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レッドオーシャン間近!?価格競争を回避するには?元祖イラストマーカーコピックのマーケティングトレース事例

趣味の似顔絵(カリカチュアと言う誇張似顔絵)を手描きするときにいつも使用する.Too社のコピックマーカー(コピックスケッチ)の販売戦略についてマーケティング分析してみました。現在は日本製品質と独自のカラー識別やメンテナンス用品の豊富さで圧倒的シェアを誇っていると思われるコピックですが、「新たなライバルの台頭」と「イラストレーションのデジタル化」により今後の戦略が注目されます。

マーケティング×笑顔絵で日々の暮らしを明るくする【暮らしマーケティング】を提唱している「サク」です。日常の中にビジネスマーケティングを取り入れて皆さんの暮らしが今よりも明るくポジティブになってくれれば幸いです。


1 基本情報

会社名:株式会社トゥーマーカープロダクツ
設立:平成元年10月6日(創業大正8年)
代表者:石井 剛太
業態:デザイン・クリエイティブ製品全般を取り扱う総合商社
理念:人々がクリエイティブになれる環境をクリエイトする(.Tooより)
従業員数:130人

【主な参考文献:5サイト】

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2 PEST分析

PEST分析によりイラスト業界を取り巻く社会全体の動きをマクロ視点で確認します。

【政治】
2021年1月より改正著作権法施行。ネット上にアップされたマンガや書籍のダウンロードを規制する法律。海賊版サイトからの保護の一方でそれによる技術や創作の低迷の懸念があります。

【経済】
スマホゲームアプリの普及でデジタル層のイラストレーター自体は数を増やしています。またデジタルイラストの参入障壁は低いため作品の単価が下がる傾向があると思われます。これはイラスト業界全体にとっての「絵の価値」を大きく左右すると思われます。

【社会】
新型コロナの影響による不景気で広告業界が縮小傾向。イラストの需要が落ち込んでいると思われます。しかし、おうち時間の増加で新たな趣味としてイラストが選ばれる可能性も秘めています。

【技術】
スマホアプリの技術向上とスマホゲームの普及によりデジタルイラストの需要は高まっているが、それにより手描きイラストの需要は落ち込んでいる?

●いずれも主にデジタルイラストに関する内容ですが、アナログイラストの需要も景気や市場価値などに大きく左右されると思われます。

3 5Forces 分析

5Forces分析を使いコピックを取り巻くイラストマーカー業界の構造を探ります。

【新規参入】
・ブラシタイプは1本80円程度のイラストマーカーOhuhu。アメリカではすでにコピックと肩を並べるほどの人気の様子。日本サイト(ohuhu.jp:ドメイン取得日2019年9月)も立ち上がり日本へ本格参入の予感。【脅威:高】

【直接競合】
・現在はデリーター社製ネオピコ1本220円だが、このままの状況だと、Ohuhuの台頭により淘汰される気配。【脅威:低】

【代替品】
・デジタル化が進んでいる。若手イラストレーターは無料スマホアプリやフォトショップ、プロクリエイトなどのプロ向けソフトから始める層も多い。【脅威:中】


●格安のOhuhuの台頭は今後の直接競合としてはかなりの脅威であると思われます。
●日本国内でのリブランディングと認知をさらに広げる戦略が必要になると思われます。
●デジタルとの差別化をしっかり行いデジタル層との共存が今後の戦略の鍵になると思われます。

4 STP分析

STP分析でコピックが狙う市場のポジションを確認します。

【セグメント】
プロ向けカラーイラストレーション戦場
(マンガ、コミック、イラスト)

【ターゲット】
手描き(アナログ)イラストを描くマンガ家やプロのイラストレーターや似顔絵師

【ポジショニング】
横軸=お絵描きレベル

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Ohuhuやネオピコが初心者向けエントリーモデルなのに対してもコピックスケッチはプロ向けモデルとしての地位を確率論しています。

5 Ohuhuとの商品比較

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●コピックはプロのイラストレーターに多く使用される日本製高品質が人気の理由。さらに詰め替えインクや交換用ペン先もラインナップされ長く使用できるため多用するプロにとってはコスパが良いのが特徴です。
●Ohuhuは使い捨てでありながらやはり1本あたりの価格が魅力的です。色数がまだ少なく詰め替え対応も不可ですが、コピックを追随するにはこのあたりの改良も今後される可能性が十分考えられます。色識別もコピックを意識したものと思われます。

6 これまでの.Tooの販売戦略

ここで現在、展開されている.Tooのコピック販売戦略を整理してみます。

【A】SNSでの情報発信
 →ユーザーがtwitterに多くの相性がいい。
 →イラストが投稿されやすいinsagramとも相性がいい。

【B】コピックアート教室
 →福祉施設での塗り絵教室やアート教室を開催。作品展なども開催され利用者の意識を高めている。

【C】使い方解説
 →詰め替え方法やペン先の交換などをサイトで丁寧に解説。

【D】コピックツインズ
 →コピックのオフィシャルキャラクター。twitterで商品についてのツイートや作品のリツイートなどで利用場面を発信。

【E】コピックアワード
 →年に一度、オンライン上で開催される作品展。漫画家やプロのイラストレーターなどを審査員に迎える。外国語サイトも用意され世界から応募者を募っており2020年9月末現在で4300投稿以上の盛り上がり。

