三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ小野綾子さん
三澤寿喜のお薦めコンサート:ソプラノ小野綾子さん
オラトリオ《時と悟りの勝利》(抜粋)
2024年2月2日(金)五反田文化センター 音楽ホール 19:00開演
(宮城公演1月28日[土] 名取市文化会館中ホール 14:00開演)
2022年度宮城県芸術選奨新人賞受賞記念
(ヘンデル・フェスティバル・ジャパン後援)
《時と悟りの勝利》(HWV 46a)も、先にご紹介した末吉朋子さんのコンサートと同様、ヘンデルの青年期(イタリア時代初期)の作品です。作曲家としてのヘンデルに大きな成長をもたらしたこの時代の作品が積極的に採り上げられるのは本当に喜ばしいことです。
この作品では、擬人化された「美」、「快楽」、「悟り」、「時」が登場し、人の生き方について論争が繰り広げられます。「快楽」の誘惑に負けそうになった「美」が最後は正しい道を歩むことを決意します。
ソプラノの小野綾子さんが「美」と「快楽」の二役を歌います。ヘンデルはもちろんこの二役を二人の歌手が歌うように作曲していますので、二役のアリア全てを一人で歌うことは無理があります。そこで、演奏しないものは小野さんが二役で朗読し、さらに「悟り」と「時」の二役は俳優の上島奈津子さんが朗読で語り継ぎ、ドラマの進行をしっかりと維持していきます。
オラトリオやオペラのような大規模作品の「全曲上演」は本当に大変なことで、個人にはなかなか手に負えません。かと言って、それらの中の気に入ったアリアだけを選んで演奏したのでは、ドラマとしての面白味は伝わりません。
この公演のように、抜粋から外れたアリアやレチタティーヴォなどは朗読で補いながら、作品本来の「ドラマの面白さ」をきちんと表現しようとする試みは大変ユニークです。
演奏は古楽器の精鋭集団で、バロック・ヴァイオリンやチェンバロに加えてヴィオラ・ダ・ガンバ、リコーダーも加わり、多彩です。
めったに演奏されることのない「知られざる傑作」《時と悟りの勝利》をこの機会に是非!
私、HFJ実行委員長の三澤寿喜がプレ・トークをする予定です。