君はローラ
世の中でタレントのローラが認知され始めた頃、久しぶりに中学時代の同級生から連絡がきて、男女数人で居酒屋へ行くことになった。
その中には、成人式以来会っていなかった女友達がいた。
それまでの彼女は、どちらかというと地味な印象だけど、小気味の良い毒舌を話す面白い人という認識だったが、目の前に現れたのは垢抜けた美人。ビックリした。
そんな彼女は、メイクをローラに寄せていた。メイクどころか、どことなく話し方もローラに似ている。
こんな人だったか??と違和感を覚えた。
僕が「ローラに似てるね!」と伝えると、彼女は「そんなことないよぉ~」といいながらも、まんざらでもなく嬉しそう。
美人になった驚きとほぼローラになった衝撃は、その後も僕の心に強く残った。
彼女はLINEのアイコンまで、ローラに寄せていた。
このエピソードを、そのまま大学時代の友達に話した。
僕は「結構ローラに似ていると思うんだけど。」と言いながら、彼女のLINEのアイコンを友達に見せた。
大学の友達は、「すっげぇ!めちゃくちゃローラに似てるね!かわいいじゃん!まるで本人みたいだ!」と彼は興奮していた。
その後、ほぼローラになった彼女を知る、別の地元の友達と居酒屋で飲んでいた時に、僕はまた彼女の話題を出した。
これまでの経緯を説明した上で、彼女のLINEのアイコンを見せると指摘された。
「いや、これはローラだよ!あの子ではない。」とシンプルな突っ込みを受け、僕は自分の思い込みの強さに恥ずかしくなる。
その場では大爆笑をかっさらったが、まだこの話は終わらない。
そんな話題があったことすら忘れていた数か月後、
ローラ似の友達はまた、違うローラの画像をLINEのアイコンにしていた。ややこしいぜまったく。
僕は大学の友達と洒落たバーで、飲んでいた。
彼は真剣なトーンで話し始めた。
「俺さ…今まで有名人に似ている人って紹介をされても、似ているって思ったことが一度もなかったんだ。だから、お前からローラ似の友達のアイコンを見せれられて、本当にびっくりした。こんなに、本人に似ている人は初めてだった。もう一度、ローラ似の友達のラインのアイコンを見せてくれ!」
僕は、そんな話をしたことすら忘れていた。ほんとに言い出しにくい恥ずかしい失敗だったが、彼に腹をくくって打ち明けた。
「…ごめん!あのローラ似の友達のLINEのアイコンは…ローラだったんだ!俺たちがローラに似ていると騒いでいたあの写真は…ローラ本人だったんだ…全ては俺の思い込みの強さが招いたことなんだ。」
全てを悟った友達は、腹を抱えて笑いながら、僕の頭をはたき許した。
「すっげぇ馬鹿っぽい、ひどい会話に巻き込まれたじゃないか」と彼は言った。
僕は、「またあの子、LINEのアイコンをローラしているから、ややこしいよホント」と言いながら大学の友達に、ローラー似の友達のLINEのアイコンを見せた。
「いや、これはローラではない。そして似ていない。」と冷静に突っ込まれ彼は笑った。
僕はこの日、自分は思い込みが強い人間だということを痛感した。
当時はそんな自分が嫌になったが、今の僕はそんな自分も嫌いになれない。
欠点だらけの自分だけど、そんな自分を友達だと思ってくれている人やそんな自分を愛してくれた人たちに心から感謝する。