彼の家に向かう時、この駅で乗換える。 何週間も間を空けて、それでも尚待っていてくれる彼の手を握るまでの道のり。 新宿という街は、私にとってあと少しの、乗り換え場。 ・・・・・・ 新宿にまつわる小説を書きました。もし宜しかったら以下のリンクから読んでください。Miricah&さんとのコラボ作品です。
音楽を聴く時、まず読むことから始める。 詩から情景を想像して、詞の意図を感じることが私にとってのmusicだ。 ものを書くようになってからは、なおのこと、歌詞を物語として読むことが好きだ。 人生観が変わってしまいそうなほどに忙しい日々。 こんなにも仕事に明け暮れ、仕事に打ちのめされ、仕事に支配されている私の日常は、傍から見ると恐らく異常で、それでも仕事だけの日々なんて嫌だった。 疲れた頭で言葉を紡ぐ。 そこには、例えば電車でたまたま隣の席に座った20代の女の子が、一生
次は鷺沼、鷺沼に止まります 聞き慣れた車内のアナウンス。 このアナウンスが流れるタイミングがちょうどその駅を通過する時だ。 あなたとの思い出があり過ぎて、もう二度と降りることはできないんじゃないかと、思っているくせに、その先の急行が止まる駅に引越してきてから2年が経った。 同じ沿線の駅は、どことなく雰囲気が似ていて、あなたと歩いた道を想起させる帰り道を歩く。 少し足を伸ばせば、2人でよく行ったコンビニがある。 あそこの店員はまだ私を覚えているだろうか? 想いが強すぎて
忙しすぎて、何もする気になれなかった。 ふた月以上も過ぎ去って、その時私が思っていたこと。 書き残せなかった記念すべき16回目のお別れ記念日をやり直す。 過ぎてしまってから、今日が5月2日だと気がついた。 そんな日が来るとは思ってなかった。毎年、貴方の墓石の前で過ごしていたはずの日が、今年はいつの間にか過ぎ去っていた。 忙しいことは嫌いじゃない。 本当にこれで良かったのだろうか。 感染病が流行してしまったことは、単なる偶然ではあるけれど、今日で16回目だった。 私と貴方
祈子さんが泣いていたあの夜から一夜明け、今日もいつもと変わらない日を始めた僕は、祈子さんの言葉の意味を考えていた。 ずるいと、言った。 そんな所まで似ているとも、言った。 僕は、誰かに似ているんだろう… そう思うようになったのはもう随分前だったけれど、祈子さんが紹介してくれる知人に会う度に、皆が一様に驚きの表情を見せることを考えると、僕が似ている誰か、、、はきっともうこの世にはいない。 そして恐らくその人はたくさんの人に愛されていたはずだ。その人を知っていたであろう人達
変わらない。変われない。変えられない──。 その言葉で締めくくられたお芝居のヒロインは、私だった。初めて私を主役にしてくれた演出家。 それが、貴方だった。 器用に脇役を演じるバイプレイヤーでいるのは、それはそれで楽しかった。 色んな役が回ってきたし、ダメ出しされることも少なかったし、アドリブで遊べるところも醍醐味だった。 でも、せっかく役者をやっているなら、1度くらいスポットライトの真ん中に立ってみたい。そういう思いは常にあった。不器用だけど、人一倍のオーラがあった同期の
一番を決めるというのは、とても難しい。 今、私のそばで私を温めてくれる腕を、一番愛おしく思うことに偽りはない。 だけど。 サラリとあなたが一番よと、伝えればいいのかもしれないけれど、嘘が付けない領域というのがあって。 どうしても、言い淀んでしまう。 あの世にいる人と比べていても、今は何も報われないことなど、とっくの昔から分かっていて、この気持ちさえ、上手く消化出来れば。 結局。 私はいつもこう伝えることになる。 一番になって。 私の、歴代一位に、あなたがなって
寒空に 急く足止める 彼方の香 面影さがす 漆黒のかほり [さむぞらに せくあしとめる かなたのこう おもかげさがす しっこくのかおり] 冬の寒い空の下で足早に歩いていたのに、遠くで貴方のよくつけていた香水の気配を感じて、つい足を止め、いるはずのない貴方の姿を探してしまう。 私の最愛の人が愛用していたブルガリブラックの香りを嗅ぐと、今でも胸が締め付けられる。 思い出は年月と共に曖昧になっていくのに、この香りだけは鮮烈に記憶していて、街中で同じ香水をつける人とすれ
