「他人を羨むほど惨めなことはない。」
「他人を羨むほど惨めなことはない。」
私が母伝手に聞いた、祖父の言葉である。
初めてその言葉を聞いた時に衝撃が走った。
祖父は大変遊び人であったそうだ。
ギャンブル、借金、酒などなど…。
祖父母は母が学生の頃に離婚していた。
前述したことが離婚の原因だったことに加えて、祖母への(妻への)DVもあったそうだ。
祖母は、昨日の事のように腹が立つと、祖父の話になると愚痴が止まらず、娘である母はなんともいえない複雑な心境になったそうだ。
母は、確かに自分の父親(祖父)がしたことは許せるものではないが、そんなろくでなしでも自分の父親であるため、憎みたくても憎めない気持ちがずっとあると言う。
現在、既に祖父母は亡くなっているが、
私は実家に帰省すると、時折母の幼少期の話を聞かされる。
私は祖父との思い出はほとんど覚えていない。
私が2歳くらいの頃に、祖父は病気で亡くなったからだ。
なので、大人になって母から祖父の話を聞くことがほとんどだったが、祖父は気づきのある言葉を母にたくさん残していた。
私は亡き祖父の言葉を母を通して聞く。
その中の一つで、「他人を羨むほど惨めなことはない。」という言葉が、事あるごとに私の中で指針となっていた。
今、人と比べるということが、心の健康上、自分を責めることにつながり、あまりよしとされていないように思える。
他人は他人、自分は自分、確かにそうなのだが、時折、自分にない世界を見て、触れることだって自己成長には不可欠とも思う。
自分を見失ってまでも、他人の世界に入り込んでしまっては、自己成長も留まってしまうだろう。
私は、来年31歳になる。
noteにも書いてきたように、過去の異性関係はなかなかヘビーなものだった。
異性との交流は避けてきたからこその経験不足と自分の幼少期の経験からなる思考が影響して、堂々巡りから抜け出せないでいたのだ。
ここにきて、夜職をはじめ様々な職種の男性と関わっていく中で、2024年この残りの数か月は男性心理について学ぼうと思えた。
本やコラムを読む、ではなく、できるだけ直接的に、メッセージ上でも関わっていこうと思ったのだ。(勿論身体の関係でウェイウェイするわけではない。)
そんな中で、とある年下男性(W氏)と知り合うことになる。
恋愛目的でもなんともない、私が趣味でやっているツール…での相談者としてきた男性だった。
だが、話を聞いていくとやたらと共通点があったり、知っている単語、地名を言うので、少し踏み込んで聞いてみると、なんと地元の後輩だった。
これにはお互い仰天した。
こんなこと、なかなかないぞ…と思いきや、H氏との出会いもあり、この驚きは2度目である。
W氏は、家族円満、既婚男性であり、相談内容は自身の身体の不調についてだった。
きちんと受けた依頼にこたえた後は、お互いのプライベートな話(ジモトーク)になった。
W氏は若くして結婚し、こどもを授かったが、人生経験が豊富だった。
私はW氏から、男性心理を学んだ。
W氏は言う。
「自分はろくでもないやつだったけど、妻に育成してもらった。」
なるほど、と思った。
私はW氏の言葉を借りるならば「育成失敗」した過去がある。
だが、W氏の奥様はとても素晴らしいキャリアウーマンだった。
夫であるW氏からも尊敬されるくらい、自立した女性だ。
私も保育の仕事を続けていたら…なんて少し過去を振り返ってしまった。
W氏の家族の話は、私の理想、憧れそのものだった。
当事者間では色々苦労はあるものの、決して離れないであろう強固な夫婦関係だなと思った。男女のときめきなんてものはないとW氏は言うが、「戦友」や「同志」といった関係性こそ、強い信頼基盤が成り立っていると思っている。
私は、羨ましく思ってしまった。
W氏と同年代ではあるが、自分は年上だ。
今頃になって、私は人を見る目を養おうとしている。
自分の見た目を気にして、他者への意識に集中してしまっている自分。
相手を審判しないと強く思った気持ちは早々に薄れていたことに気付く。
ネガティブな言葉が並んだが、もう引くに引けない。
「今更」と言い出したら切りがない。
自分が今やっていることが全て肯定できるほど、まだ結果も出ていないと思っている。
憧れや、ロールモデルはあってもいい。
たまには、自分にないものを羨む時間があってもいい。
だが、「今、ないものはない」。
これは借金ボーイとの経験で学んだことだ。
すぐにでも、W氏一家のように、理想的な関係を築けるなんて甘い考えはしていないが、自分は今一度、地に足つけた行動をとっているのか、振り返るべきだ。
他者や自分を評価する時間があるのなら、こうして誰かの心の助けになる可能性のあることに着手していこう。
引くに引けないというのであれば、今ある人間関係や環境を大切にしていく。
思考に時間をとられることから抜け出すために、忙しい時間を欲してダブルワークを始めたのだ。
「他人を羨むほど惨めなことはない。」
今の私に強く言い聞かせたい言葉だ。
祖父と、父親の言葉を娘に伝えてくれた母に感謝である。
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