読書感想 『2023年 ベスト5』。
基本的には、毎週土曜日に、自分が読んで、興味深かったり、面白かったり、読むべき本では、などと思ったりもしたときに、その作品について書いてきました。それを、よくあるタイトルだと思いますが、「読書感想」と名づけています。
読書感想
もちろん、その作品の引用を一切しないで、その作品の紹介をして、その上で読んでもらう方法があって、その方が本の紹介をするには、王道で本筋であるのだろうという気持ちもあります。
それを知っている上でも、引用をするのは、読者である私が自分の表現で伝えるよりは、その作品の著者の文章そのものの方が、当然ながらより伝わり、その上で、もっと全部を読みたくなり、手に取ってもらえるのではないか、という気持ちもあるからです。
ただ、それが本当に正しい方法かどうかはもちろんまだわかりませんし、もっとよりよい「読書感想」があるのかも、という試行錯誤は続けたいと思っていますが、今のところは、自分がすごいと思った箇所を引用する方法を続けていくつもりです。
反応
そんなことを思いながらも続けてこられたのは、読んでくださっている方がいらっしゃるからです。2020年の3月から毎週、続けてこられたので、振り返れば、すでに3年以上になりますが、今年(2023年)も、順調に「読書感想」を書いてこられました。
ですから、単純に計算すると、50冊ほどは紹介させてもらったのですが、その中で、「ベスト5」を決めたいと思ったときに、単純すぎるかもしれませんが、「スキ」の数で決めようと考えました。
3年半ほどnoteを続けてきて、自分が「スキ」をつけるときに、その記事を読んで、気持ちが動かないときは「スキ」をするのをためらってしまうので、私の文章に対しても、読んでもらった上で、少しでもいいと思ってくださった証が「スキ」だと考えてもいます。
そのため、その「スキ」が、最も多い順番で、『2023年 ベスト5』として、「読書感想」を改めて紹介させてもらいます。
もし、未読の方がいらっしゃって、興味を持ってもらい、記事を読んでくださると、やはりうれしいです。さらには、そこで紹介させてもらっている書籍も手に取ってもらって、読んでくださったら、もっとうれしく思います。
よろしくお願いします。
2023年 5位
「ベスト5」といいながら、「スキ」の数が、2つの記事で並んでしまいましたので、紹介させてもらいます。
このとき、紹介させてもらった『ビューティフルからビューティフルへ』の作者・日比野コレコは、2003年生まれで、21世紀の人で、やはり、その文章も含めて新鮮な印象がありました。
やはり、新しさに興味がある方に、特におすすめできます。
この『ハンチバック』は、重度障害者で初めて芥川賞を受賞した市川沙央の作品ですが、タイトルも含めて、意味が重く強く、私も、その作者の「怒り」も含めて、読みながらのとまどいなどもありました。
ただ、こうして「スキ」をしてくれる方々がいらっしゃるということは、誰にとっても「読むべき作品」と考える方も多いのでは、と感じています。休みがあり、時間の余裕が少しでもあるときに、読んでいただければ、と思っています。
2023年 3位
「ベスト5」を紹介すると言いながら、またも言い訳のようで申し訳ないのですが、「3位」も、2つの記事が並びましたので、「4位」が実質上、なくなることになりました。
『御社のチャラ男』は、芥川賞作家の絲山秋子の作品です。
全部を読んでいるわけではないので、あまり語る資格はないとは思うのですが、著者の作品を読むたびにその技術の高さのようなものの凄さを感じてきました。
さらに、この作品は、タイトルから予想できるような気配で始まるのですが、会社を舞台にしているので、そこに様々な歴史も重層的に流れていることにも気づかされ、さらに、この小説の時間は、コロナ禍前の、平成から令和に移る頃で終わっているので、今は忘れがちな、あの頃の空気感まで追体験できるのでは、と思います。
世代や歴史のことまで感じられるので、特にビジネスパーソンの方にはおすすめできます。
この作品は、ドキュメントです。
実際の事件の当事者に取材して、書き上げた本と表現できると思いますが、その殺人を犯した人物が女性で、まだ30代前半と若く、その上、殺害した相手が実の母親でした。
言葉だけ並べればショッキングなことなのですが、そこに至るまでの経過も含めて、とても丁寧に再現できたのは、当事者の協力があってこそで、そして、何より、こうして取材対象と信頼関係を構築できる著者・齊藤彩の力は、とてもすごいと思えました。
現代を生きる方々、特に親子関係について思うところがある方には、読後感は重いものがあるのですが、おすすめしたい作品です。
2023年 2位
2位も、『ハンチバック』と同様に、芥川賞受賞作品です。
作者・井戸川射子の年齢も、書かれた年代も、いつのことか分かりにくく、オーソドックスな印象もありながら、独特で、何かに似ている感じがしないからかもしれないのですが、幸福感というようなものを、これだけ具体的で日常的な描写で伝えてくれる作品は、やはり貴重だと思いました。
説明が難しいとも言えるのですが、それだけに、原作を読んでいただきたい作品でもあります。
2023年 1位
このnoteは、社会の隅で細々と続けている自覚はあるのですが、それでも、今の世の中の空気に、間違いなく影響を受けていると思えるほど、この「1位」の作品の支持は、納得感がありました。
『妻はサバイバー』。著者・永田豊隆の、配偶者が様々な病気などに見舞われながら、20年間、ずっと夫婦で戦ってきた記録です。
間違いなく大変なのですが、そのことを訴えるだけではなく、明確に語らないのですが、明らかに配偶者への愛情が、その年月を支えているのも伝わってきますし、とても切実さがあって、それが読者の気持ちに届いてくるように感じました。
これも、明るい話ではないのですが、ぜひ読んでいただきたい作品です。
来年(2024年)も、「読書感想」は続けていく予定です。
よろしくお願いします。
おち まこと
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