【要約】〈叱る依存〉がとまらない
✅はじめに
今回ご紹介するのは、臨床心理士の村中直人さんによる『〈叱る依存〉がとまらない 』という一冊です。
この本では、日常的に行われている「叱る」という行為が本当に効果的で正しいのか、私たちに問いかけてきます。
誰もが「叱る」「叱られる」経験を持っているでしょう。
しかし、その行為が相手の成長や学びに繋がっているのか、または単なるストレスや摩擦を生んでいるのか、考えたことはあるでしょうか?
本書では、叱る行為の裏にある心理や、その行為が抱える問題点に迫り、より良いコミュニケーションのあり方を探ります。
ぜひ、村中直人さんの『〈叱る依存〉がとまらない』を手に取って、叱ることについて深く見直してみてください。
きっと、あなた自身のコミュニケーションの質を向上させ、より健全な人間関係を築くための貴重な気づきを得られるはずです。
こんな人におすすめ!
つい人を叱ってしまう癖があると感じている方
職場や家庭でのコミュニケーションに悩んでいる方
相手に対してもっと効果的で優しい指導方法を学びたい方
人間関係の摩擦を減らし、信頼を築きたいと考えている方
本書の魅力
『〈叱る依存〉がとまらない』の魅力は、単なる「叱ることは悪い」と批判するだけでなく、叱る行為がなぜ行われ、どういう心理的効果があるのかを科学的な視点からも解説している点にあります。
また、著者である村中直人さんが臨床心理士としての豊富な経験を活かし、具体的な事例を通じて分かりやすく教えてくれるため、誰でも理解しやすい内容となっています。
本書を読むことで、叱ることがもたらす負の側面に気づくだけでなく、どのようにすれば相手を尊重しながらコミュニケーションを図れるのか、そのヒントを得られることでしょう。
本書の要約
以降は、『〈叱る依存〉がとまらない』の内容を要約し、具体的なポイントをお伝えしていきます。
ぜひ、読んでいただき、この本が伝えようとしているメッセージをしっかり受け取ってください。
あなたの「叱る」という行為に対する見方が変わり、より良い人間関係を築くための一助となるはずです。
✅叱るとは何か?
まず、「叱る」とは、相手を正しい方向に導くために、ネガティブな気持ちを引き起こす行為です。
多くの人が「叱ることは相手のためになる」と考えがちですが、実際には叱ることで相手を不快にさせたり、傷つけたりすることがあります。
叱ることで相手を動かそうとする場合、基本的には相手をネガティブな感情にさせる必要があるのです。
例えば、子どもが図書館や電車内で騒いでいる時、「静かにしなさい」と叱ることで、子どもはその場で大人しくなるかもしれません。しかし、それは叱られたことによって感じた恐怖や不安のためです。
叱る側と叱られる側の関係性
叱る場面では、必ず叱る側が上の立場で、叱られる側が下の立場にあります。
これは、親子関係や学校、職場など、さまざまな状況で見られます。例えば、親が子どもを叱る、先生が生徒を叱る、上司が部下を叱るといった状況では、常に叱る側が権力や立場が上にあることが特徴です。
反対に、子どもが親を叱る、生徒が先生を叱るといった逆の状況はほとんど存在しません。これは、叱るという行為が通常、上下関係の中で成り立っているためです。
叱る理由は「常識」や「普通」からのズレ
多くの場合、叱る理由は「常識」や「普通」に外れた行動がきっかけになります。
しかし、この「常識」や「普通」は、叱る側の基準に基づいていることが多いです。つまり、上の立場にいる人の考え方が「正しい」とされ、その基準に沿わない行動を取った時に、叱る行為が発生します。
例えば、ある先生が「給食を残さず食べるのが常識」だと考えている場合、その常識に従わない生徒は叱られます。しかし、別の先生では「食べ物を残すことは当たり前ではない」という考えを持っているかもしれません。
このように、何が「正しい」かは叱る側の価値観に依存しています。ですから、叱られる理由が普遍的に正しいとは限らず、状況や人によって異なるということを理解することが重要です。
このように、叱るという行為は一見「相手のため」に行われるように思われますが、実際には叱る側の価値観や基準に基づいていることが多く、そのためにはまず、自分の「常識」が本当に他者にも当てはまるのか、冷静に考える必要があるのです。
✅叱ることは成長や学びに繋がらない
村中さんは、「叱ることが成長や学びに繋がらない」と指摘しています。
