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週刊web川柳  別冊・非情城市

川柳を作っています。 「世界からサランラップが剥がせない」 などなど。奇妙な世界を基本、週一回お届けします。句集『スロー・リバー』、『リバー・ワールド』の人間です。
川柳をほぼ毎日作っています。無料記事では読めなかった句、ここでしか読めない句を取り揃えております。…
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ジョン・レノン(定型)  川柳101句

ジョン・レノン(定型)  川柳101句

夏の庭ひとつの孟母ものがたり

物語論にふたたび雪融けて

ひとめみて法然様とわからない

つまようじばらばらとなる竹雄の死

人の世に往復があるカドミウム

唐紙に犯人を書くマリオの血

張型のわれるまで買うおかひじき

ひじき買うとき未完なる新宿区

さげまんの転生しない板橋区

レーヨンの正拳突かれ冬の朝

みそしるをうばわれてゆく河馬のまち

カーキチがかんがえている檸檬の図

しめなわの

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天地創造(アイ・キャン・フライ) #long version 川柳200句

天地創造(アイ・キャン・フライ) #long version 川柳200句


——2024年11月16日−18日、名古屋旅行のつれづれに

Ⅰ.創造開始  一〇〇句

父という酢味噌の腐る虹の國

父の名を豆腐潰しておもいだす

朝焼けて父の陰茎ぶらさがる

散り散りにレム睡眠の家具屋たち

ユリイカをかたるマルチン幼稚園

ホルモンをうばって逃げる柴犬屋

神童のなますを縦に裂く仕事

バイク屋に貼りついている文字の渦

皮切りにきのこ図鑑の目次消え

不老者をのせて無

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さだめ(リインカーネーション)  川柳120句

さだめ(リインカーネーション)  川柳120句


Ⅰ.パーキー・パットの死ぬのにもってこいの日  四〇句

山嶽信仰ミノワマン死す

パーキー・パットの日々のきのこもどき

病院船にわが昭和テレビ塗る

焦げパンをつかう降霊会 昼

昼餉にして円周率のばってら

甘党がロダンの句碑にぶちあたる

院内に原子ありけり泥うさぎ

一句成す毛深いひとのゼミナール

うわさからブラック・ジャックかき直す

幼児用椅子にあわせて魔改造

無を想えエーデル

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DAVID BOWIE(路上)  川柳80句

DAVID BOWIE(路上)  川柳80句


Ⅰ.おとこのこ(壱)  八句

秋の田にゆらゆらつづく男子会

男子力発電所にて曲がる髷

翻車魚の男子時計のねじまかず

蜜蠟がこの手をこぼれ男子展

秋ひでり男子心母の停まりけり

男子屋の松浦亜弥にまた瀰漫

秋暑し男子師匠の舌融ける

きりすとを隠したままの男子街

Ⅱ.くの一、そのほかの  三十二句

くの一の作話なされる家庭内

刷毛で塗るふたつの鈴鹿サーキット

ぷよぷよをあきらめ

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愛の時代(フラジャイル)  川柳112句

愛の時代(フラジャイル)  川柳112句


Left:意味ながら  五十六句

図と地から編年体の悪あがき

拳銃の町にねそべる山田くん

肝吸いの言うべきことがよくわかる

拘置所に和歌山県の梁ばかり

朝夕焼ただの短詩をよむユング

そしられて耳かきを折る蕪村論

海溝ににどと読まないドラえもん

大車輪畑正憲の大びんた

この世へとへその緒にぎるセレブたち

冷暗の県歌ばかりのもろきゅうり

中央に鹿の料理がわきあがる

都市大にビ

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バカボン百景(無双)  川柳101句

バカボン百景(無双)  川柳101句


Ⅰ.善の研究  三十四句

紫のバラの人ゆく夏の墓地

らくだ駆り純天皇のかよう寄席

根しょうがをみんな耐えぬく無音劇

現実に即すとケント・デリカット

炎昼や〈善の研究〉ばらまかれ

蛾に材をとって塚本火のごとし

碁の意味のどくろがふえる池袋

灸あつし意味と意味とをきりはなす

