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予想以上に他人は自分を見ていない「スポットライト効果」

思っている以上に自分のことを周りは見ていないという論文があったのでメモ(1)。

自分の見ている世界と他人が見ている世界には乖離があります。自分が素晴らしいと思っている行為であっても,周りからみればその行為は煩わしいものである可能性も捨てきれません。

過去の研究を見てみると自分にまつわる事柄を他者よりも過大に見積もることが分かっています。具体例を挙げると以下のようなものがあります。

・集団に対する貢献度を他者よりも自分自身のものが大きいと判断する(2
・他者の行動や自分の周りの出来事を過剰に自分に対して起きている(3
・ジョークをきちんと理解していないほど,自分は平均以上にジョークを理解する能力があると思い込む(平均以上効果,4

このように私たちは自分の存在を他者よりも優れたものだと考え,物事の中心が自分であると認識する傾向があります。

しかし他者の言動を参考にして自分の言動を修正する側面も人間は持っています(56)。

今回紹介する論文はそんな他者の言動を参考にできない場合において自分に関する事柄の確率を過剰に見積もってしまうことを教えてくれます。

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2000年にコーネル大学のトーマス・ギロビッチらが人間は過剰に周りの人からの目線を感じ,注目されていると思い込んでいるのではないかについて調べるために実験を行いました。

実験対象となったのはコーネル大学の大学生109名でした。まず実験参加者の中からランダムに選び「観察者」と「ターゲット」の2つの役割に分け,実験開始時間の5分前に実験室に来てもらいました。

その2つのグループの違いは以下のようなものでした。

<観察者役>
指定された教室に向かう

<ターゲット役>
恥ずかしいTシャツに着替えてもらい,遅れて指定された教室に向かう

指定された教室にはもうすでに観察者役の実験参加者が集まっており,実験者が教室の入り口から一番近い前の席に実験参加者を案内し,着席しもらいました。

また「ターゲット役」の実験参加者が着替えることになったTシャツはバリー・マニロウの顔がプリントされたもので,事前の調査によって大学生に不人気であることが確認されていました。

そして最後に部屋にいる何%の人が着ているTシャツの写真に気づいたと思うか,またTシャツに描かれていたのが分かるかのは全体の何%なのかを予測してもらいました。 

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実験の結果,「観察者役」である実験参加者は実際にTシャツに気付いた人数に近い全体の約25%を予測した数値として回答したのに対し,恥ずかしいTシャツを着て教室に足を運んだ「ターゲット役」の実験参加者は教室にいる約50%の人が自分のTシャツに気が付いていると判断しました。

しかし実際に「ターゲット役」の実験参加者が恥ずかしいTシャツを着ていることに気付いていた割合は全体の約25%で予測の半分ほどでした。

また一部の実験参加者に実験の様子が撮影されたビデオを見てもらった結果,「観察者役」の実験参加者と同様に全体の約25%が恥ずかしいTシャツの存在に気付くだろうと予測しました。

過去の自分に関連する事柄(e.g. 容姿)には実際によりも周りは自分に注目していると思ってしまう傾向があるようです(7)。このような自分に他者の注目が向いていると考える傾向は外界の脅威や他者からの注意に素早く反応することを可能にするという面でメリットがあります。

しかし,自分に関する事柄の過剰な解釈はときに他者との大きな乖離を生み出すので注意が必要です。また次の記事では,どうすれば個人的な予測などの自己関連バイアスを乗り越えられるのかを扱っていきたいと思います。

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(1)Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment: an egocentric bias in estimates of the salience of one's own actions and appearance. Journal of personality and social psychology, 78(2), 211.

(2)Ross, M., & Sicoly, F. (1979). Egocentric biases in availability and attribution. Journal of Personality and Social Psychology, 37, 322-336.

(3)Fenigstein, A., & Abrams, D. (1993). Self-attention and the egocentric
assumptionofsharedperspectives. JournalofExperimentalSocialPsy-
chology, 29, 287-303.

(4)Kruger, J., & Dunning, D. (1999). Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one's own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134.

(5)Jacowitz, K. E., & Kahneman, D. (1995). Measures of anchoring in
estimation tasks. Personality and Social Psychology Bulletin, 21, 1161- 1166.

(6)Milgram, S., Bickman, L., & Berkowitz, L. (1969). Note on the drawing power of crowds of different size. Journal of Personality and Social Psychology, 13(2), 79–82. 

(7)Gilovich, T., Kruger, J., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (1999). Those bad hair days: Biased estimates of how variable we look to others. Unpublished manuscript, Cornell University.

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