「エアコンの異音」への、少し意外な対応。
古い木造の家だけど、特にこの20年は夏がとても暑くなるので、ほぼ各部屋にエアコンをつけるようになった。
2階に3つ。1階には1つ。考えたらぜいたくなことだとも思うけれど、寝室のエアコンが故障して冷房が効かなくなったとき、室内で寝ているのに、熱中症になりそうになって怖くなって、電気屋に慌てて修理を依頼したこともあった。
直ったときは、普段は冷房の風が苦手なのに、部屋の温度が下がるのがありがたかった。
エアコンの異音
妻が微妙に困った表情で言ったのは、エアコンのことだった。
ガガガガガ、っていう音がする。
そんなふうなことを言われて、なんだかわからなかった。
2階の妻の部屋のエアコンをつける。ゆっくり上部のカバーが開く。そのあと、しばらくの沈黙があってから、下部のカバーも開いていく。そして、ブワーっていうような音がして風が吹いてきて、部屋の温度が少しずつ下がっていく。
なんだか、そのゆっくりした感じが、昔の映画のオープニングのようだった。
しばらくつけて、スイッチを切る。
エアコンの下部のカバーがゆっくりと閉まっていく。
そこまでは異常がない。
そのあとは、上部のカバーが、やはり静かに閉まっていく。
もうすぐ閉まり切る、というタイミングで異音がした。
ガガガガガガガ。
確かにそんな音がした。
歯車がかみ合っていない---そんな印象のする音だった。
やや大きい音だけれど、それが10回くらい続いて、静かになった。
やっぱり故障したのだろうか。
試行錯誤
暑い日だったので、すぐに何かをする気もなくて、1日ほどは、そのままにしておいた。どうやら、スイッチを入れても、切っても、その音以外は異変がなく、エアコンとしては機能していたから、大丈夫かもと思い始めた。
それでも、妻も気にしていることもあって、取扱説明書を確認したら、その中に書いてある故障の例にはなかった。そこでちょっと嫌になる。
でも、なんとかしないといけない。
だから、エアコンを切ると暑い部屋の中で、窓だけは開けて、小さい踏み台に乗って、エアコンのカバーをはずして、足元に置いて、中を見る。お掃除機能がついてフィルターをまめに掃除していないから、ややほこりが溜まっている。
一部をはずして、1階へ持って行き、中も一応きれいにしてみる。
もう一度、それを取り付けて、エアコンのスイッチを入れる。
冷たい風が出てくるまで、一定の時間がかかる。そして、スイッチを切って、カバーが閉まるのを待つ。
もしかしたら、これで直っているかも、といった期待をしたのだけど、やっぱり、ガガガガガガ、と音がする。
直っていない。
また説明書を読んで、今度は、音がする本体の右側をなんとかしないといけないのだろうから、スイッチを入れて、スイッチを切る。
そして、上部のカバーが閉まっていくときに音がするし、そのカバーを動かして、出たり入ったりする金属部分があるから、ここに何かがあるのだとは思った。
それでまたスイッチを入れて切って、その金属の歯車の一部のような部分がボディーの中に入っていくとき、途中で、ガガガ、と音がし始めたので、そこで、閉まっていく上部のカバーを手で強めに押したら、カバーはきちんと閉まった。音もそれ以上しなかった。
その一瞬、ちょっと強引な方法だったけれど、直った、とキラキラしたような気持ちになった。
スイッチを入れて、カバーが開くとき、ガガ、と音がした。
余計に状況が悪くなった気がして、気持ちがすぐに暗くもなったし、スイッチを切った時も、閉まる際に、やっぱり、ガガガガガガ、と音がした。
そこで試行錯誤はあきらめた。
それほどひどい状況ではなさそうだけど、直ることも難しそうだった。
電気店
それで数日経った。
このエアコンも、他の部屋のエアコンも購入し、何かあると電話をしている電気店が地元にあって、最近、店舗の移動に関して、大変そうでもあったのだけど、それでも営業をしていて、さらには休みに入ってしまいそうなのも知っていたから、その前に電話をやっとした。
103歳まで生きてくれた妻の母親は、妻と二人で介護をしていたが、途中で、耳が聞こえなくなった。この電気店でテレビを購入した際、その義母のために普通にリモコンを使うだけで、字幕が出るようなセッティングもしてくれたりしたこともあったので感謝もしているので、何かあると電話をするが、それでも電気製品の故障で直してもらうまでは、なんとなくおっくうな気持ちが強い。
そして、電話をしたら、とりあえずはそれほど危険がないのが確認できたので、忙しそうだし、明日から休みになってしまうし、ということなので、急ぎません、ということを伝えたのだけど、しばらく経ったら、電話がかかってきて、予定していた工事が思ったよりも早く終わりそうなので、寄ってくれる、ということになり、恐縮しお礼も伝え、だけど、まだ1時間以上後のことなので、その間に買い物にも行けた。
チャイムがなって、電気店の人が来てくれた。
2階に上がってもらって、エアコンを見てもらう。
ほこりをとってもらったり、いろいろと確認もしてくれて、そして、ギアのところがすべってしまっている、と見立ててくれ、自分の感覚ではこの部屋のエアコンも最近と思っていたらすでに10年以上が経過していて、部品がないので、修理はできないとも言われる。
もうそんなに年月が経っていたことに、勝手に意外な感慨のようなものに少し囚われていたのだけど、電気屋さんに、今後のことを聞いた。
「これで、カバーが落ちてきたりすることはないでしょう。もし、もっとひどくなったとしても、カバーが開かなくなるかもしれません。その時は、手で開けてくれても問題はないです」。
エアコンの機能を発揮するのは、下部のカバーが開かないと力が出ないけれど、確かに上部のカバーはそれほど大きい影響はないもしれないなどと思っていた。
これから、どうすればいいですか。
「音が気になるとは思いますけれど、このまま使い切ってください。
---それで大丈夫だと思います」。
つまりは、ガガガがというのは、機械部分のずれが生じてしまって----10年以上使っているから、どこかが劣化しても当然だと改めて思ったのだけど---だから、それを承知の上で、使い続けるしかないようだ。
スイッチを切ったとき最後に音がするくらいで、他に問題はないのだから、と思ったら、少し安心ができたし、妻にも伝えて、それなら仕方がないね、ということになった。
体のどこかに病気を抱えて、それでも長生きする人もいるように、このエアコンも、微妙な故障を抱えながら、もう少しがんばってもらいたいと思った。
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