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【読書メモ】犯罪心理学者は見た 危ない子育て
子育てにおいてのアドバイスって色々あるけど、「○○するといいよ」より「○○するとヤバいよ」の方が気になってしまう。
そんな怖がりな親である私にめちゃくちゃ刺さる本に出会いました。
著書は、少年鑑別所、刑務所、拘置所に勤務し1万人以上の犯罪者の心理分析をしてきたお方。
犯罪者がどのような家庭で育ったのか、
どういった経緯で事件を起こしてしまったのか、を調べることが専門分野。
あえて言葉を選ばずに言うなら、子育ての失敗事例を多く見てきたわけです。
本書では、「こうすればうまくいく」という子育ての成功法則の話はしません。
どの家庭にも当てはまる成功法則はないと思っていますし、あったとしてもわたしが語るべきことではありません。
でも、失敗から学ぶことはできると思っています。
非行・犯罪の事例を、子育ての学びに変えていくのが本書の趣旨です。
犯罪者を育ててしまった親がやっていたこと。
決して人ごとじゃない。
子育て中の親なら誰しも「これ自分もやってしまってるかも…」と感じて背筋が寒くなる本です。
本の中から、覚えておきたいことを記録します。
(めちゃくちゃ長くなってしまったので、飛ばしつつ流し読みでどうぞ)
子育ての失敗は、4つのタイプに分類できる
犯罪者の親子面談を行い生育歴を細かく分析していくと、犯罪者を育てた親は4つのタイプに分類できるそう。
・過保護型
・高圧型
・甘やかし型
・無関心型
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本によると、非行少年の親だけでなく全ての親がこの4つのいずれかに当てはまるとのこと。
各タイプがそのまま失敗となるわけではない。
けれども、どのタイプも行き過ぎると、犯罪者を生み出す「危ない子育て」になってしまうんだとか。
各タイプに潜む危険を、事例とともにまとめます。
過保護型
「支配」×「保護」=過保護型
子どもを支配し保護する。過剰に積極的な養育態度。世話を焼きすぎて、子ども自身の成長の機会を奪ってしまう。
子どもは依存的で、自主性がなく、打たれ弱くなる。
親は、とにかく何でも手伝ってあげるというスタンス。
生活の中心は子ども。
欲しいと言ったものはすぐに買ってあげる。行きたいと言った場所にはすぐに連れて行ってあげる。学校の持ち物は毎日チェックしてあげる。
世話を焼き保護して育てた結果、
食事の後、食器を下げることすら自分でしない子どもに育つ。
子どもにとって両親は、召使のような存在。
親が自分に何かをしてくれたとしても感謝はしない。当たり前のことだから。
逆に、「やってもらえない」時に強く不満を持つようになる。
寝坊して学校に遅刻したら、「お母さんが起こしてくれなかったから」
忘れ物をしたら、「持ち物の準備をしてくれなかったから」
と考え、腹を立てる。
何でも与えられてきたから、自分が強く望む「やりたいこと」が見つからない。
親にお世話をしてもらって、何となく「正解」の道を進むけど、本当に心から自分がやりたいこともなく、ぬるま湯の人生を送る。
そんな時、薬物に出会い、今までの人生で出会ったこともないような高揚感を感じ、のめり込む。
薬物乱用で検挙されることになった。
【問題点まとめ】
・親が何でも手助けをするから、子どもの問題解決能力が育たない。
・子どもは我慢する経験や失敗に対処する経験が少なく、ストレスに弱くなる。
【過保護型の親が改善すべきこと】
・子どもに「自己決定」させるようにし、親は「見守る」。
・うまく対処できず子どもが悩んでいたら、代わってあげるのではなく話を聞いてあげる。
高圧型
「支配」×「拒否」=高圧型
