三澤寿喜 みさわ・としき ヘンデリアン=ヘンデル大好き人間
ヘンデルはメサイアと調子の良い鍛冶屋くらいしか知られていないことが悔しく、ヘンデルの知られざる名曲の紹介・普及をライフワークとして早半世紀。ヘンデル・フェスティバル・ジャパン主宰、元国際ヘンデル協会(ドイツ)理事、北海道教育大学名誉教授。投稿はヘンデルに限らず思いつくままに。
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続・続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その3 城内劇場とバロック演技(ジェスチュアgesture)
バロック演技(ジェスチュアgesture)オペラが詩、音楽、演技、衣装、舞台効果(背景、照明、機械仕掛け)などを含む総合芸術であることは言うまでもありません。中でも、バロック・オペラにおける詩と音楽と演技の緊密な結びつきは、19世紀以降のオペラに親しんだ我々の想像をはるかに超えています。 バロック時代においてはオペラや演劇などの劇場娯楽における演技はジェスチュアが用いられていました。ジェスチュアとは人間の様々な意志や感情を特定の身振り、手振り、姿勢などで表すものです。ゲ
続・美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~その2 城内バロック劇場の構造
II 城内バロック劇場の構造前稿でも述べたとおり、チェコは歴史的にオーストリアのハプスブルク家と密接な関わりをもっていましたが、特に南ボヘミアのチェスキー・クルムロフはウィーンとは距離的にも近く、文化的に強い影響を受けていました。このため、1766年に建てられた第2劇場(現在復元された劇場)はその構造から機能、装飾までのすべてが18世紀ウィーンのバロック劇場様式をそのまま留めている点で極めて重要なのです。 場内劇場の基本構造の大枠は下の図面、左から「舞台裏」、「舞台」、「客
美しい古都チェスキー・クルムロフとバロック・オペラ ~~幻想的な城内劇場とバロック・オペラが創り出す非日常の世界~~ その1 チェスキー・クルムロフ城内バロック劇場の歴史
はじめに ボヘミア南部、現在のチェコとオーストリアの国境近くにある古都チェスキー・クルムロフは世界一美しい町として日本人観光客にも大人気ですね。 この町のシンボルとなっている城の一番奥(第5中庭)にはバロック様式で建てられた歌劇場(以下、城内劇場)があり、そこでは毎年国際会議が開かれていました(現在も開催しているかは不明)。 会議の期間中には城内劇場でバロック・オペラが実験上演されました。照明、背景、衣装、演技、機械仕掛け、歌唱、オーケストラもすべてを可能な限りバロック時