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「石田純一」以外の人が、「パスタ」という言葉を、普通に使うようになるとは思わなかった。

 すでに古い表現になるのだけど、「トレンディ俳優」として、「モテる男」の代表的な存在だったのが石田純一だった。(過去形にするのは失礼かもしれない)

石田純一の言葉

 どうすればモテるのか?
 
 それは、この何十年かにわたって、特に若い時は大事なテーマであるから、石田純一という「モテる男」の存在は、芸能界という遠い場所とはいえ、うらやましく思う部分があった。

 おそらく、そう思う人が、結構いたせいか、一時期は、石田純一の男女交際に関する言葉は、かなり求められていたことがあった。

 どの番組か、細かい点は覚えていないが、確か、視聴者の「気になる女性がいるんですが、どうやって、誘えばいいでしょうか?」という質問に対して、こんな答えをしていた。


「おいしいパスタを食べられるレストランを見つけたんだけど、一緒に行かない?といえば、嫌がる女の子はいないと思うよ」。

 それを爽やかな笑顔と共に話していた。

 もう10年以上前のことになると思うけれど、そのときは「パスタ」という単語は、それほど広く使われていなくて、「スパゲッティ」という強めの発音から、やっと「スパゲティ」が定着しつつある頃だった。それすらも、照れと共に「スパゲチー」という「おじさん」はいたくらいだから、「パスタ」は、あまりにも「おしゃれ」な単語に思えた。

 もしかしたら、個人的な感覚に過ぎないのかもしれないけれど、「パスタ」という単語を使うときは、くちびるの当たりが、そわそわして、とても恥ずかしかったのは、自分が、そんな「おしゃれ」な言葉を使ってはいけないのではないか、という感覚もあったと思う。

 だから、その頃は、「パスタ」という単語は、石田純一と、その周辺の人々しか使わないものだと感じていた。

「パスタ」が定着した理由

 それから、かなりの時間が経った。

 今は、一部の人だけではなく、普通に「パスタ」という言葉は使われるようになり、だから、同時に「おいしいパスタ」という表現も、女性を誘うのに、それほどの強さを持たなくなっているように思う。

 おそらく、ここまでの話も、何を言っているのか分からない、と思われる可能性が高く、それは年齢が若いほど、そう思われることは感じている。

 それでも自分なりに考えを進めると、「パスタ」が定着した、その理由の一つは、「スパゲッティー」や「スパゲティ」よりも、「パスタ」という単語が短いからだと思う。

 あとは、「スパゲティ」といわれる料理が、麺状だったのと比べると、時代が進むほど、もっと幅の広い種類の「パスタ」が日本でも食べられるようになったから、それぞれの固有名で言うよりは、「パスタ」と総称した方がいい、という合理的な理由もあると考えられる。

 さらには「パスタ」という言葉を使う人が増えていけば、それが一般的な言葉になっていった、という「数の論理」と「慣れ」ではないだろうか。

 ただ、今でも、個人的には「パスタ」という単語を口にするのは、微妙な抵抗感がある。それは、若い時に使っていなかったからで、ある種の「臨界点」を過ぎてしまった頃に定着した言葉には、人はなじめない、ということだと思う。

 でも、それは「老いの言い訳」みたいなことかもしれない。


(この本↓の著者は1991年生まれ。この世代くらいから、「パスタ」が普通になっていたように思います)。


デザートとスイーツ

 そういえば、以前は、「スイーツ」という言葉にも「パスタ」と似た種類の恥ずかしさを、個人的には感じていた。

スイーツ。いつからこう呼ぶようになったのか、たしかなことはわからない。
が、そういえば、とある女性誌の取材の際に女性編集者が「このスイーツに合うようなお酒」とか「スイーツ好きの女性におすすめの」とか「さまざまなスイーツの」とか、やたらスイーツという言葉を使っていたのを、なにかちょっと違和感を持って聞いていたことは覚えている。ほほう、甘い物全体のことをスイーツと言うのだなとそのとき知ったのだ。
10年前、いや15年前だったろうか。その後「スイーツ評論家」とか「スイーツ専門家」というプロフェッショナルも登場してきてスイーツという言葉は定着したのだ。

 この記事は2015年だが、「スイーツ」という言葉の定着を、この著者は、2000年代前後と分析しているようだ。そして、この流れは、「パスタ」と同時期の印象もある。

もともと英語で「Sweets」。実際に使われている言葉で、英語圏でも甘い物全体を指す。しかし日本ではこのニュアンスで使うことはなかった。日本では、どうも雑誌やテレビ、インターネットなどメディアが使い始めたようだ。デザートというより幅広く甘いものを指すことができるし、なによりおしゃれ感がある。それも若い女性に刺さるような語感なのだ。
若い女性ではない私にはいささかこそばゆい感触があって、いまだちょっと使いにくい。

 とても的確な指摘をしてくれていて、同時に、この「こそばゆい感触」は、若くない上に、男性だった私には、もっと強かった。

 ただ、いつの間にか「スイーツ」は定着した。今は、違和感を訴える人も圧倒的に少なくなっている、と思うし、ただの個人的な感覚だけど、「パスタ」よりも「スイーツ」の方が、言葉にするときの抵抗感が少ないように思う。

スイーツが定着した理由

 「スイーツ」の前は「デザート」と呼ばれていたけれど、どうしてもフルーツの印象が強くなるし、食事の後、という限定もあったから、「おやつ」でもあり「デザート」でもあることを考えると、「スイーツ」という総称の方が合理的に感じたせいもあるかもしれない。

 さらには、コンビニの「スイーツ棚」の存在も大きいように思う。

 近くのコンビニに行っても、お弁当や、パン、さらには料理素材やレトルトに並んで、スイーツの棚もある。しかも、そのスイーツの棚は、その種類が増えてきたせいもあり、この何年かで、少しずつ占める面積が広くなっているような気がする。

 その上で、そこに並んでいる「甘いもの」は、すでに従来の「デザート」といった言葉には、収まらないような工夫や技術が注ぎ込まれ、食べると、フワーっと幸福感が広がるようなものも多く、なんというか「スイーツ」と呼んだ方がふさわしいような気分になる。

 これだけ日常的な場所に「スイーツ」が入り込めば、定着もするだろうし、とても個人的な感覚に過ぎないけれど、「デザート」と「スイーツ」は少し違うものと思っているので、「新しい言葉」として、「スイーツ」を使っている感覚がある。

 それは、自分にとっては、これまであった「スパゲティ」に、おしゃれ感をまぶしたような「パスタ」という、違う言葉を使うような照れ臭さとは、少し違うように思う。(あくまで、個人の意見です)。

 だから「スイーツ」という言葉の方が、使うのに抵抗感が少ないのではないだろうか。


 あとは、「グルメ」や「ピッツア」という言葉にも、似た歴史があるのかもしれないけれど、そこまでを書く気力がなくなってしまいましたので、すみませんが、今回は以上です。






(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)。




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おちまこと
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