水野しず
水野しずの考えを最も率直に届けるコーナー。 毎週金曜日の夜に配信予定ですがわりと前後します。
覚せい剤をやっている人というのは見ればわかる。いや、そんなことないか。一度猛烈にわかったことがあるただけで、世の中にはバキバキにヤクをキメながらその感じをおくびにも出さず、平穏な生活の挙動を繰り広げるステルスヤク中が山ほどいるかもしれない。恐ろしいことだ。そんなことを考えだしたら可能性に耐えられないから全てをないことにして生きている。気がついてないだけで、ディーンアンドデルーカにも竜泉寺ウォーターパークにもダイニングパーク横浜にもそういう人はいるかもしれない。ともかく一度、
昔飼っていたねこが夢に出てきた。 ねこはその辺に落ちていた雑種で全体的に白い。クラスにいたら確実にスター選手ではないとわかる、平凡なねこだ。毛並みにどことなくまずしい雰囲気があり、もし下宿先があったら安いそうめんを大量に茹でていそうなねこだ。
話題になっているドラマ『地面師たち』を見た。 このドラマの面白さは多角的に語ることができるが、ドラマとしての完成度とは別に、視聴者の関心を惹きつけ、揺さぶりをかけてくる要素がある。 それは当然、「積水ハウス地面師詐欺」という実際の事件(をもとに書かれた小説)を下敷きしている点なんだけど、単に再現ドラマ的なもので大衆の耳目を集めているというより、もっと差し迫った領域で揺さぶりをかけられているのではないか。 すなわち 「マジもんの詐欺師は一体誰なんですか?」 という問いが作
「宇宙は俺に興味がない」
最近、「ギャグ」って一体、なんなんだよってことをよく考える。 なんでかというと、日常会話が噛み合わなくて、なんだか決定的に取り返しがつかないことになっているときは大体、ギャグの対応に失敗しているからだ。「ギャグ」は、会社組織や農協など、いかにもシャカイ!という感じの場に所属して、社会の構成員としての役割を果たしている意識が強い人が言ってくることが多い傾向にあるように思う。地元に帰省すると、贈答品の箱を渡してくる年配の方が、 「ダイナマイトやで」 など、突発的にギャグを発
私は幼少期から現在に至るまでずっと「バナナ」の存在は「ドッキリ」ではないかと疑っている。疑っているというか、あえて心の底から信じないようにしている。バナナを真に受けないようにして生きている。もっと言ったら、フルーツ全般にやすやすとは信じがたいフィクション性というか、アイドルの演じる「像」を本気で受け取ったらいけないだろうといった、一線を引く気持ちを抱きつつ、生活に丸め込まれる形でなし崩し的にバナナ以外は受け入れている。バナナだけはちょっと、度を越してファンタジーがすぎるのでは
親切な人が 「ありのままでいいんだよ」 と言ってくれることがある。 久々にこれを言われて、「おお」となった。 正確にはもっとこう、日本語では表現できないニュアンスで 「oh.…」といった感じになる。迷惑ではない。し、特に不愉快でもないが、どうリアクションしたらいいのかわからない。この「おお」は初対面の人に不謹慎なギャグを言われて、どこまでウケていいのか判断がつかないので、なんとなく感心しているような雰囲気になってしまうときの「おお」と似ている。 「ありのままでいいん
どんな服でも本人が自信満々に堂々と着ているとオシャレに見える(ことがある)。美味しいとされているものを味わうときも「今自分は根拠がわからない味の暴論をがんばって信じているだけなんじゃないか」と思えることがある。 「キャビアがスーパーでひと瓶30円で売っていたら誰も食べない」 と言っている人がいた。言われてみると、なんだかそうなのかもしれない。なんでしょう。 なにがよかったんだ。キャビア。口内というステージで様々なダシというか、コンブや海老の殻から抽出されたような旨味と塩
・女の話はつまらない SNS上で「女の話はつまらない」という意見が話題になっていた。結論から言うと「人による」としか言いようがないので、こんなことを本気で言っている人物はバカである。 バカとはどういうことなのか。 人間は自分が置かれている狭い環境の中で対自した少ない経験則からなにか普遍的な法則を見出したような気分になることが多い。これをアブダクション(仮定推論)と言うらしい。 たとえばパチンコをやってビギナーズラックを引き当てた人物は「パチンコ=儲かる」という推論をし
以前、 という質問をいただいたことがあります。 ただこれだけのシンプルな問いかけがずっと心から離れませんでした。 質問の内容よりもこういった質問が生じてしまう背景にはどのような考えがあるのか気になってしまったからです。 どうして気になるのでしょうか。 質問者は相手のために何かをする気持ちがあるし、その行為によって自分もまたいい感じになりたいという(一見)前向きな動機があるにも関わらず、結果的には無駄な骨折りにしかならないことを試みているようで不可解だったからです。 ・
・【驚きの事実】愛想は多少よくしておいた方がむしろめんどう(性カチコミ)が起こらない
先日 「水野さんは結婚ってわかりますか?」 と聞かれたので、その場で真面目に考えてみたが、結論から言うと「わからない」。結婚がわからないというより、全てがわからない。なにもかもが。 人間がやることは、基本的に全てわからない。私だけがわかっていないのか、他の人もわかっていないのか、それすらもわからないが、おそらくほんとうのところは誰もわかっていないんじゃないか。 なぜなら、大体のことはわかっていたらやらなくて済むから。 世の中には「本当はまったくわかっていないことをわ
宝石業界にはビーフブラッドよりもピジョンブラッドのほうが上という価値観がある。らしい。牛血と鳩血。どちらもルビーの色彩を表すための語彙である。 これに私は「意義あり」と思う。 この場合のビーフブラッドとは、食肉用に生物にとって優れているとは言えない環境で成長ホルモンを投与され大量生産され機械的に処理(殺害)された牛肉が、冷凍処理をされて流通を経たのちに、慌しく人が往来するキッチンに常温放置されて流れ出したドリップの、赤黒く濁った人類の業を表す地獄の贄色のことを言っているのだ
とうとうクレアおばさんが煮込み終わったのか、といった方面の感慨があった。 『perfect days』を劇場で観たら、役所広司が普段以上に向こう側に行っているように感じた。向こう側とは、人々がうっすら信じてはいるが、特に信用はしていないまま運用されている「善意・善人」の向こう側のことだ。ベルマークを集めているときの漠然とした失望、お台場で開催されているイベントにあらかじめ漂っている「素直に騙されておいた方が楽ですよ」といったムード、朝のニュース番組で放送されているエンタメコー
・他人事パワースポット