Tシャツを売って語頭に烏賊がつく

メンデルの憑きものおちる大酷暑

あれちうり展がるポップ・ミュージック

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天使というテロス—現代川柳=メディア論

天使というテロス—現代川柳=メディア論

 およそ川柳とはメディアであり、すなわち媒介することである。メディアというものが、「ある現実」から「べつの現実」への橋渡しであるならば、川柳とはどこからどこへ媒介しようとしているのか、という問いがまず立つ。
 ここでは同語反復めくが、「ある現実」を「川柳の原素」としよう。それを575に置き換える、すなわち川柳=句という「べつの現実」として変換するのが「川柳をつくる」ということのメカニズムになる。

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残像(ヒューゴー&ネビュラ)  川柳108句

残像(ヒューゴー&ネビュラ)  川柳108句

どうしようもなくくるしい日。ギャグを考えぬく作業に焦り、ジャック・ダニエルズをながしこめば、夜明けははやい。なにをわらえばいい? ひとに笑いを強要するほど暴力的なことはない(わたしは、この文をギャグとして書いている)。田舎町のささやかなジャズフェスティバルに行った。以下には演奏のかたわらでつくった句も混じっている。ただそれだけの、土曜日。

Ⅰ.成分——白粉、幻影、祝祭  二十七句

性的の意味で

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遠い太鼓(ビートニク)  川柳111句

遠い太鼓(ビートニク)  川柳111句


Ⅰ.堕菓子屋のはつなつ  三十七句

サッちゃんの気象衛星おちて朝

距離という距離をあつめてレバ炒め

ドストエフスキーの空母たまごうむ

死角から反小説のたこ浴びる

ワッフルを感じられないすみだ川

献血にドレスコードという略語

略語家の部屋のヨブ記を読みかえす

にんじん家総体として朝に撃つ

堕菓子屋のカーペンターズ立ちあがる

河馬の死にむけてだれもがディカプリオ

丸美屋のホッケ

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超次元的実戦川柳講座X−8 「ショートソングをつくる・つくられるショートソング」 

超次元的実戦川柳講座X−8 「ショートソングをつくる・つくられるショートソング」 


 おーす川合っすー。超次元的実戦川柳講座です。

(以下のテクストはzoom川柳講座「世界がはじまる十七秒前の川柳入門」2024年4月27日ぶんを基に加筆しています。「せか川」についてはこちら→世界がはじまる十七秒前の川柳入門)

 ここのところ助詞がどうとかミニマルな話ばかり続いたので、いい加減飽きてきたんじゃないかと思います。いやそんなこと言っちゃいけないんですが。それで今回、大きな題として

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アイアン・クロー(父の掌)  川柳108句

アイアン・クロー(父の掌)  川柳108句


Ⅰ.白鳥の演歌  二十四句

B作をえいえんに撲つギムナジウム

白鳥をNHKが煮て世界

ただの苦をミネソタ州とかえてゆく

天人がかぼす潰している校歌

白痴美のしょう油壜よりしょう油洩れ

老ゆる苦をベスト電機に貼りあわせ

後漢書をわすれつつある老ゆる楽

狂人の毬藻のほかになにもなし

もやしから関所破りのひげ根抜く

周作が或るモノリスと章魚をみる

苦の世界揚がるフレンチクルーラー

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超次元的実戦川柳講座X−7 「助詞が愛を享ける・助詞が愛を享けるという認識」

超次元的実戦川柳講座X−7 「助詞が愛を享ける・助詞が愛を享けるという認識」

(以下の論は、2024年3月23日「世界がはじまる十七秒前の川柳入門」を基にしています。「せか川」についてはこちらをどうぞ→世界がはじまる十七秒前の川柳入門)

1.はじめに——「助詞」とは何か?
 こんにちは。実戦川柳講座です。
 今回も「助詞」についてみてゆきます。前回は「助詞がみちびくイメージ」ということでしたね。
 今日は、イメージをさらにメタ視点からみて、「助詞がいかに句を固定させようと

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