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気がついたら「セルフレジ」ばかりになっていた

 コンビニによっては、スタッフと直接金銭の受け渡しをしなくなった。

 レジで商品を渡すとバーコードで値段を表示して、その機械の画面をタッチして支払いをする。

 気がついたら、列の前に並ぶ人がカードだったり、スマホをかざして電子マネーといわれるシステムを使っていたりする場合も多くなり、現金を使う人が減っている実感はあるものの、自分自身はずっと現金を使い、機械の場合にはなるべく小銭を投入するなど、以前とは少し違う行動をするようにはなった。

 最初は戸惑ったが、少し経つと慣れてきた。さらには、コロナ禍でもあったので、直接の受け渡しを避けられた方がいいとも思っているうちに、だんだん、そうしたシステムが定着してきたと思う。

 もう少し経つと、現金だけだと不便になる場所が急速に増えてくるような予感はあって、そのときは携帯もスマホも持ったことがないし、恥ずかしながら低収入のためにしばらく持てそうもないので、そうなったら手持ちの「PASMO」を使ってなんとか乗り切ることになるのかもしれない。


セルフレジ

 少し遠い街にホームセンターがある。

 久しぶりに、妻がそこに行ったのは、園芸部門が充実しているからのようだったけれど、帰ってきて、そのホームセンターのことを教えてくれた。

 ほとんどがセルフレジになっていた。そして、通常のレジは一つだけ。セルフは一つ一つの商品のバーコードを読み込む手間があるので、大量に商品を購入した人は通常に並ぶことになり、そして、ほとんどの人はカゴがいっぱいになっているので、その一つだけの通常レジに長い列ができることになっている。

 そんなことを妻が教えてくれたのだけど、何かが間違っているような気がした。

 そんなに極端にセルフレジだけにして、人の流れが悪くなったら、次にその店に行くことをためらってしまい、そのホームセンター以外に選択肢があれば、他に行ってしまうから、営業的にもマイナスではないかと思った。

 さらには、他のセルフレジを採用している店では、もちろん形態は違うといっても、カゴごと商品を入れても、そこに入っているものをいっぺんに読み取ってくれるから、時間が短縮された経験があったので、一つ一つバーコードを読み込ませるのは、客に対して労働の分担をされているような気がするから、やはり、客が離れていくのではないか、とも感じた。

 ただ、実際に行っていないので、それ以上はなんとも言えない気もした。

ホームセンター

 さらに少し遠い場所のホームセンターに行く用事ができた。

 バスに乗って、降りて、横断歩道を渡ってホームセンターに入る。

 そのホームセンターは、妻がセルフレジばかりになっていた、というのと同じ支店だった。

 そのそばのお寺に墓参りに行くために花を買った。

 お寺のゴミ箱は一時期ビニールを捨てる場所がなかったので、墓に供えるために買った花束には商品としてビニールが巻いてあったので、レジでそれを取ってもらっていた。その上で紙をまいてくれた。ありがたかった。

 今回も、花を短く切りますか?については、断ったのだけど、ビニールをとってもらうようなことをお願いしたら、向こうにカウンターがあって、そこにハサミがありますからご自分でお願いします、と言われた。さらには、紙をまいて欲しいと伝えたら、それはビニールを取ってからになるので、やはりご自分で、と言われた。

 そのレジは「通常レジ」と表示があったが、スタッフの方がバーコードの読み込みはしてくれたものの、そのカゴを持たされて、「◯番です」と言われる。そこに行って、自分で機械に向かってお金を入れて、それで支払いは終了になる。

 「通常レジ」ではなく、「ハーフセルフレジ」なのではないか、と思った。

 それから、カウンターにいって、ハサミを探し、花束にまいてあるビニールを切ろうとしたのだけど、ビッタリ巻きついていて、とても切りにくく、少しイライラしてしまった。

 「通常レジ」という表示は2カ所あって、あとはセルフレジだった。そのセルフの機械は6台くらいはあったと思うけれど、「通常レジ」の列は平日の昼間なのに、長い列ができていた。

 実際にそういう状況を見ると、なんだか、もやもやした。

コストカット

 妻は、セルフレジが増えたことに対して、人手不足という言葉を出した。

 確かに常識的にはそうかもしれないけれど、だけど、個人的には、本当にそうだろうかという思いがある。

 現在は、非正規社員の割合が増えていくことが象徴するように、人に対して、とにかくお金をかけないという流れが強まっているように思える。なぜか、雇用される側であっても、経営者目線で語る人が増えていて、だから、現状に対して「人手不足」と言われていても、ぼんやりした印象に過ぎないけれど、安い賃金で文句を言わずに働く人がいないという、どこか身勝手な「人手不足」に過ぎないのではないか、というような気持ちもある。

 人に投資せずモノにも投資せず、それどころか人材を業績に貢献してくれる資産ではなくお金のかかるコストだと見なして目先の利益のために人件費を削減し続ける(中略)そんな危機対応の「縮み経営」は、1997年の金融危機からほぼ10年後に起きたアメリカ発のリーマンショックでいっそう強固になりました。

(『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』より)

 リーマンショックから10年以上が経つけれど、今もとにかく「人件費を削る」ことが目標になっているような気がして、その結果として収益が増えず、さらにコストカットをするという悪循環に陥っているのでは、という指摘もこの書籍でもあったようだった。

