しがらみを断て ~課題の分離~
嫌われる勇気 No21 「ゴルディオスの結び目」を断て
青年は言います。「課題の分離は、理屈としてはまったく正しいと思います。~わたしはただ、人生に嘘をつくことなく、やるべきことをやる~でも、考えてみてください。倫理的に、道徳的に、それをなすことは正しいのといえるのでしょうか?」
この問いかけに対し、哲人が出した例えがゴルディオスの結ぶ目の逸話。
ゴルディオスの結び目
紀元前4世紀に活躍したマケドニアの国王アレクサンドロス大王。彼がペルシア領に遠征したとき、神殿に戦車が祀ってあった。戦車はかつての国王によって神殿の支柱に固く結びつけてあり、”この結び目を解いた者がアジアの王となる”という伝説があった。腕に覚えのあるものが挑み、解けなかった頑強な結び目。アレクサンドロス大王はどうしたのか…
アレクサンドロス大王は、結び目が固いと見るや、短剣をとりだして一刀両断に断ち切ってしまったという…。
「運命とは、伝説によってもたらされるものではなく、自らの剣によって切り拓くものである」と大王は語ったとのこと。
しがらみを断ち切る
この例を指して哲人は、「複雑に絡みあった結び目、つまり対人関係における”しがらみ”は、もはや従来的な方法で解きほぐすのではなく、なにかまったく新しい手段で断ち切らなければなりません」と話し、課題の分離の例とするのです。
今この瞬間に絡まってしまいどうしようもない人間関係のしがらみを経験した人は大勢いるでしょう。私にもあります。どちらかと言えば、”継続は力なり”信条が強い私です。
例えば、部活。小中高と野球部だった私は、何度も辞めようと思ったことがありました。辞めれなかったけど…。そんな高校野球部時代、技術も体力にも恵まれた同期がいました。将来のレギュラーを約束されていた彼でしたが、あっさりと高校二年生になった時に、留学を理由に野球部を去りました。
アレクサンドロス大王よろしく、あっさりと部活というしがらみを断って見せたのです。羨ましかった…。当時私にはその勇気がなかった。
課題の分離は、対人関係の入り口
「人の絆さえも分断してしまうことになる。人を孤独においやってしまう。~人間の感情を完全に無視しています!」と意気込む青年に、哲人は言います。「課題の分離は、対人関係の最終目標ではありません。むしろ入り口なのです」と。
哲人は続けます。青年の主張に対し、「それは”見返り”に縛られた発想です。~相手がどんな働きかけをしてこようとも、自分のやるべきことを決めるのは自分なのです」と。
常識へのアンチテーゼ
ゴルディオスの結び目の例について、”それは、手でほどくからこそ意味がある”という発想が常識だとすると、アレクサンドロス大王の行為はその常識にたいするアンチテーゼであるとこの本では語られます。
アドラー心理学において、原因論を否定し、トラウマを否定し、目的論を採ること、悩みのすべては対人関係の悩みをすること、承認を求めないこと、課題の分離、それらすべてが常識へのアンチテーゼ。
考えさせられます。
新型コロナウィルス渦の今この瞬間。常識へのアンチテーゼを考える好機であると、こころより思います。
私のアンチテーゼとしての取り組み
では、私は…。ささやかですが、この新型コロナウィルス渦で行っている常識へのアンチテーゼ
私の専門とする心理療法は、からだとからだのやり取りを主とする珍しい方法です。もちろん、べたべた触るわけではなく、その人の努力を最大化するための最小限の援助です。ですから、触れて援助することが常識。しかし、この未曾有の事態…。今、私は、触れずに、しかも、リモートでこの方法を試しています。
上手く断ち切れるかな…