大切な、わたしの相棒。
靴ほど、こだわって買うに越したことはない。
そうはっきり断言できるのは、以前は安物の靴を履き潰していたが、ある日しっかりとした靴を買って得た知見から言える。
当時、営業の仕事をしていたわたしは、大した靴を持っておらず、安物の靴をすり減らして日々業務をこなしていた。
安物買いの銭失いとはよく言ったもので、毎日20000歩近く歩くわたしの靴はすぐに悪くなり、何度も買い替える羽目になっていた。
忙しい日々の中では新しい靴を買う暇もなく、入社したての懐なんてすっからかん。
仕方なく、ボロボロのヒールで営業回りをしていた。
入社して2ヶ月が経ち、ようやく日割りではなく満額の月給と、営業成績が好調だったことからインセンティブをもらえるようになった。
はじめて自分の口座に振り込まれた、6桁の数字。
それをみて、わたしはあることを決意した。
これで、夢だったドクターマーチンを買おう。
ピカピカの靴で、胸を張って営業しよう。
でも、肝心のドクターマーチンを、どこで買えばいいのかわからなかった。
公式サイトを見たり、店舗も見たりしたけれど、当時のわたしには高い買い物だったから、何度もお店の前を通り過ぎるだけだった。
少しでも安く、手に入らないかな。
そう考えたわたしは、フリマアプリを起動した。
自分の足のサイズで、なるべく新品に近いものを探す。
すると、希望に近いドクターマーチンが見つかった。
これだ、と思った。
値段も、少し定価よりは安い。
しかし、購入ボタンを押すのもしばらく躊躇した。
でも、ボロボロのヒールの爪先を思い出すと、自然と指は購入ボタンを押していた。
しばらくして、購入したドクターマーチンが届いた。
ほぼ新品同様の靴に、胸が躍る。
その日から、ドクターマーチンはわたしの相棒となった。
雨の日も、風の日も。
怒鳴られた日も、契約が取れた日も。
いつでも、ドクターマーチンはわたしの心強い相棒であり、味方だった。
どっしりと、地面に足をつけて。
わたしは胸を張って営業を続けた。
グラグラのヒールで不安げだったわたしは、いつしか自信を持って営業することができていた。
今はプライベートでしか履くことはないが、ほぼレギュラーメンバーである。
営業時代にしっかりと履き潰したが、どこも不具合は出ておらず、まだまだ現役としてその責務を全うしている。
靴紐をリボンに入れ換えて、カスタムされたドクターマーチンは、今もわたしの相棒だ。
この子となら、どこへだっていける。
わたしはそう、信じてる。