 それは、経済的なことや社会的な状況に対して無知な人間である私の印象と変わらない。そして、この著書では、さらにこうした指摘をしている。

「バブル崩壊後の最悪期を脱した段階で、人材や設備、研究・開発への思い切った投資を復活させ、中小企業への値下げ要求を撤回して共存共栄を図ってくれていたら」と考えてしまいます。

(『日本の会社員はなぜ「やる気」を失ったのか』より)

チグハグな光景

 だけど、そのホームセンターは、とにかくコストカットをしているように見えた。

 その結果として、「通常レジ」すらも、半分セルフレジにして、それ以外はセルフレジにして、おそらくは人件費を削減しているのだろうけれど、そのことは、「通常レジ」に長い列ができている状況をつくっていた。

 さらには、セルフレジの近辺に、おそらくは問い合わせに対してすぐに反応できるように、というサービス向上のためなのか、店のスタッフの方が、数人、待機していたように見えた。

 それならば「通常レジ」を一つでも増やした方が、人があんなに行列しなくて済むのではないか、とは列に並ぶ一人として思った。

 何かチグハグにしか思えない。

 この光景を見て、このホームセンターは、スタッフも、お客も、人として大事にしよう(こういうことがきれいごとで難しい目標だとしても)としているようには感じなかった。

 それもあって、一人の消費者としては、同じような店ができたら、もうこのホームセンターで何かを買うことは避けたい、という気持ちを、割と強めにさせるだけだった。

 この思いは、他の人たちともそんなに違わない感想ではないかと感じているので、もしかしたら、このホームセンターは売り上げが減っていくのではないか、とも考えていた。

 そうなったら、さらに人件費を削ることで、対応していくつもりなのだろうか。

シルバーレジ

 素人の発想に過ぎないけれど、セルフレジを増やすことが、それほど経営にプラスだろうか。

 これからさらに高齢社会になり、自分も含めて高齢者が増えていく中で、セルフレジを使うこと自体がしんどくなっていく人が増大していかないだろうか。

 もっと技術が進歩して、レジにカゴを置けば、それで全ての金額を読み取ってくれて、あとは支払いをするだけのセルフレジになれば、今までよりもレジでの待ち時間は短縮されるから、そういう店ならばお客は増えるかもしれない。

 そのことで、人件費が減らせたとして、結果として収益がアップしたとしたら、できたら、やって欲しいことがある。

 シルバーレジの導入というシステムだ。

 もしかしたら、すでに始めている企業はあるのかもしれないけれど、もしなかったら、どこかが始めて欲しい。

 たくさん買い物をして、レジの台に置き換えるだけでも力がいる。今は平気でも歳を重ねたら、年々キツくなるはずだ。その上で支払いも、小銭を出したり、お釣りをもらったり、カードなどを利用できれば、その辺りは楽になるかもしれないけれど、そこに対応するのが、すでにおっくうな場合もあるだろう。

 そうしたレジでの支払いに対して、焦らせずに適切に声をかけたりなどの介入をしながら、購入した人が、より苦痛を感じないように買い物をしてもらう。

 そんなケアをされるような、基本的には高齢者や妊婦の方や、障害を持つ人向けとして、電車のシルバーシートのようなレジをつくってもらえないだろうか。

付加価値

 さらには、購入してから家に持ち帰るのも一苦労で、それができないから、買い物を少なくしたり、諦めたりもしている人もいるはずだ。

 そうであれば、買い物をして、配送の手続きまでもそのレジでしてくれるようになれば、その店にしか来ない人も増えるだろう。

 さらには、送迎バスなども完備すればもっといいし、そこまでのシステムにすれば、そのシルバーレジを利用するには、少額でも会員料を取る必要も出てくるかもしれないが、それでも利用する人は一定数以上いると思う。

 年齢など利用条件に適合する人は、最初に利用するときに登録などをして、他の一般の客も使う時は、少し追加料金を取るようにすれば、そのレジが長い列を作る可能性を抑えられる。

 そして、ここがおそらく最も重要なことになるはずなのだけど、このレジを担当する人は、これまで以上の高いスキルと対応力が必要とされるので、優れたレジの担当者を募集し、そして、給料を専門職として高めに設定する。

 現時点でも、レジで商品をバーコードにかざしながら、その時間に収まるように世間話をしているレジのスタッフの方もいる。そうした姿には、高い専門性を感じるし、そうしたさりげないスキルのためにお客を増やしているに違いないと思わせる。

 そうした付加価値をもたらしてくれる人材は、もっと大事にすべきではないだろうか。

 これは、あまりにもいろいろなことを無視した夢想に近いのかもしれないけれど、そうしたシルバーレジを設置している店があったら、自分自身がまだ利用しなくてもいい時から、同じ買い物をするのであれば、そういう店で買い物をしたい。

 そのほうが、世の中が、少しでも住むやすいことにつながりそうだからだ。

 同じようなことを考えている人は、実は思ったよりも多いような気がしているから、シルバーレジの導入は、検討して欲しいと思っている。

 それは世の中から、少しでも残酷さを減らすことにも、つながっていくのではないだろうか。





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おちまこと
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