これは一見意外に感じるかもしれませんが、叱られると人は強いストレスや恐怖を感じ、その結果として冷静な思考ができなくなってしまうためです。
例えば、職場で上司から大声で怒鳴られた時、あなたはその理由や原因を考えるよりも、まず恐怖や不安を感じて「どうやってその場を切り抜けるか」ということばかりに意識が向くかもしれません。
これは、動物が危険を感じた時に戦うか逃げるかの選択を迫られるのと同じ反応です。
この「戦うか逃げるか」の状態になると、脳は理性的な判断をすることが難しくなり、目の前の危機から逃れることが最優先になります。
結果的に、叱られることで一時的に行動を修正することはできても、その行動がなぜ問題だったのかを深く理解し、本質的に学び成長することが難しくなってしまいます。
さらに、叱られた恐怖から、同じミスを繰り返さないために隠れて行動したり、表面上だけ謝って実際には何も変わらないといった行動が増える傾向も見られます。
例えば、部下が「すいません、もう二度としません」と謝っても、心の中では「早くこの場を切り抜けたい」「どうにかして叱られるのを避けたい」と感じているかもしれません。
その結果、問題の根本に向き合うことなく、再び同じミスを犯してしまう可能性が高くなります。
村中さんは、叱ることが相手の行動を一時的に変える効果はあっても、根本的な成長や学びには繋がりにくいと指摘しています。そのため、叱る行為の本当の効果について改めて考える必要があるでしょう。
✅なぜ叱ることをやめられないのか
では、なぜ私たちは非効率だと分かっていても叱る行為をやめられないのでしょうか。
村中さんはその理由を二つ挙げています。
1. 「苦しまないと変わらない」という思い込み
私たちは、誰かが苦しんだり、叱られたりしないと本当に変わることができないという思い込みを持っていることが多いです。
これは、「厳しくされることで、人は反省し、改善できる」という考え方です。例えば、学校や職場でミスをした際に、強く叱られることで「次は同じ間違いを繰り返さないようにしよう」と思う場面を想像しがちです。
しかし、実際には、叱られることで一時的に行動を変えることができても、その場限りの変化で終わってしまうことが多いのです。
一時的な行動の修正にとどまる
人は叱られた直後、確かに一時的に行動を変えることがあります。例えば、上司に怒られた社員が、その場では反省して次の行動を改善しようとします。しかし、これはその場のプレッシャーに応じた反応にすぎません。
行動を変えたとしても、その変化が持続するかどうかは別問題です。
強いストレスや恐怖がきっかけで行動を変えた場合、その行動が続くのは「叱られることを避けたい」という恐れからであり、根本的に考え方や意識が変わったわけではありません。
本質的な変化が難しい理由
叱られることによって表面的には行動が変わることはありますが、その行動が本質的な変化には繋がりにくい理由は、叱られることで脳が受ける影響にあります。
叱られた時、人は強いストレスを感じ、恐怖や不安からくる感情が優先されます。この状態では、冷静に物事を考える余裕がなくなり、本当の意味で「なぜその行動が悪かったのか」「どのように改善すればいいのか」を深く考えることが難しくなります。
これにより、表面的な反省はしても、根本的な行動や意識の改善が行われないままになるのです。
思い込みの根強さ
「苦しんだり叱られたりしないと変われない」という考え方は、多くの文化や教育現場に深く根付いています。
親が子どもを厳しく叱ったり、教師や上司がミスに対して厳しい対応をするのも、相手に強いプレッシャーを与えることで成長を促そうという意図があるからです。しかし、村中さんが指摘しているように、この方法は効果的ではありません。
むしろ、相手のストレスや恐怖を高めるだけで、学びや成長には繋がらないことが多いのです。
このように、「苦しまないと変わらない」という思い込みは、私たちが抱きがちな誤解の一つであり、その効果には限界があります。叱ることに頼らず、もっと建設的でポジティブな方法で人を成長させるアプローチが必要です。
2. 叱ることで快感を感じる
驚くかもしれませんが、私たちは他人を叱ることで脳が快感を感じることがあります。
これは、サイエンス誌に掲載された研究によって明らかになっており、ルール違反者に罰を与えた時、脳が「気持ちいい」と感じる部分が活性化することがわかっています。
これにより、叱る行為自体が快感に繋がり、その感覚に依存してしまうことがあります。
叱ることがストレス解消になる?