子どもを受け入れず、支配的に振る舞う養育態度。命令して、親の思う通りに行動させようとする。
子どもは自主的に何かを達成しようという意欲に乏しく、自己肯定感が低くなる。
子どもには、いい大学に行って、いい会社に入ってほしい。
親はそれが子どものためだと考えている。
「健康のために野菜中心の食生活を」
「運動も必要だから、サッカーをやりなさい」
「ゲームは学習につながるものを」
「門限は必ず守りなさい」
「洋服はこれを着なさい」
「人一倍勉強しなさい」
命令口調で指導するのが普通。
世間体にも厳しく、目立つことをすると「社会からどう見られるか気にしなさい」と言う。
親の指示に従わないと、子どもを叱る。
子どもは不満を持っていたが、「お前のためだ」という言葉がのしかかり、反抗できない。
親の言うとおりにしていれば大きな問題は起きないし、健康で元気だし、運動もできるし成績も良い。
しかし自分の意見を聞いてくれず考えを押し付けてくる親に対して不満が積もり、表向きは親に逆らわないようにしながら、大学進学とともに家を出る。
親の拘束から逃れた途端、今まで禁止されてきたこと全てに手をだす。
一人暮らしでパチンコにハマっていた時、「簡単だけど稼げるバイトがある」と声をかけられた。
犯罪の匂いを感じつつも話に乗り、闇バイトに手を染め、特殊詐欺で逮捕される。
【問題点まとめ】
・親に支配されて育つため、子どもは親の顔色をうかがい、自主性や積極性が育たない。
・親の指示に従って育った子どもは「指示待ち人間」になり、自分の頭で物事を考えられなくなる。
(教育虐待、スパルタ教育はこの「高圧型」に当てはまる。)
【高圧型の親が改善すべきこと】
・指示命令せずに、子ども自身に考えさせる。
(安全に関することや社会規範(人のものをとってはいけない、順番を守るなど)は、命令でOK)
・結果ではなく、挑戦する姿勢を応援する。
・子どものありのままの姿を認める。
甘やかし型
「服従」×「保護」=甘やかし型
子どもの顔色をうかがい、子どもの言いなりになる養育態度。必要な指導をせず、子どもの課題解決の機会を与えない。
子どもは共感性が乏しく自己中心的に。
子どもは家の中の「お姫様」。
小さい時から欲しいものは何不自由なく与えられて育ち、自分の思い通りにならないとヘソを曲げる「わがまま」に育つ。
学校でも家と同じようにわがまま放題で、次第に学校で浮くようになる。友達も離れていき、孤立する。
家の中に、子どもの自己中心的な行動をたしなめる人は誰もいない。
しかし子どもは心の底では気づいていた。
綺麗に着飾っていても、家族以外の誰からも相手にされていないことを。ちゃんと話を聞いてくれる友達なんて一人もいないことを。
そんな子どもが成長し、ホストクラブに通うようになる。
お金さえ出せばみんな自分の言うことを何でも聞いてくれる。お姫様扱いしてくれる環境にのめり込む。
自分でお金を稼いだことのない子どもは親に金を無心する。
自分の要求通りに金を出さない親に腹をたて、暴れ、大怪我をさせ、傷害罪で少年鑑別所に収容されることとなった。
【問題点まとめ】
・親が子どもの顔色をうかがい言いなりになるので、子どもは自己中心的に育つ。
・共感性に乏しく、他人の目線で物事を考えられない。思い通りにならないと人を責めたり暴力に走る。
・自分の力でお金を稼ぐ能力が育たず、強盗などの犯罪に走るケースも。
・欲求不満耐性が低くなり、性犯罪に向かうことも。
【甘やかし型の親が改善すべきこと】
・甘えと甘やかしの区別をつける。
(「甘やかし」とは親都合で子どもの自由にさせること。際限なくお菓子を与える、制限なくゲームをやらせる、就寝時間を守らせない、など)
・子どもの将来を考えて必要な「制限」を与える。
無関心型
「服従」×「拒否」=無関心型
子どもに対して拒否的であり、主体的に子どもに関わらない養育態度。親自身の生活が中心であり、子どもへの関心が薄い。
