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「本歌取り」
人力舎所属のお笑い芸人、ゆってぃのネタに「ワカチコ、ワカチコ!」というフレーズがある。
はじめは、全く意味が分からなかった。何か意味のない、語感が面白いワードをただ叫んでいるだけなのだろう、と思っていた。
謎のフレーズ「ワカチコ」には、元ネタがあった。
少年隊の『デカメロン伝説』という曲だ。
イントロで、「ワカチコン!」という音声が挟み込まれている。
その音声を真似しているのが、ゆってぃの「ワカチコ」である。ゆってぃのキャラクター設定も、「少年隊のようなアイドルを目指す中年男性」となっているのだ。
その『デカメロン伝説』は、14世紀イタリア・フィレンツェの詩人、ボッカチオの物語集『デカメロン』に由来する。ペストで閉鎖された10日の間に、10人の男女が各々の身の上について語り合う。
☆ ☆ ☆
数年前に、宇野常寛の『リトルピープルの時代』という新書を読んだ。
表紙の「仮面ライダー」に惹かれて買ったのだが、さることながら内容も面白かった。
「仮面ライダー」や村上春樹の作品群など、サブカルチャーを日本の戦後史に結びつけて論じた社会学の一冊である。
表題の「リトルピープル」とは、村上春樹の『1Q84』に登場する、不思議な存在である。物語の重要なファクターを担う。詳しくは、是非『1Q84』を読んで欲しい。というか、説明できない。
「リトルピープル」は、「ビッグブラザー」をもじって作られている。
「ビッグブラザー」とは、20世紀のイギリスの作家 ジョージ・オーウェルの『1984』に登場する、全体主義国家の独裁者のアイロニカルなアイコンだ。旧ソ連のヨシフ・スターリンがモデルとされる。
☆ ☆ ☆
ルネサンス期のイタリアの小説が、周り巡って日本のお笑いに影響を及ぼしている。
表紙に「仮面ライダー」が描かれた社会学の本が、元をたどれば冷戦中のイギリスの小説の影響を受けている。
考えれば考えるほど不思議だ。だが、これが面白い。
サブカルチャーが、「本歌取り」の如く新しいサブカルチャーにパロディされていく様が面白い。
初めて触れた時と「元ネタ」が分かった時、一つで二度美味しいからだ。
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