叱る行為は、特に権力や立場が上の人にとっては、一種のストレス解消になることがあります。
例えば、上司が部下を叱る時、自分が優位な立場であることを確認し、相手を思い通りに動かせる感覚を得ることができます。この瞬間、脳は快感を覚えるため、叱ることを繰り返すうちに、その行為に依存してしまうことがあるのです。
これを考えると、親が子どもを叱ったり、教師が生徒を叱る場面で、単に「相手を正そうとしている」という意識だけでなく、「叱ることで自分が気持ちよくなっている」という無意識の感情も関わっている可能性があります。
気づかないうちに、叱ることが自己満足やストレス発散の手段になっているケースもあるのです。
依存の危険性
叱ることが気持ち良いと感じると、次第にその行動を繰り返すようになります。
これは、叱る側が「相手のため」という建前を使いながらも、実際には自分の感情を満たすために叱っていることが多いからです。
例えば、上司が部下に対して厳しく叱り続ける状況を想像してみてください。この上司は、部下を指導しているつもりかもしれませんが、実際には叱ることで自分のストレスを発散し、快感を得ている可能性があります。
このような状況が続くと、叱られた側はますます萎縮し、ミスを隠すようになったり、上司に対する信頼を失ったりします。
一方、叱る側はその快感を追い求め、次第に感情的な叱責や攻撃的な態度にエスカレートすることがあり、最悪の場合、人格攻撃にまで発展してしまうこともあります。これは、上司が「バカ」「役立たず」といった言葉で部下を傷つける行為に繋がりやすくなります。
叱ることの自己認識
私たちが日常的に誰かを叱る時、その行為が本当に相手のためになっているのか、自分自身の快感を満たすためのものではないかを冷静に考える必要があります。
叱ることが必要な場面は確かにありますが、その行為がエスカレートし、相手をコントロールする手段やストレス発散の手段になっていないか、自己認識を持つことが大切です。
村中さんは、このような叱ることへの依存が、最終的に関係性に悪影響を及ぼす危険性を指摘しています。
叱ることで自分が気持ちよくなりすぎると、その快感が目的になり、相手を傷つけるだけでなく、信頼関係を壊してしまう可能性があるということです。
✅叱る行為とうまく付き合う方法
では、叱るという行為とどうやって付き合っていけばいいのでしょうか。村中さんは以下の3つの方法を提案しています。
1. 自分の「普通」を見直す
叱る前にまず大切なのは、自分が「普通」だと思っていることが、本当に他の人にも通用する妥当な考えなのかを冷静に見直すことです。
私たちは日常の中で、無意識に自分の価値観や常識を基準にして他人を判断しがちです。しかし、時代や環境、立場によって「普通」や「当たり前」とされることは大きく変わるものです。
例えば、「メールの返信はすぐにするべきだ」と感じている人がいます。この考え方自体は、その人にとっての「普通」かもしれません。しかし、他の人にとっては違うかもしれません。
相手が「すぐに返信するのが当たり前」と思っていない環境で育っていたり、忙しさや仕事の進め方が違ったりすることも考えられます。つまり、自分の「普通」が他の人にとっても常識かどうかは必ずしも一致しないのです。
時代や環境によって変わる「普通」
私たちの「普通」や「当たり前」という概念は、実は時代や環境に大きく左右されています。
例えば、昔は「男性が働き、女性が家庭を守る」という考え方が広く一般的でしたが、現代ではその常識は大きく変わりつつあります。
職場でも、かつては定時よりも早く出社し、長時間働くことが「当たり前」とされていましたが、今では効率を重視し、仕事の質を優先する考え方が一般的になってきています。
このように、私たちが持っている「普通」や「常識」は、固定されたものではなく、時代の変化や他人の価値観によって異なります。したがって、他人を叱る前に自分の考えがその場に適しているのか、また他人に押し付けるべきものなのかを振り返ることが必要です。
自分の「普通」を他人に押し付けない
自分が当たり前だと思っていることを、そのまま他人にも適用しようとすると、誤解や対立を生むことがあります。
例えば、「先輩よりも後輩が先に帰るのはマナー違反」と考えている人がいますが、現代ではこの価値観を共有していない人も増えてきています。もしこの「マナー違反だ」という考えを押し付けて叱ると、相手にとっては理解できないか、理不尽に感じるかもしれません。
