企業やビジネスパーソンに、もっと「きちんとしたコミュニケーション」をとってほしい理由。
ドラマを見ていて、そこがメインテーマではないから、シリアスさやリアルさは足りないのかもしれないけれど、「M&A」のことが主人公たちの課題となっていた。
M&A
個人的には、とても少ない知識だけど、「M&A」というのは、企業買収だと思っていた。
冒頭にあげたドラマでも、主人公が、「M&A」にもいろいろとあって、お互いの企業にメリットがあるために、その方法を選択した、という話をしていた。反射的に、「そんなにうまいことがあるのだろうか。ドラマだから、そういう展開なのだろう」といったことを思っていたが、だけど、ストーリーから言えば、好ましい流れなのだろうとも感じた。
ただ、そんなことは、本当に可能なのだろうか。
合併
「M&A」という言葉の前は、企業の「合併」という表現をよく聞いた。その頃も、企業同士の「合併」が公に発表される時は、企業のトップ同士が握手をして「対等」を強調する場面を、情報に弱い私でも何度も見てきた。
だけど、実際は、「対等」ではないことを、間接的に知ることも少なくなかった。「合併」をするときは、たとえば2つの企業のどちらかが大きいと、より小さい方の企業に所属していた社員は、リストラにあったり、いじめにあったりといったことは、どこまで本当のことかは分からないのだけど、様々な媒体で目にしたり、耳にしたりしていた。
「人事ジャーナリスト」という肩書きを持つ人が書いているのだから、少なくとも私のような人間より、はるかに詳しいのだから、やはり「M&A」や「合併」の後には、どちらの企業もより成長したり、幸せになったりすることは難しいようだ。
だけど、本当に、企業合併や「M&A」は、どちらかの「企業」に地獄を見せるだけなのだろうか。
システム障害
「失われた30年」の間に進んだことの一つが、銀行の統合だと思う。
いわゆる「メガバンク」が目立つようになり、それは、どれだけ収入が低くても、金融機関には口座を持つ必要があるから、自分にも全くの無縁ではない。
その「メガバンク」の中で、何度もニュースになったのが「みずほ銀行」で、それもシステム障害について、だった。
大きな障害は、3回目で、だから、こうしてその理由も「外部」で分析されるようになっている。この記事の中で、私にも理解しやすい理由もあった。
この中で、「上」から「下」へは意志が伝えられても、専門分野であっても「下」から「上」はきちんと意志が伝えられないことが述べられている。それは、忖度の世界に思える。同時にそれは、組織にいた年数が少ない私にとっても、とてもなじみがある光景にも思える。
企業が統合したとしても、21世紀になっても、そうした状況を変えるのは難しいのだろうか。
半沢直樹
「半沢直樹」という銀行を舞台にしたドラマが始まったのが2013年だった。当初は、そのドラマに関心がなかったものの、複数の人に、現代に生きているのなら見たほうがいい。リアルだから。といった同じような言い方ですすめられた。
そんなにすすめられることも珍しいから、録画して見てみたが、私には、その面白さが分からなかった。もしかしたら、熱心な視聴者と比べると粗い見方になってしまうのかもしれないけれど、同じ銀行の上司にあたる人間(香川照之が演じていた)が、実は「敵」に当たる人物で、主人公(堺雅人が熱演していた)が「倍返し」の復讐を果たす、というストーリーについていけなかった。
見進めるたびに、疑問が湧いてきてしまった。
どうして、同じ会社の中で、こんなに争っているのだろう。
社内政治に、こんなにエネルギーを使っていたら、会社そのものの生産性や、成長には、マイナスにならないだろうか。
もし「敵」が明らかであれば、違う会社に入って、もしくは起業して、その「敵」ごと、その銀行をつぶそうとするほうが理解しやすいし、自分がいる「組織」を成長させることにもつながるから、日本全体の経済にも貢献できそうなのに。
それに、私にとっては、何より、ドラマの舞台の、この会社は居心地が悪そうで、とても自分が(採用もされないだろうけど)勤め続けられそうな気がしなかった。
このドラマの舞台になった銀行も、どこかの銀行と合併し、メガバンクと言われる存在になった時に、社内のコミュニケーションがうまくいかず、システム障害を起こしそうだった。
そんなことを思っていた。
でも、このドラマは2020年に続編も放送され、高い視聴率を記録したということは、共感を持って見られたはずで、私のような見方をする人間は少数で、おそらく、「半沢直樹」のようなことが、日本のあちこちの企業でも起こっている可能性がある。
このドラマの原作は、バブルの頃に入社した銀行員を主役にしているらしいので、フィクションとはいえ、この「半沢直樹」が入行してからの年月は、ちょうど「失われた20年」もしくは、続編が放映された時までを考えれば「失われた30年」に重なる。
