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花が開くまでの美しい過程-----アガパンサス

 庭にいろいろな花が咲いている。

 妻が毎日のように名前を言っているので、覚えた名前もあるけれど、その一つがアガパンサスだった。

 覚えても、口にしても、微妙な違和感があって、だけど、発音すると、ちょっと気持ちがいい。


植物の変化

 それまでほとんど興味なかったから、目に入っていても気がつかなかったのだけど、花が開くまでの過程に、花の種類によって、微妙な違いがあることを知っていく。

 花が咲く前だから当然かもしれないけれど、よく見るとつぼみは、ぷっくりしている。それは、これから花になるためのエネルギーが凝縮しているからかもしれないが、でも、考えたら、茎が伸びてつぼみができて、それが大きくなっていくのだから、徐々に変化していくのだった。

 ただ、そのつぼみの形とか、ぷっくり具合とか、見た感じにすぎないけれど、その硬さのようなものにも差があるようにも思えてくる。

 だけど、妻と違って、毎日のように細やかに見ていないので、おそらくは、その違いに対して、特にその成長過程については、今もよくわかっていないと思う。

 それでも以前に比べたら、花が咲くまでの過程も、少し気がつくようになったはずだ、と考えたい。

アガパンサスのつぼみ

 ある日、妻に促されて、アガパンサスのつぼみを見た。

 それは、不思議なかたちだった。

 花びらのような薄い膜のようなものの中から、たくさんのつぼみが顔を出して、さらに大きくなろうとしている。

 そんな姿に見えたけれど、その薄い膜で、覆われていた時もあったと、妻に聞いたが、それについては覚えていなかったし、たぶん、それを見たとしても、その大きめの薄い膜で覆われた塊自体をつぼみと感じ、あとは、それが開けば花になる、と思っていたはずだ。

 ただ、妻に言われて気がついたときは、そこから少し進んだかたちだった。

 最初に薄い膜に覆われていた大きなつぼみのようなものの、その膜の中から、小さいつぼみたちが顔を出して、それから少したてば、その膜は不要なものとなり茶色く枯れて落ちるだけらしいが、見たときは、その膜が、アガパンサスの花の色と同じ薄い紫色だったから、まるで一度花が開いて、その花びらが落ちていく直前のように見えていた。

花が咲いていくまでの過程

 だから、アガパンサスの花は、私のような詳しくない人間から見たら、2回、花が開くように思える。

 最初に大きく覆われたつぼみのような状態から、その外側の膜を破るようにして、「本当の」小さいつぼみたちが顔を出す。その過程を、もしかしたら初めて目にできたけれど、それは妻に教えてもらわなかったら、ずっと知らないままだったはずだ。

 その半分は膜で覆われた姿も、まるで花びらが散りかけていて、それとは別に新しくつぼみが育っていくような過程に見えて、美しかった。

 どうして、そのような複雑な行程があるのかは、長い年月をかけて獲得した合理性のようなもののはずだから、何かしらの理由があるのだろうけれど、でも、つぼみがとても大事にされているような気がして、それも含めて、なんだか気持ちが少し動いた。

 太陽を浴びて、水を吸収して、育って、葉っぱを増やして、茎を伸ばして、つぼみを育てて、花が開く。

 そういう当たり前とも思える過程に、こういう美しい瞬間があることに、これまで全く気がつかなかった。庭にはアガパンサスが毎年のように育っていて、花が咲いているのは目に入っていて、やっと覚えた名前だから、「アガパンサス」と何度も呼んでいたのに、知らないままだった。

 そういえば、花が咲いて、ハチやチョウがきて、そして、花が枯れ始めて、枯れて、花びらが落ちていくときも、今のところはとてもあいまいな印象だけど、植物によって、かなり違いがあるはずだった。

 これからは、そうした違いや、そうした過程にもある不思議さや美しさのようなものにも、以前よりは、気がつくようになっていたい、と思うようにはなってきた。

 それは、成長なのか、成熟なのか、変化なのか、もしかしたら老いなのか。そのあたりは、まだよく分からないのだけど。






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おちまこと
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