また、親が子どもに対して「ゲームは1日1時間まで」というルールを課すことがありますが、時代が進むにつれて、ゲームの使い方やその役割も変わっています。昔の常識をそのまま今の子どもに当てはめて叱るのではなく、そのルールが本当に現代の環境に合ったものかを再評価する必要があります。
「普通」を見直すプロセス
自分の「普通」を見直すためには、まずその考えがどこから来ているのか、どうしてそう考えるようになったのかを振り返ることが重要です。
それが自分の経験や育った環境から形成されたものであれば、他人には必ずしも通用しない可能性があります。そのため、他の人の価値観や背景を理解し、共感することで、無理に自分の「普通」を押し付けることなく、より柔軟な対応ができるようになります。
村中さんが強調しているのは、叱る前に自分の考えが他人にとっても合理的で妥当なものかどうかを冷静に見直すことの大切さです。
自分の「普通」が他人にも当てはまるとは限らないという視点を持つことで、無用な衝突や摩擦を避け、より良いコミュニケーションができるようになるでしょう。
2. あらかじめ相手に求めることを伝える
叱る前に、相手に何を期待しているのか、どのような行動をとってほしいのかを事前に伝えておくことが非常に重要です。
これは、相手がその状況に対して準備できるようにするためであり、特に相手が冷静でリラックスした状態の時に伝えるのが効果的です。
叱られてしまうと相手の思考力が大幅に低下し、建設的な学びや成長が難しくなるため、事前にしっかりと行動の指針を示しておくことが、後の問題を未然に防ぐカギとなります。
叱ることで思考力が低下する理由
叱るという行為は、相手にとって強いストレスを与えます。
ストレスを受けると、脳はその場から逃れることや身を守ることに集中し、冷静に物事を考える余裕がなくなってしまいます。これは「戦うか逃げるか」という本能的な反応であり、問題の本質に向き合うどころか、相手は自分を守ることに必死になります。
結果として、叱られることで行動が一時的に改善されても、根本的な理解や学びには繋がりにくいのです。
あらかじめ期待を伝えることの効果
では、どうすれば叱ることを避けつつ、相手の成長を促すことができるのでしょうか?
その答えの一つが、あらかじめ相手に求めることを伝えることです。
具体的には、何が期待されているのか、どのような行動が適切なのかを明確に伝えておくことで、相手は自分の行動を事前に調整することができ、誤った行動を取る可能性を大幅に減らせます。
例えば、子どもと一緒に図書館に行く前に、「図書館では静かにしようね。静かにしているとみんなが本を集中して読めるから」というように説明しておくと、子どもは図書館でどう振る舞うべきかを理解しやすくなります。
大人にとっては当たり前のルールでも、子どもや経験が浅い人にとっては、それが初めての経験であることも多いため、事前にしっかりとルールを説明してあげることが大切です。
事前の説明が効果的な理由
事前に説明することで相手に余裕が生まれます。
相手が冷静な状態であれば、こちらの指示を理解しやすく、考える余裕を持って行動に移すことができるため、結果として問題が発生するリスクが低くなります。
これにより、叱る必要自体が少なくなり、より良い人間関係を築くことにも繋がります。
また、あらかじめ期待を伝えることで、相手は自分が何をすれば良いのかが明確になります。これは、相手に自信を与えることにも繋がり、適切な行動を取るための動機づけとなります。
一方で、叱られることを恐れていると、相手は行動を起こすこと自体に躊躇してしまい、結果的に成長のチャンスを逃してしまうこともあります。
事前に説明するための工夫
事前に求めることを伝える際には、相手の立場や状況を考慮して、できるだけわかりやすく具体的に説明することが大切です。
例えば、職場の新入社員に対して、「報告はいつも早めにしてね」という曖昧な指示ではなく、「報告は問題が発生したらすぐに上司に伝えるようにしよう」と具体的に伝えることで、相手が混乱せずに行動できるようになります。
また、伝える際には感情的にならず、できるだけフラットなトーンで説明することが重要です。感情が強くなると、相手は指示の内容よりもこちらの感情に反応してしまい、効果が薄れてしまう可能性があります。
まとめ
叱ることを避けるためには、あらかじめ相手に求めることや期待される行動をしっかりと伝えることが必要です。