子どもは被害感や疎外感が強く、自己肯定感が低くなる。
共働き家庭で仕事が大好きな両親。両親ともに、いちばんの興味関心は仕事。
子どもに対しての関心が薄く、子どもの年齢を聞かれてもすぐに答えられないほど。
両親ともに収入は高く、家事代行などを活用し家の中はきちんと保たれてるし、子どもに対して否定的な態度や攻撃的な態度を取ることはない。
子どもは、学校でのルールが守れない、宿題を忘れる、挨拶せず給食を食べ始めてしまうなど生活面での困り事が多かった。
友達とのトラブルも頻発していたが、親は無関心。
衣食住に困らせたことはないし、虐待したことも干渉しすぎたこともない。
教育方針は「子どもの自主性を尊重する」。
「親としての務めは果たしている」と思い込んでいた。
親が自分に興味を持ってくれない寂しさから、子どもは家の外に居場所を探すようになる。
同じようにネグレクト状態で育った「半グレ」組織のメンバーに優しくされ、恋心を抱き、依存してしまう。
そんな中、売春あっせん業へを手伝わないかと話を持ちかけられ、協力を繰り返し、逮捕されるに至った。
【問題点まとめ】
・子どもへの関心が薄く、親中心の生活。衣食住は与えているが、根底に愛情が不足しているため、子どもは愛に飢えてしまう。
・しつけも十分に行わないので、子どもは集団行動が苦手になり、社会適応が難しくなる。
・家の外に居場所を求め、優しくしてくれる人に依存し、非行に走ることも。
【無関心型の親が改善すべきこと】
・親自身に愛情を持って育てられた経験がなく、愛し方が分からないケースも多い。
・家族だけで解決することは難しいので、専門機関のカウンセリングなどに頼る必要あり。
本を読んだ感想 (理想的な親とは)
4つのタイプの具体的な犯罪事例を見てみて…めちゃくちゃ怖かった。
どの親のタイプも全く人ごとじゃなくて、思い当たる節がある。
私自身のことを振り返ってみると、第一子生まれたばかりでフルタイム復帰した頃は「無関心型」と「甘やかし型」だったかもしれない。
子どもをどう育てたら良いか分からなくて、色々と保育士さんに丸投げだったり
ルールの決め方や子どもへの言い聞かせ方も分からなくて、子どもに言われるがままにテレビを見せていたり。
仕事をやめて専業主婦になった時期は「過保護型」にシフトしていた気がするし、今は「高圧型」にぎくりとくるところがある。
本によると、理想的な親とは、下図の縦軸と横軸が交差する真ん中に位置するんだとか。
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常に真ん中に位置している親なんて現実にはいないでしょう。
ある時期は甘やかし、ある時期は強くあたる。ひとりの人が時期によって場面によって、あるいは子どもによって養育態度が偏るのも普通です。
極端に偏らなければ、いいのです。
偏らず、厳しさと優しさのバランスを保つことが大切。
核家族化が進み、他の家庭に干渉することをよしとしない現代。
もし偏っていても誰にも指摘してもらえないことが多い。
だからこそ、自分で自分の子育てを振り返っていかないといけない。
良かれと思ってやっていることが、子どもを苦しめていないか?
問題を引き起こしていないか?
自分の子育てが、思い込みに支配されていないか?
子どもをちゃんと見て、客観的に自分の子育てについて考えることがめちゃくちゃ大事だな〜と、思った。
子育てって悩みの連続で、常に「これでいいのか」っていう葛藤が付きまとうけど、それくらい慎重でちょうどいいのかも。
むしろ、悩みもなく「私の子育てこれで完璧!」って言ってる人の方がやばいのかもしれない。
自分一人で突き進むと偏りがちな子育て。
いろんな人の子育ての話を聞いて、バランス取っていきたいなと思った。