見出し画像

テレビについて(69)仲里依紗の発言で変わりそうなこと------「ワイドハイターCM」

 テレビをぼんやり見ていると、CMが目に入ってくることがある。

 録画していると、どうしてもCMを飛ばしてしまうから、生というか、ライブで見ているときの方が、CMを見る機会が多い。

 そこには、安直な表現だけど、現在「売れっ子」と言われる人たちが出演して、しかも、元気な姿を見せている。仲里依紗も、そのうちの一人で、ドラマで見て、すごいと思ったことも少なくなが、コマーシャルの時も、ふと見ていたら、「ワイドハイター」のCMで「濃いい緑のワイドハイタープロ」と叫んでいるように聞こえた。

 これで、「濃い」と「濃いい」のバランスが少し変わるかもしれない、と思った。


「濃い」と、「濃いい」

 元々、「濃い」が多く使われてきて、「濃いい」は、それに比べたら、歴史が浅い感じがしていた。

 だが、それは、関東に住む人間の印象のようだった。

 この「weblo辞書」によると、「濃いい」は大阪弁ということだ。

濃い

語幹が1音であると発音しにくいためか、「濃い」が語幹となった

(『Weblio辞書』より)

 「濃い」は、その語幹が「こ」だけであって、だから、「濃い」を語幹として、「濃いい」になった、という理由のようだ。

 だから、「濃い」の方が、標準語の世界では、正しいということになりそうだ。

濃いめ

 ただ、語幹が「濃い」の「濃」であるのならば、そして「濃い」が正しいということになるならば、「濃いめ」ではなく「濃め」が正解になるのでは、と思える。

 ただ、そのことについても、すでに語論がされていた。

 形容詞に「~め」が付く場合には、その「語幹」に付くのがふつうです(『ことばのハンドブック 第2版』P.74)。「語幹」とは、形容詞から「い」を除いた部分のことです。
(例)「大きい」
· →語幹は「大き」
· →「大きめ」(×大きいめ)
これは、「少ない→少なめ」「多い→多め」「かたい→かため」のように、規則的になっています。ここからすると、「濃い」の場合は「濃め」が正しいことになってしまいます。
ただし、ことばの全国調査の結果から、「濃め」という言い方をする人はたいへん少ないことが分かっています。このため、「濃い」の場合には例外的に「濃いめ」を使うことになっています。

 「甘い→甘口」「辛い→辛口」のような「~口」も、語幹に付きます。これも、「濃い」の場合は例外的に「濃い口」となります。「薄茶」に対して「濃い茶」と言うのも、同じ理由です。ただし、「~すぎる」の場合は「濃いすぎる」ではなく「濃すぎる」となります。

(『NHK』より)

 このあたりは、発音しやすい、ということと関係しているし、何しろ、多く使われているかどうかも影響している。

 だから、「濃い」や「濃いい」は、元々、複雑な背景を持つ言葉だった。

字幕の配慮

 仲里依紗のプロフィールを見ると、長崎県出身だったので、CMで「濃いい」と叫んでいるように見えるのは、方言ではないかと納得がいった。

 ただ、2024年時点で、、知識人、芸能人、アスリート、実業家、アーティストなどを含めても、仲里依紗の説得力はかなり上位(総合ベスト10くらい)に入っていると感じているので、もしかしたら、これで「濃いい」は方言かもしれないけれど、もっと多数の人が日常的に使用することになれば、「濃い」も「濃いい」もどちらも正しい、といった流れにつながるかもしれない、などと思っていた。

 一応、このCMの動画を見つけて再生し、改めて見た。

 すると、こうした動画には字幕がついていて、そこには「濃いい」ではなくて「濃い〜緑のワイドハイタープロ」と書いてあった。

 耳で聞いていると、「濃いい」に聞こえるかもしれませんが、全国で放送されているCMである以上「濃い」を使っています。ただ、「濃い〜」と語尾を伸ばしていますので、「濃いい」と聞こえる可能性はあります。ただ、基本的には「正しい」表記とされる「濃い」と表現しています。

 そんな配慮のようなものが、この短い字幕に込められているように思った。

 なんだか、すごい。



(他にも、テレビについて、いろいろと書いています↓。もし、よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。





#コンテンツ会議 #最近の学び #テレビCM #ワイドハイタープロ
#濃い #濃いい #仲里依紗 #言葉 #地域 #方言 #違い #語幹
#動画 #配慮 #字幕 #毎日投稿

いいなと思ったら応援しよう!

おちまこと
記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。