【F】企業訪問、学生応援プロジェクト
 →主に学校を訪問しコピックについての理解を深めたり使い方の講習を行いシェアの維持拡大を図っている。

カスタマーピラミッドで表現すると

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●各種情報発信や未来のイラストレーター候補(学生)への支援などコピックのシェアの維持を行っている。
●コピックアワードや教室などでコピックを使うための動機付けができている。

7 コピック利用者の世代交代

参考文献の中でデジタル世代の台頭と「世代交代」についての興味深い考察がありました。

【アナログ→デジタルへの心理】
アナログの表現に限界を感じデジタルへ移行する。

【デジタル→アナログへの心理】
アナログ世代であるプロが愛用していることがコピックを手にするきっかけになっている。デジタルの高度な表現をアナログでどこまで再現できるのか探究する。アナログのリアルさや「職人芸」のようなものに対する憧れがある。

このようなデジタル層の心理によってデジタル化の波に流されることなくシェアの維持に成功している.Too。コピックアワードでも人気のイラスト投稿サイトpixivと協業することによりデジタル層の囲い込みも出来ていると思われます。

デジタルとアナログの共存がイラスト界の今後のテーマになることは間違いないと思います。

8 迫り来るOhuhu対策

ブラシタイプを発売するなどコピックにとって直接競合となり得るOhuhuマーカー。このままOhuhuの台頭を許してしまうとイラストマーカー界のシェア逆転をも起こりえる状況になってしまいます。

理由は2つあります。

【1】Ohuhuがカラーバリエーションを増やし詰め替えインクに対応した場合、見かけ上は商品差別化が出来なくなり価格競争に陥るため。

【2】その後、プロイラストレーターにOhuhuマーカーが広まると今まで.Tooの戦略が根本的に崩れる懸念があるため。

●1の状況に陥った場合、コピック本来の強み「高品質」「詰め替えできる」での差別化では太刀打ちできない可能性があります。なぜなら、一般客の心理では

そこそこの機能 × 低価格 > 高品質

となり得るからです。大手小売りのPB商品戦略と同様ですね。

●2の場合、ユーザーの世代交代の際にコピックを選ぶ最大の理由である

「憧れのイラストレーターがコピックを使っているから」

と言う強みが無くなってしまうからです。これはまさしくブランド・信頼性において最重要視しなくてはなりません。

9 どうすればシェアを維持し続けられるのか?

もし私が.TooのCMOだったら…
と今後のコピック販売戦略について考えてみました。

価格競争に巻き込まれない戦略の王道は
やはりブランディングです。

ブランディングによって
逆に【商品価値を高める】のが最善の策だと考えます。

商品価値 = 機能的価値 × 感情的価値

感情的価値とは、

・商品を購入する時
・商品を使う時

にもたらされる感情を伴う価値です。

ここで再度カスタマーピラミッドを確認します。

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このピラミッドで私が1番重要だと思うのは、ピラミッドの頂点である

プロのイラストレーター御用達、
     すなわち「ブランドの信頼性」

プロが使用 =
   【プロに憧れる見込み客の購入動機】
となっておりこれがコピックのシェアを支えているは間違いありません。

ところが最重要と思われる肝心なプロに対する施策がとられていないことが分かります(私が気付けていないだけかもしれませんが)。


そこでとるべき最重要施策はズバリ

「コピックのリブランディング」

逆に言えばプロの流出を抑えることさえできれば、それ以外の施策は十分機能していると考えられるためカスタマーピラミッドの維持が引き続き出来ると考えています。

具体的な施策の例としては、

・プロのイラストレーターやマンガ家とのスポンサー契約。

プロにコピックの提供と引き換えにコピックの良さや魅力を伝える活動を積極的に行うことです。

・イラスト投稿SNSを立ち上げる。

pixivなどとの関係をさらに深め.Too独自のSNSを立ち上げてプロと見込み客の囲い込みを行うことです。

10 最後に

私自身、似顔絵教室に通っていたとき手描き似顔絵ではコピックが必須でした。およそ3年間、毎週1回2時間の授業がとにかく楽しくて毎週通いました。習得するにはとても難しいのですがコピック1本で様々なライン表現ができ、キレイなラインが引けたときの感覚は今でも忘れられません。

デジタル化が進む中、参考文献の中に「アナログにしか出来ないこと」が記載されていたので紹介します。

・似顔絵
・色紙販売
・絵本執筆

似顔絵師さんがライブで描く似顔絵のスピード感・ライブ感とお客さんの笑顔や絵本のイラストの温かみはアナログである手描きでしか作れない究極の芸術作品ですね。

作品自体のクォリティ × その場の温かい空気感

アナログにはそんなデジタルには出せない価値があることをぜひ知っておいて頂けたらと思います。


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最後までお読み頂きありがとうございました。

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さく@絵の言語家
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