貴方とプラトニックなデートがしたい。お互いに触れ合うこともできないような、中学生みたいなデートがしたい。と、言った私の願いを貴方は叶えてくれた。八景島シーパラダイスで、水族館を回り、海の公園の浜辺で暮れていく海を眺めた。 私の地元は、その日のデートコースがど真ん中に位置していて、中高生の時、友達はみんな彼氏とそんなデートをしてた。 10代の頃はホントに奥手で、むしろ少しだけ男の子が怖くて、ボーイフレンドなんて夢のまた夢だった私は、制服で楽しそうにデートをするカップルが羨まし
ごめんね。 叶わない、夢をみてしまって。 叶わないことに、打ちのめされてしまって。 あなたの理想の女になりたかった。 それなのに、小さな諦めの積み重ねに、 耐えられなくなってしまった。 大好きだったのに。 とても、とても、愛おしかったのに。 自分で決めて、 あなたと離れることを選んだ。 私が、泣いてたら、意味ないじゃない。 バカね。 こんなに、痛いなんて。 また、ひとり、なのね。
解っているんだ。 会えない時間があるからこそ、 私は君の虜になる。 君の夢を見ることも、 君との夢を見ることも、 隙間の時間にしか出来ないってこと。 幸せが何かを探していた時、 今の自分を想像できなかった。 直ぐにまた会いたくなって、 君からの言葉を待っている。 気がつくといつもの何倍も笑顔な私に驚いて。 バイバイの時間を後回しにしたくなって。 もっと一緒に居たい、 なんて、 欲張りな言葉を飲み込むの。 そうして隙間の時間に恋をして、 また、君
人の心は、一度離れると二度と戻ってこない。 男女の関係に限らず、あらゆる人間関係において、一度失望を受けると信頼回復は非常に難しい。 みんな、自分を必死で守ってるんだなぁと感じる。 何故だろう。 傷つくのが怖いから。 それに尽きるのだろうか? 私はと言うと、、、 あまり他人に期待をしない。 だから失望もしない。 特定の誰かに負の感情を抱き続けるのは、相当なエネルギーを必要とするわけで、負のエネルギーに支配されるくらいなら、誰のことも憎まなければいいのに。 だけど、人が
最近始めたお料理フォト。 毎週のように大きなカメラバッグを持ってやってくるのが私のパートナー。 元々、私がカメラに興味を持ったのが彼の影響で彼が撮る写真が私は大好きだ。 人物を捉えるのがとても上手な彼が私の料理に目を付けてくれたのは、誕生日をお祝いしてもらった時。 せっかく買った可愛いケーキを、写真に撮っておこうと、始まったテーブルコーディネート。 四角い画面の中でいかに食べ物を美味しそうに見せるか!という行為に私達は魅せられた。 料理を作るのは私の役目で、料理が出来上
伝わってる? 「愛してる」という言葉は私には現実味がなくて、誰に向かう感情なのか、ハッキリと自覚したことは無いかもしれない。 けれどもし、目の前の人にこの想い、この愛情を語るとしたら… 分かる?伝わる?名前のつけられないこの感情はちゃんとあなたに届いてる? そんなふうに確認しないわけにはいられないものなのかも知れません。 感情は溢れてくるのに、それを表す言葉は足りなくて、もっとたくさんの言葉を知っていたらいいのにと、もどかしくなります。 i love youを自由に訳
こんなに好きになれる人、もう二度と出会えない。 そう、思っていた私の考えを君はあっさり覆した。 あの人よりも好きにさせてくれたのではなく、 あの人よりも私を愛してくれた。 こんなに好きになってくれる人、もう二度と出会えない。 それは、とても心地よい感覚だった。 それまでの私は、ただ、愛しい人を探し続けて、 でもどうやって人を愛せば良いか分からずに、 疲れていた。 だけど君は疲れ果てた私をめいっぱいの好きで 包んでくれたんだ。 君との時間はとても楽しくて、君が見せてく
バーテンダーに転職をしてから5年が経った。 僕をこの道に連れてきてくれた祈子さんは出会った頃と何も変わらない美しさだ。 僕はと言うと、少し大人に近づけただろうか。 客との会話も、祈子さんとの距離感も、マスターからの信頼も、それなりに上手くやれるようになっている。 若さと引き換えに、経験を手に入れている実感はあったが、やはり若者を見ると少しだけその無邪気さが羨ましいと思える時がある。 まだ20代前半と見受けられる若いカップルが来店した。女の子はこういうBARに来るのは初めて