⑰痛み
変わらない。変われない。変えられない──。
その言葉で締めくくられたお芝居のヒロインは、私だった。初めて私を主役にしてくれた演出家。
それが、貴方だった。
器用に脇役を演じるバイプレイヤーでいるのは、それはそれで楽しかった。
色んな役が回ってきたし、ダメ出しされることも少なかったし、アドリブで遊べるところも醍醐味だった。
でも、せっかく役者をやっているなら、1度くらいスポットライトの真ん中に立ってみたい。そういう思いは常にあった。不器用だけど、人一倍のオーラがあった同期のあの子がいつも立っている、舞台の真ん中に。
ナナさんを魅せたいから、この本を書いたんだ。
貴方がかけたその魔法は、今ではもう薄れる記憶の彼方にあって、それでも貴方が1番であることから抜け出せなくて、苦しかったこの15年。
そこから抜け出し始めた、この数ヶ月。
それでもまた、このセリフに帰って来てしまった。
そろそろ40になるというのに、私は何も変えられない。相手が望まないと分かっているのに、自分の気持ちを飲み込みきれない。
ほんの1日、我慢すればそれでよかったのに。
余計な一言を口に出してしまう。
直後に後悔して、自己嫌悪して、、、
そのときには、もう遅い。
どんなに大人になったつもりでも、
何も変わらない。
変えようとしてみるのに、変われない。
子どもみたいな、嫉妬心と不安。
わがままな、自己満足。
自分で遠ざけて、寂しくなって、苦しくなって、
身動きのとれない息苦しい夜を過ごす。
あと少しだけ、笑顔でやり過ごせればそれで良かったのに。
結局、
変えられない。
変えられない、私。
あの時の後悔を繰り返す。
あの時貴方が教えてくれたことを守れずに。
あの時とは違うのに、あの時と同じことを繰り返す。
読んでくださるだけで嬉しいので何も求めておりません( ˘ᵕ˘ )