冷静な状況で明確な指示を伝えることで、相手の思考力を維持したまま正しい行動を促すことができ、無用な衝突や誤解を防ぐことができます。
これにより、叱る必要が減り、健全なコミュニケーションを保ちながら成長を促すことができるのです。
3. 叱る時は短く終わらせる
叱ることには、一時的に相手の行動を止める効果があります。
しかし、叱る行為が長引くと、相手にとってはただのストレス源となり、問題を解決するどころか、逆に関係性を悪化させる原因になりかねません。
そのため、叱る必要がある場合はできるだけ短く終わらせ、必要以上に長く続けないことが大切です。
叱る行為の目的を明確にする
叱る目的は、相手の間違った行動をただ罰することではなく、その行動を即座に止めさせることにあります。特に危険な状況においては、叱ることが迅速な行動修正を促すための手段として有効です。
例えば、子どもが道路に飛び出そうとした時や、職場で重大なミスが発生しそうな時など、すぐに行動を止める必要がある場面では、短く鋭い叱責が必要です。
しかし、それ以上に長く叱り続けると、相手はその場のストレスを感じるばかりで、何を改善すべきかの本質が見えなくなってしまいます。
叱ることで生まれるストレスのリスク
長時間叱られると、相手の心の中にストレスが蓄積されます。
叱られている最中、相手は自己防衛のために「早くこの状況から逃れたい」「この人の言葉を聞きたくない」と感じるようになり、その結果、叱られたことに対する本質的な理解は置き去りにされがちです。
相手は叱られている間、行動を改善するよりも、むしろ「この場から早く逃れたい」と考えてしまうため、問題の根本に気づかず、同じ行動を繰り返すことも多いです。
また、長時間の叱責が続くと、相手との信頼関係が崩れることもあります。相手にとっては、叱られる行為そのものが苦痛であり、叱る側への不信感や反感が生まれることがあります。
これは、特に親子や上司と部下といった長期的な関係性において、非常に悪影響を及ぼします。
短く終わらせ、冷静に説明する
叱る時に大切なのは、短く的確に相手の行動を止めた後、その状況が落ち着いたら、冷静に優しく説明することです。
例えば、子どもが危険な行動をした時に「ダメ!」と短く叱るのは必要ですが、その後は感情的にならずに、「なぜそれが危険なのか」「どうすれば良かったのか」を説明することで、子どもは自分の行動を見直すことができます。
大人に対しても同様で、危険な行動や大きなミスが発生した時に、短く叱って状況を収めた後で、「次からはこうした方がいい」と建設的にアドバイスを与える方が、相手は冷静に受け入れることができ、次回の行動に活かすことができます。
長く叱り続けることの弊害
叱る行為が長引くと、叱る側の感情がエスカレートしてしまうことがよくあります。
最初は冷静に注意していたつもりでも、長時間叱り続けると次第に感情的になり、時には人格攻撃に近い言葉を使ってしまうこともあります。これが続くと、相手はますます委縮し、叱られることそのものに恐怖を感じるようになり、成長や学びに繋がらないばかりか、行動自体も改善されません。
例えば、「何度言っても分からない」「バカにしているのか」といった言葉を使い始めると、相手は心を閉ざし、叱られている内容が頭に入らなくなります。
このような状態では、叱る側が意図した通りの改善は望めず、むしろ叱られた側はその場から逃げ出すか、何も感じなくなる可能性が高くなります。
まとめ
叱る行為は、必要な場合に短く終わらせることが最も効果的です。長時間叱り続けると、相手にとってはストレスとなり、叱る目的が失われてしまいます。
危険な行動を止めるために叱ることは有効ですが、その後は冷静に、優しくフォローアップを行い、問題の本質を説明することが大切です。
✅人は自分で決める時に成長する
人が大きく成長するために最も重要な要素の一つが「自己決定」です。
自己決定とは、自分自身で考え、選び、決断することを指します。
自分で決めたという感覚を持つことで、自然とやる気が引き出され、学ぶ意欲も高まります。この感覚があるかどうかが、個人の成長に大きく影響を与えます。
自己決定の力とその効果
自己決定がもたらす成長は、私たちの行動や思考に直接的な影響を与えます。
例えば、自分が学びたいと思って選んだ勉強や仕事は、自ら積極的に取り組む意欲を高め、結果として成長のスピードが速くなります。逆に、他人に指示されてやらなければならないと感じると、その活動に対する興味やモチベーションが低下し、成長が限られることが多いです。
