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親切を数えると幸せになる

感謝した出来事に焦点を当てると幸福度が上がるという論文があったのでメモ(1)。

親切をすることでポジティブな感情が喚起されたり,ネガティブな感情が抑えられるといったプラスの効果を示す研究があります。具体的な例を挙げると以下のような研究があります。

・意図的に他人に親切を行った場合であっても,親切を行わなかった場合と比較して幸福度が高まった(2
・自分のためよりも他の人のためにお金を使うと幸福度が高まる(3
・職場で同僚から親切をされると,親切を受けた人は他の人に対して親切な行動を取るようになる(4
・親切をすると,心臓が強くなる(5

このように親切が引き起こすポジティブな効果は数多く見つかっています。

しかし今回紹介する研究は親切をする・されるではなく,周りから親切をされるなどの感謝した出来事を数えるだけでもプラスの効果が得られることを教えてくれます。

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2003年にカリフォルニア大学のロバート・エモンズらが感謝した出来事を数えることによる効用について調べるために実験を行いました。

対象となったのは,大学生201名でした。

実験参加者はランダムに3つのグループに分けられ,実験期間の10週間の間,指定された出来事を1週間ごとに紙に書き出しました。その3つのグループには以下のような違いがありました。

<グループ1>
感謝した出来事を書き出す

<グループ2>
不満に思った出来事を書き出す

<グループ3>
日常の出来事を書き出す

実際にグループ1の感謝した例は,「友達の寛容さ」や「素晴らしい両親」などがありました。グループ2の例には,「駐車場が見つからない」や「誰も掃除しない,散らかったキッチン」などがありました。

実際に書き出された出来事をポジティブ,ネガティブ,そして中立に分類した結果,全てが偏りなく書き出されていました。また出来事について書き出すとは別に1週間ごとに自分自身の抱いている感情や身体的な異常がないかなども質問紙で回答していました。

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実験の結果,感謝の念を抱いた出来事を書き出した場合には,他の出来事を書き出した場合よりも人生について全体的により良いものだと感じ,これからについても楽観的な予測を立てました。

また,身体面でも違いがあり,感謝を抱いた出来事を書き出した場合には,他の出来事を書き出した場合よりも身体的な不満が少なく,より多くの時間を運動に割いていた。

しかし,3つのグループでポジティブ・ネガティブの感情的な差は見られませんでした。

この実験に続く実験2・3では,実験1で確認された将来に対する楽観的な期待などとは別に以下のような結果が出ています。

・よりポジティブな感情を抱くようになり,他者とより関われることができていると感じるようになる
・睡眠時間が増え,睡眠の質が良くなった
・物事を楽観的に考えるようになる
・他の人と繋がっている感覚が増加した

このように感謝した出来事に焦点を当てることは私たちにとってプラスの効果があると言えるでしょう。

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(1)Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: an experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of personality and social psychology, 84(2), 377–389.

(2)Lyubomirsky, S., Tkach, C., & Sheldon, K. M. (2004). Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two six-week interventions. Unpublished raw data.

(3)Dunn, E., et al. (2008). Spending Money on Others Promotes Happiness. Science, 5870, 1687-1688.

(4)Chancellor, J., Margolis, S., Jacobs Bao, K., & Lyubomirsky, S. (2018). Everyday prosociality in the workplace: The reinforcing benefits of giving, getting, and glimpsing. Emotion, 18(4), 507–517.

(5)Lyubomirsky, S., Tkach, C., & Sheldon, K. M. (2004). Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two six-week interventions. Unpublished raw data.

■親切は脳に効く/デイビッド・ハミルトン (著), 堀内久美子 (翻訳)

■「親切」は驚くほど体にいい! /デイビッド・ハミルトン (著), 有田秀穂 (監修, 翻訳)

■「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY/エリザベス・ダン (著), マイケル・ノートン (著), 古川 奈々子 (翻訳)

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