文体練習1-あるバーでの一幕-
ぼくは適当なバーに入ると、シーバスリーガルのオンザロックとナッツを注文した。それから眼を閉じて、昨日のことを考えてみた。それはいなくなった猫のことであり、差出人のない手紙のことでもあった。
ぼくは目の前に置かれたグラスをすぐに飲み干し、二杯目を注文した。
頭に浮かぶ情景のひとつひとつが、自分が間違った方向に向かっていることを暗示しているようだった。ぼくは感覚と無感覚の狭間にいて、実体のない痛みに貫かれていた。そこには絶望もない代わりに答えもなかった。ふと隣から視線を感じ、体を