。
その一方で、「教養」について語られることが多くなってきた感覚は、社会の片隅で生きているような私にまで伝わってきて、でも、それは、これまでの「教養」という言葉が表すものとは違うのでは、とも思っていた。
それを、まず、この書籍の著者は指摘している。
そして、「ファスト教養」についても、明確に定義している。その軸がはっきりしていれば、それをめぐるさまざまなことも考えやすくなる。
歴史の必然
そして、その「ファスト教養」に関しては、そのルーツの歴史は思ったよりも長く、だからこそ、とても根強いものではないか、とも説明される。
(※引用部分の「筒井、前掲書」↑は、筒井清忠『日本型「教養」の運命』)
さらには、この「ファスト教養」の現象にのった、もしくは加速させる人物として、過去に脚光を浴びたり、今も支持を受け続けている何人もの人間の名前と、その人物たちに対しての批評的な見方も続く。
田端信太郎、中田敦彦、Daigo、堀江貴文、小池百合子、勝間和代、橋下徹、ひろゆき、前田裕二、本田圭佑、AKB48-------。
それは、「自己責任論」との相性の良さもあっての上で、だから、少し先の未来を、こう予測している。
使い古された表現だが、個人的には「ディストピア」にしか思えない。
再構築への処方せん
例えば、経済学や社会学、自分が読んでいる狭い範囲に限って、という限界はあるものの、こうした「現代」について分析し、考察し、その指摘がとても説得力を持てば持つほど、その度に、何か重い気持ちになる。
そして、個人的な印象では、それでは、これからどうすれば?と思いながら読み進むと、「個人の意識の持ち方」といった結論になりがちなことが多く、だけど、それはそれで、当然かもしれない、という暗い諦めという読後感が残ることがほとんどだった。
だが、今回は違っていた。だから、勝手なものだけど、そこに著者の志の高さのようなものも感じた。
具体的には、こうした視点である。
そのために必要なメディアについて、ここから具体的な名前をあげ、その理由とともに紹介している。全部を知りたい方は、ぜひ、本書を手に取って欲しいのだけど、そのごく一例をあげる。
例えば、田端信太郎の「MEDIA MAKERS」。堀江貴文も参加している「平成ネット史」。
この二人は「ファスト教養」の論者でもありながら、この書籍は、「専門性が高くわかりやすいコンテンツ」となっているから、他にも同様な書籍を探すことをすすめている。
また、子ども向けの学習マンガ。会話形式のポッドキャスト。オードリー若林正恭の著作も、「ビジネスに必要な知識を深いレベルで学ぶことで、ビジネス以外の場面でも通じる力を得られる」可能性のあるメディアとして挙げられている。
そうした「ポストファスト教養」を身につけようと努力した先の未来のイメージまで、この著作では語られていて、その実現自体はとても困難ではありながら、それでも、その前に具体的な方策が述べられていることで、勝手な読者の印象だけど、著者の有能さだけでなく、誠実さも感じ、信頼感が増していた。
おすすめしたい人
仕事をしていく上で、何かをしないと、取り残されるのではないか、という焦燥感がある人。
何か勉強したいけど、どうしたらいいのか、わからず、できたら無駄なことを身につける「コスパの悪い」ことはしたくない人。
学生を卒業し、社会で働くようになって、なんとか生き残りたいと不安な人。
基本的には、すべてのビジネスパーソンに、おすすめしたいと思っています。
(こちら↓は、電子書籍です)
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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