思い出す練習はテストの点数を上げる「テスト効果」
思い出す訓練はテストの点数を向上させるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。
これまでの効率的な学習方法について検討した研究を見てみると,以下のような行動が記憶の定着率を上げ,テストの点数を上げることが分かっています。具体的な例を挙げると以下の通りです。
・学習とテストの間隔を空けると記憶に定着する(分散学習,2)
・他人に教えるつもりで学習すると頭に残る(3)
・実際に紙とペンを使った方が記憶に定着する(4)
このようにちょっとした工夫が効率的に学習をすることを可能にし,テストの点数を上げることにつながります。しかし学校は学習するべき材料は与えてくれますが,科学的に効率的で効果が高い学習方法を教えてくれません。
今回紹介する論文はテストの点数を上げるにはどのような学習方法をすればいいのかを教えてくれます。
2008年にワシントン大学の心理学者であるジェフェリー・カルピックらが科学的に効率的な復習方法について調べるために実験を行いました。
実験の対象となったのはアメリカの学生でした。
実験参加者を4つのグループに分け,実験参加者には外国語(スワヒリ語)と英語の40個のペアを読んで学習し,テストをする課題を2回受けてもらいました。その4つのグループというのは以下の通りです。
<グループ1>
すべての単語の学習とテストを2回繰り返す
<グループ2>
一回目のテストを受けた後に,間違えた単語を再び学習し、二回目のテストではすべての単語を再テストする
<グループ3>
テストを受けた後に,すべての単語を学習するが,2回目は前のテストで間違った単語だけを再びテストする
<グループ4>
一回目のテストで間違った単語を再び学習し,二回目のテストを繰り返す
そこから1週間後に最終テストを行い,それぞれのグループのテストの成績を比較しました。
実験の結果,テストした平均単語数はグループ1は320個,グループ2は236.8個,グループ3は243.0個,グループ4は154.8個になった。この数字は繰り返し復習する単語数が多いほど,数が大きく,また学習時間も長くなっています。
しかし間違えた単語だけ復習したグループ2はグループ1より合計の勉強時間が少なかったにも関わらず,最終テストの点数が高かった。そして,グループ3はグループ2と同程度の勉強時間だったが点数が低くなりました。
これは間違った問題に取り組む間隔の時間が空くことで分散学習(学習の間隔を空けて行う)にもなったからだと考えられています。
ここで重要なのはインプットする際に学習の間隔を空けるのではなく,小テストなどのアウトプットをするときに間隔を空けるべきだということです。
実際の教育機関で行われた,学業の試験を向けて用いる勉強の仕方を質問紙で問うた調査ではこの方法はほとんど用いられていませんでした。今回の結果からテストを通して繰り返される記憶の検索は長期的な記憶の保持に大きなプラスの影響があると言えるでしょう(5,6)。
(1)Kerpicke, J., et al. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319, 966-968.
(2)Rohrer, D., Taylor, K., Pashler, H., Wixted, J. T., & Cepeda, N. J. (2005). The effect of overlearning on longterm retention. Applied Cognitive Psychology, 19(3), 361-374.
(3)Nestojko, J. F., Bui, D. C., Kornell, N., & Bjork, E. L. (2014). Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages. Memory & cognition, 42(7), 1038–1048.
(4)Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014). The pen is mightier than the keyboard: Advantages of longhand over laptop note taking. Psychological science, 25(6), 1159-1168.
(5)Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. III. (2007). Repeated retrieval during learning is the key to longterm retention. Journal of Memory and Language, 57(2), 151–162.
(6)Roediger, H. L. III, & Karpicke, J. D. (2006). Testenhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.
■脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!/ベネディクト・キャリー (著), 花塚 恵 (翻訳)
■使える脳の鍛え方 成功する学習の科学/ピーター・ブラウン (著), ヘンリー・ローディガー (著), マーク・マクダニエル (著), 依田 卓巳 (翻訳)
■Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ/アーリック・ボーザー (著), 月谷真紀 (翻訳)
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