言葉ができたのは、かなり古い。
それも、オリジナルに言葉を生み出せた文明というのは、どうやら限られているらしい。
それから、人類は飛躍的に進歩したと言われているが、人間に生まれると、だいたいは、ずっと言葉を使い続けて生きていくことになり、不思議なことに、言葉は時代とともに変わっていく。
そして、主に、その時代の若い人間が、新しい言葉を生み出す。それは、すごく新鮮なほど、すぐに古くなる。だから、ちょっと冷静な人間は、残る場所には記録をしない。
ただ、若い世代の言葉が新しく感じるのは、その分、歳をとっただけではないか、と自分自身を疑うこともあるが、でも、やっぱり、新しい言葉は、気持ちがいいと思えた作品だった。
『ビューティフルからビューティフルへ』 日比野コレコ
作者は、2003年生まれ。21世紀の人だった。
裏表紙に書いてある作品の紹介なのだけど、これを読んだ印象よりも、個人的には、もっと重さと切実さが加わっているように思えた。さらに、言葉は、元々は、体に働きかける運動体のような要素があることも、思い出させてくれる。
(※ここから先は、内容についての具体的な引用もあります。もし、未読で、何の情報にも触れずに、読みたい方は、ご注意ください)。
登場人物「ナナ」の生育環境は、特に母親のため、特殊になってしまっている。
伝えたい気持ちに押されるように、次から次へと言葉が連なっているようだった。その語られている内容は、とんでもなく大変なことではあるのだけど、それでも、その言葉のリズム自体で、心地よさまである。
絶望の形の違い
登場人物は、それぞれ、自分のことを書いている。
そして、その思いや気持ちは、自分だけのものだから、これまでにある言葉だけでは正確に表現できないのではないか。そんな焦燥感といらだちのようなものがあるせいか、その言葉には新しさと、スピード感が詰まっているのかもしれない。
静は、自分の好きなダイとの会話も、微妙に気持ちはすれ違っていて、それも分かりながら、どうしても続けてしまう。
勉強勉強E判定
ナナは、死にたいを抱えながらも、勉強はウソのように続けている。
ビューティフル
そして、ビルEは、ナナに、こう表現される。
ビルEは、こんな文章を書いた。
どの人物も、切実で、追い込まれた気持ちの中にいるずなのだけど、言葉にしたせいか、失礼ながら、勝手に少し救いのようなものや、心地よさも感じてしまうのは、やはり、まだ、その絶望が新しいせいかもしれない。
おすすめしたい人
自分の年齢が高くなってくると、その新しさが、本当に新しいかどうかに自信が持てなくなってきます。それでも、新しいほど、古くなるのも恥ずかしくなるのも早いはずなので、この紹介を読んで、少しでも興味を持ってくれた人は、ぜひ、早めに、全部を読み通すことを、おすすめします。
気持ちが少し落ち込んでいる人。
毎日が停滞しているように感じている人。
そんな人たちにも、おすすめできると思います。
(こちらは↓、電子書籍版です)。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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