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「穴」をふさぐ。

 すでに誰も住まなくなった実家があるのだけど、事情があって、そのまま残すことになった。だけど、何もしないとひどいことになるので、頃合いを見て、かよって、窓を開けて空気を通し、庭の草を刈って、いつの頃からか除草剤をまいている。

 それから、かなり時間がかかるが、脚立をはしごにして、庭の樹木を時々、大きく切り落とす。そのときは、下の道路にドーンという感じで落ちて、それは小柄な大人の重さくらいで、最初は怖さもあった。だけど、その作業にも慣れてくると、特にノコギリを買い替えてからは、切るのがちょっと楽しくもなってくる。だから、実家だけではなく、家の柿の木も切るようになった。

 だけど、慣れないのが、「穴」をふさぐことだ。

スズメバチ

 実家の壁に、ガス暖房のパイプを通す「穴」があって、それは外とつないでいたのだけど、その装置を使わなくなってから、外側から、ただ、プラスチックのフタで、その壁にあいた「穴」がふさがっているだけだった。

 でも、そのフタが劣化して、いつの間にか、下に落ちて、その「穴」は、ただ黒く見えて、その向こうに壁の内側の、何もない空間が広がっていた。

 いつの間にか、そこにスズメバチが巣を作ったことがあった。

 その時、ちょうど実家に行って、庭先の作業をしていたのだけど、急に複数のスズメバチがあらわれ、刺されたら死ぬかも、という怖さと共に、なんとか「穴」をふさいだ。耳元で重い羽音がして、刺されると思って、ギリギリで、よけられたた瞬間もあったけれど、本当に怖かった。

「穴」をふさぐ

 そんなことがあってから、その「穴」をどうふさぐかについては、いつも、ちょっと困っていた。

 最初は、木の枝で押さえていたけれど、その「穴」の位置は、高さは70センチ強なので、次に行った時は、フタは庭に落ちていた。また、スズメバチが巣を作っていないかとヒヤヒヤした。

 なかなか、その高さに届くものがないし、壁は、昔は流行った「リシンかき落とし」という工法なので、ざらざらしていて、テープで、そのフタをつけるのも難しい。何個も「×」を重ねるように、びっしりとつけたけれど、次に行った時は、全部のテープが壁からはがれて、うなだれるようになっていた。フタはなんとかついていた。

 そのうちに、フタに紙粘土のようなものをつけた。なんとかつくようになった。テープはムダかもしれないけれど、雨戸の金属部分にも届くように使った。そこに、今は使っていないシューズ棚を、庭の石を重しにして、動かないようにして、そのフタを押さえるようにした。

 そのパターンで、何年か、しのいでいた。

 ただ、台風が来たりすると、そのシューズ棚が壊れていないか、と心配だった。それでも、形がゆがみながら、なんとか立っていた。そのたびに、その変形を生かして、「穴」をふさぐようにした。

 そして、いつの間にか、風雨にさらされて、そのシューズ棚が、原型を留めないほどになったので、使うのをやめた。

 あとは、フタの周りを、その時は妻と一緒だったので、さらに、接着剤のようなもので固めてくっつけて、ムダと知りつつもテープを壁にはり、それから、ほうきの柄のようなものを使って、そのフタをおさえて、それをブロックで固定した。

暑い日

 そして、それからしばらく経って、母の命日近辺に、お墓参りをして、そのそばのホームセンターで、除草剤(4・5ℓ)と、防虫剤などを買った。持って行ったリュックも含めて、かなり重くなったのだけど、今は左手の親指をケガしているので、右手と右肩で、購入したものと、リュックを持ったら、さらに重い気持ちがした。

 そのお寺から、実家までは歩くと、15分ほど。バスだと二つのバス停。タクシーは一台も通らない。何度か休憩をしながら、歩く。

 一緒に歩いた妻には、ずっと心配されていた。なんだか申し訳ないけれど、この日に限って、とても暑い日だったから、それで、余計に消耗したのだと思う。

 最後は坂道を登って、実家に着く。

イスを置く

 この前、来たとき、あれこれ、いろいろと植物を伐採したのに、あちこちに、いつの間にか背が高い草花が咲いている。樹木は、あれだけ枝を落としたはずなのに、もさーっと葉っぱが増えている。

 植物の力はすごい。

 だけど、今日もある程度は、いろいろと切らないといけないと思うと憂うつになるが、まずは、「穴」が気になって、見にいく。

 ホウキや、テープは全部取れて、ただ、フタだけがあった。

 それは、この前、固めた接着剤などが効いているせいか、くっついていた。それで、ほっとした。

 それで、どうするか、妻に考えてもらう。

 まずは、フタを、この前買った新しい接着剤で、補強する。それで、一応は固定される。

 そして、その周りのサイズを測ってくれた。

 もうテープは無駄なので使わない。ということになったけれど、ただ、それだけだと、フタは無防備にさらされてしまう

 という不安を妻に伝え、前から少し考えていた、実家の台所のイスの一つを、そのフタのおさえに使えないかということだったので、その提案をし、それで、確か、少し不安定になっているイスがあったから、それを「穴」をふさぐために使おうと話をすすめ、妻も賛成してくれた。

 そのイスを置いた。

 背もたれの部分が、ちょっとだけ「穴」より上で、板をくっつけたりしないと、「穴」をふさぐには、難しそうだった。

 だから、そのイスは脇に置き、次に、台所の、その隣にあったイスを持ってきて、置く。

 下に板をかませる必要があったけれど、「穴」のフタをおさえるのにぴったりのサイズだった。

 あとは、そこにイスが動かないように、石を乗せた。いくつも乗せる。


 それで、出来上がったのが、謎のイスで、見出しの写真です。

 見た目は不思議ですが、それでも、ここ何年かでは、かなり安定感があり、自分としては、ちょっと安心もしています。






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