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読書ログ3 『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』 ライナー・マリア・リルケ/高安国世 訳

 リルケだと、詩集よりも小説の『マルテの手記』が自分の中で大ヒットしてたことがある。当時は新潮文庫で読んだ(いまでは光文社の古典新訳もあるね)。いつ読んだのかは忘れたが、暗い路地を静かに見つめるような作品、すげえおもしろかったことは忘れていない。だが『ドゥイノの悲歌』は積んでる。そちらもそろそろ読みなさいよと。

 読書ログ三冊目、以下になります。

『若き詩人への手紙 若き女性への手紙』 ライナー・マリア・リルケ/高安国世 訳

 アマゾンを見たらやたら売れてるのな。レビューも多いし、この本について何かいうべきことはないのかもしれない。まあそれでもなんか書きますか。

 書簡集。詩を志す若者へ惜しげもなく助言と激励とを与え続けるその姿勢、リルケには友情より他には別段なんの得もなさそうだが、徳はある。なんだか神々しいほどの徳。読んでいけば付箋を貼る手が止まらんほどの名句の奔流。すげえなあ、と思う一方でかなり難解な部分もありつつ、そういうとこは苦労した。哲学書に対する読み方でやらねばならんとこでした。若き詩人へ、ということで、その若さゆえの悩みへの応答を丁寧に書き送って、内容は詩作、仕事、生活、恋愛、また神学のようなものまで幅広く。リルケという人はどうやってこれほどの知性を手に入れたんだろうな。
 ちょっと引こう。相手の若者に何か悲劇があったようで、親身に励ましつつ、悲しみが内部へ及ぼす変化などについて語ってのちの記述。

ただ、たいていの人間はその運命を、それが彼らの内部に住んでいるあいだに、それを跡形もなく吸収し尽くさず、自分自身へと変化させなかったからこそ、自分自身から出てくるものをそれと認めることができなかったのです。

61ページ

 と、これだけではよくわからんが、この前の部分までをざっくりいうと、内部の新しいもの、加わってきたものは、悲しみを持つ者として辛抱強くあれば一層深く入り込み、運命になるのだというようなことをいっている。要は悲しみは糧であるということでしょうか。孤独についてもいっているが、それは全編通して強調している。孤独を愛せといってて、これは古今東西けっこういろんな賢者たちがいうことだな。

 女性への手紙のほうも熱心に書いている。なにやら戦時中なのか、境遇のしんどさ極まる女性へ向けて、リルケは心からの励ましを書き続けていた。また、男とは女とはなどとも語る。百年くらい前という時代のわりにフェアな意見なんじゃないでしょうか。女性の現状を知り、ほんと親身になって書いて。

 ざっとそんなところでした。良書。力尽きて筆を置きます。

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