魚上氷‥うおこおりをいずる
『魚上氷‥うおこおりをいずる』 2月14日から18日頃
街全体がモノトーンに染められ灰色の空が広がる日々の中にも時折ひょっこり顔を出すやわらかな陽射しにわずかながら春を感じる瞬間がひとつまたひとつ‥と増えこのまま春が来たらいいのに‥と願わずにはいられません。
『魚上氷‥うおこおりをいずる』
川や湖の氷が割れ魚が跳び跳ねる時期となりました。
実際にその様子を目にしたことはないのですが今こうしている間にも水面を覆っていた氷がひび割れ魚たちが待ってましたとばかりに嬉しくてぴょんぴょん跳ねているのかも?なんて可愛らしい姿を思い描いてしまいます。
前回の黄鶯睨晥の中で
「春告鳥」のウグイスのお話をしましたが
「春告魚」と呼ばれる魚たちの代表はニシン、鰆、メバルなどが挙げられますよね
今や旬や季節を問わず年中店頭で見かける野菜なども多くありますがやはりその時期の「旬のもの」を見かけると一際キラキラ輝いて見え思わず手が伸びてしまいます。
四季がある日本だからこその旬のもの。食卓に取り入れその時期ならではの美味しさに触れたいものですね。
今回は少し俳句と季語の話をしたいと思います。
この時期の季語として
「春一番」 「春寒」 「春浅し」 「薄氷」 「春めく」 「春時雨」など
春を使ったものも多く日々詩を書いているわたしとしてはその響きだけで詩情に刺さるような心がときめくような‥そんな言葉たちが並びます。
芭蕉の句に
『猫の恋やむとき閨(ねや)の朧月夜』
とこちらも春の季語である「猫の恋」を詠ったものがあります。
発情期を「恋」と呼ぶところにわたしは昔の人々の「粋さ」を感じるのです
猫の鳴き声がやみ静かになった寝室に月の光が差し込み人恋しいようなさみしい気持ちになったのでしょうか。
そして気まぐれでクールなイメージの猫たちも情熱的な恋をしたり切ない恋に涙したりするのでしょうか。
五日に一度七十二候についてまた俳句や短歌などにこうして思いを馳せることでわたし自身毎日の中の五感に触れる変化をより敏感に‥そして移り行く季節をより身近に感じる時間になっています。
そんな風に得たものがわたしの心の引き出しに‥明日への作品に‥そして皆さまの心の和らぎへ繋がるといいなと思い過ごしています。
今回もあおさんの素敵な写真に添えて‥。
読んでいただきありがとうございます。
魚上氷‥うおこおりをいずる
池や湖の氷が割れ魚が跳ねあがる頃
photograph‥あお
writer‥るん