これは、子どもの教育でも同じことが言えます。親や教師が一方的に子どもにルールを押し付け、指示通りに行動させても、子どもは自分の意思で行動しているという感覚が得られません。
その結果、成長が鈍化したり、学びが深まらないことがあります。
一方で、子ども自身にある程度の選択肢や決定権を与えることで、自分で考える力が養われ、積極的に行動できるようになります。
自己決定の重要性を示す研究
興味深いことに、自己決定の重要性は多くの研究で示されています。
例えば、神戸大学の西村和夫教授の調査によれば、自己決定は学歴や所得よりもその人の幸福度に大きな影響を与えることがわかっています。
つまり、どの大学に進学したか、どれだけ高い収入を得ているかよりも、その人が自分で決めた道を歩んでいるかどうかの方が、人生の満足度に強く関わっているのです。
これは、幸福感や自己満足感が、他人の指示に従うだけでは得られにくく、自分で選んだ道を進んでいるという実感があることで高まるということを示しています。したがって、人が成長するためには、自己決定の機会を増やし、自分で選び取る経験を積むことが重要です。
自己決定が成長に与える具体的な影響
自己決定によって成長する理由の一つは、失敗や成功の責任を自分で引き受けるからです。
自分で決めたことだからこそ、その結果に対して深く考え、次にどうすればもっと良くできるかを真剣に考えます。
失敗したとしても、自分が選んだ道だからこそ反省し、改善しようという気持ちが強くなります。
一方で、他人に指示されて行った行動で失敗した場合、その責任を自分自身で感じにくくなります。「指示通りにやったのに失敗した」と感じてしまい、その結果に対する学びが浅くなってしまうことが多いのです。
また、自己決定は人間の自己肯定感や自信にも大きな影響を与えます。自分で選び、決断し、結果を出すことで、次第に「自分にはできる」という感覚が身につきます。
この感覚が強くなると、さらに挑戦する意欲が湧き、成長のサイクルが加速していきます。
自己決定の促進が必要な場面
家庭や学校、職場など、さまざまな環境で、自己決定を促す場面は多く存在します。
例えば、職場では部下に対して細かい指示を出すのではなく、ある程度の自由度を持たせて、自分で考えて行動させることで、その人の成長を促すことができます。
これにより、自分の役割や責任を意識し、より主体的に仕事に取り組むようになります。
教育現場でも、子どもに「何を学びたいのか」「どうやって学ぶのか」を自分で考えさせる機会を増やすことが、将来的な自立心や成長につながります。また、家庭では親が子どもに決定権を与え、自己決定の感覚を養うことで、子どもは自分で考え行動する力を身につけることができます。
まとめ
自己決定は、人が成長するための最も重要な要素の一つです。自分で決めたという感覚があることで、やる気や学びに対する意欲が自然と高まり、失敗してもそれを糧に次の行動に繋げることができます。
成長や学びを促進するためには、自己決定の機会を増やし、自ら選び行動できる環境を整えることが大切です。
最後に
村中直人著の『〈叱る依存〉がとまらない』では、私たちが当たり前のように行っている「叱る」という行為について、深く考え直すことを提案しています。
叱ることは、短期的に相手の行動を修正することがあっても、成長や学びに繋がりにくいことが本書を通じて明らかにされています。
それどころか、時には叱る側の快感や自己満足が優先され、相手に害を及ぼすことさえあります。
長期的に見れば、叱ることがコミュニケーションや人間関係に悪影響を与える可能性も高いのです。
本書は、私たちに相手に対する敬意や尊重を忘れず、冷静で建設的なコミュニケーションを心がけることの大切さを教えてくれます。
叱ることに依存するのではなく、相手を信じて、自己決定の機会を与え、任せることで、より健全で信頼に満ちた人間関係を築くことができるでしょう。
もし、叱ることの意味や効果に疑問を感じている方、または人間関係をより良くしたいと考えている方には、村中直人さんの『〈叱る依存〉がとまらない』をぜひ読んでみることをお勧めします。
この本は、叱る行為に対する新たな視点を提供し、より良いコミュニケーションを目指すためのヒントを与えてくれるでしょう。
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