松下幸之助と『経営の技法』#21
「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。
1.3/7の金言
自然と親しみ、自然の動きを観察していくと、素直な心を、自らの内に養うことができる。
2.3/7の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
大自然の営みには、私心も、とらわれもない。すなわち、素直に物事が運び、素直な形で一切が推移している。
したがって、大自然の営みの中に身をおいて、静かに自然の形を見、その動きを観察すれば、「素直な心」を肌で理解し、自らの内に養うことができる。
3.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
「素直な心」によって獲得しようとするものについては、昨日(3/6)の金言によって明らかにされましたが、「成功しやすい」判断と、「正しい」判断です。これによって、ビジネスで成功する可能性が高くなるだけでなく、社会正義に合致する判断の可能性が高くなり、永続して利益を上げる可能性が高くなるのです。
このような「素直な心」の獲得方法として、松下幸之助氏は、自然の中に身をおいて、自然を観察することである、と説明します。
これは、経営者自身の精神的な鍛練となり、経営者による冷静な判断を可能にさせたり、自然の大きさと人間の小ささを理解することで、大局的な判断を可能にさせたりする効果があるかもしれません。
さらに、経営者自身の問題や会社組織の問題として見た場合、社会的な関係や政治力学に惑わされないシンプルなものの見方を推奨しているようにも思われます。もちろん、社会的な関係や政治力学にも配慮した決断が求められることもあるでしょうが、シンプルなものの見方ができることは、戦略の幅を広げることに繋がるのです。
これは、特にリスクセンサー機能の観点から見た場合、より顕著です。複雑な現象も、まずはシンプルに原因を分析し、それに影響を与える他の要因を炙り出すことによって、議論を整理し、分析の精度を高めることが期待できるのです。
4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
経営者を選ぶ際の資質の問題として、物事をシンプルに見ることができるかどうかを考慮する、という意味で理解することもできます。大局から物事を見て、現在の状況を細部にとらわれずに客観的に把握できる能力は、特に大きな方向性を判断すべき戦略的な事項について、必要な能力だからです。
そして、自然の摂理に学ぼうとする姿勢を常に持ち続けることは、自分自身の研鑽を忘れない、ということであり、経営者の感性が社会からずれないようにし続けることになります。そのような資質があり、努力を怠らない経営者を選ぶことと、そのような経営者であるように監視やチェックすることが、重要なのです。
5.おわりに
ここまでの検討は、2つの会社組織論に少し引き寄せすぎているかもしれません。
話はもっとシンプルで、経営者が悠然としていれば、それだけで経営は随分と安定するでしょう。そのような経営者になってもらうためのアドバイス、ということで十分なようにも思われます。
どう思いますか?