この状況は、本当に変わらないのだろうか。
「失われた30年」
あまりにも頻繁に使われすぎて、そして、その年月の中で生まれ育った人にとっては、不快な表現だとも思うのだけど、「失われた30年」という言い方はよく使われる。
これは「バブル崩壊後」の日本社会の、特に経済的な側面を指していて、最初は、「失われた10年」だったのが、ずっと基本的には不況が続き、いつの間にか、失われたのは「30年」になってしまった。
それは、印象だけではなく、さまざまなデータも示している。
これに関しては、政策の失敗など色々な指摘もあるものの、この記事は2021年11月なので、それから約1年経った今は、物価は上がっているのだから、さらに生活は苦しくなってしまっている。
最下位ではないという見方もできるのだろうけど、生産性も決して高くはない。
どうして、こんな状態なのだろうか、と気持ちも暗くなるが、この記事には、その解決策までいかなくても、その状態を少しでも良くするための方法が示唆されている。
この文章で、ここ何年かでよく聞くようになった言葉を思い出した。
それは「心理的安全性」という単語だった。
心理的安全性
個人的には、この言葉を発する人を初めて見たのは、ピョートル・フェリークス・グジバチ氏だった。あの「グーグル」で人材育成を担当した人物だった。
もし、「安心してなんでも言い合える」会社があったら、私でさえ勤めたいと思うけれど、おそらく現実は、今だけでなく、これまでも、そうではなかったのは、組織に長くいなかった私でさえ知っている。
「半沢直樹」はフィクションだとしても、リアリティがあるから支持されたわけで、このピョートル氏のプライベートな調査だけではなく、「上司は危険」と思っている人は、現在も多数派であり、会社の「心理的安全性」は今も低いことは間違いない、と思う。
この「安心してなんでも言い合えるチーム」が、「グーグル」で実現されているとしたら、それはなんだかうらやましいことでもあるし、もしかしたら、それは一部の「日本」のビジネスパーソンにとっては「ぬるい組織」などと言われそうだけど、グーグルは、世界のトップ企業まで成長しているのだから、「失われた30年」状態の日本にとっては、学ぶ必要もあるのではないか。
「高度経済成長」時代は、欧米のスタイルを素早く取り入れ、それで成長してきたのに、いつの間にか、それすら忘れてしまったのだろうか。
きちんとしたコミュニケーション
それでも「心理的安全性」は、ビジネス界では、微妙なブームになっているように思える。
ただ、実際は、今の日本の企業では、まだ『心理的「非」安全性』↓が主流に思える。
この方↑が、日常的な光景にもみえ、「心理的安全性」の方が、大げさかもしれないが、今も届かない夢のようにさえ思える。
「心理的安全性」は、表現を変えたら、「きちんとしたコミュニケーション」であり、「丁寧で率直な話し合い」であり、本来であれば、複数の人間で何かに取り組むときに、優先されるべき方法だったはずだ。
いつの間にか、そういうことが、ほぼ忘れられるようになり、企業だけではなく、社会の中でさえ、大人になったら、「率直な意見や素朴な質問」なども許されなくなってきたように思う。
社会の中の「心理的安全性」自体が、とても低いままになっている。
もしも、コミュニケーションの基本に立ち返り、どんな組織であっても、そこに所属する人間が、思ったことを言え、考え、そのことによって罰が与えられることもなく、時間もかけて話し合いを続けることができれば、もしかしたら「M&A」も、「企業合併」も、どちらかの企業が地獄を見るのではなく、そのことをきっかけとして、これまでとは違った企業に変わることで、そこに所属する人間が、より働きやすくなったりすることは、可能なのではないだろうか。
この「失われた30年」については、様々な要因がからみ合い、とても少数の原因を挙げることもできないのかもしれないが、社会自体の「心理的安全性」が低く、十分なコミュニケーションもとれない環境であることが、その一つであるのは間違いないように思えてくる。
さらには、「給与の上がらないこと」も「生産性が低いこと」も「仕事が世界一、苦痛なこと」も、不十分なコミュニケーションが関係しているのではないだろうか。
だから、企業もビジネスパーソンも、もっと丁寧な「コミュニケーション」をとることを心がければ、ほんの少しでも生きやすくなる社会に近づいていくように思う。
それが、「きちんとしたコミュニケーション」をとってほしい理由です。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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