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松下幸之助と『経営の技法』#51
4/6の金言
目に見えない失敗や成功を心の中で反省し、それを、体験として積み重ねていく。
4/6の概要
松下幸之助氏は、以下のように話しています。
結果として成果が出たり失敗したりすることがあり、それはもちろん大きな体験である。
けれども、結果だけでなくその過程でも、反省し、味わうべきことがある。すなわち、成功の過程にも、失敗があり得るし、失敗の過程の中にも成功があり得る。そういうものを一つひとつ味わっていくならば、一見無事安定の姿にあっても、日々これ体験であり、それが全て生きてくる。
それは、心の体験とでも言うべきものであり、「これは行きすぎだったな」「あれはちょっとまずかったな」というような目に見えない失敗や成功を心の中で反省し、体験として積み重ねていくことがより大事だ。
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
ここでは、一人ひとりの人間の心の在り方を述べているようにも見えますが、経営者の意識どおりに組織が動くことが、経営問題やリスク管理の問題として重要ですので、会社組織の問題として検討しましょう。
まずは、リスク管理としてはPDCAサイクル、経営としてはカイゼン活動やQC活動など、日常的な業務の中での活動があるほか、社会的な不祥事を起こした場合に、監督官庁やマスコミなどに、原因分析の結果と再発防止策を報告すべき場面が増えています。人事考課も、その結果を本人にフィードバックする運用がむしろ当然となっています。
このように、結果を振り返る作業は、ビジネスでは当然になっているのです。
これに対して、松下幸之助氏はさらに「深い」自省を求めています。
すなわち、①結果だけでなくそのプロセスまで対象にすること、②一見無事安定な状態でも、日々自省すること、です。
これに近い業務活動としては、「ヒヤリハット」の報告が上げられるでしょう。結果的にトラブルに発展しなくても、その危険があった現象は会社として把握し、原因分析や対策を考える活動です。また、コールセンター業務では、実際に電話で応対するオペレーターたちのやり取りの内容や、そのためにかけた時間などを、チームリーダーがモニターして、日常的に応対品質の向上のための分析やフィードバックが行われています。
つまり、日常的な自省と業務改善を、組織的に行う体制が構築されているのです。そして、このようなプロセスや運用を、様々な業務の中で活用しよう、という提案なのです。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係として見た場合、このように、経営者自身の問題だけでなく、会社組織の問題としても自省し、経営判断や業務の精度を高めていこうという姿勢や能力が、一つの評価ポイントになります。
これは特に、リスクを取ってチャレンジするのが経営者の仕事であるからと言って、何も考えずにむやみやたらにリスクを取るのではなく、すなわち博打やギャンブルではなく、リスクをコントロールしたうえでチャレンジすることがビジネスですから、まっとうなビジネスマンを選ぶ際に重要な要素である、と評価できるのです。
3.おわりに
会社組織として自省を機能させるうえで、重要なのは経営者自身です。経営者自身が、率先して会社業務の自省を行い、自分たちの業務を振り返ることが、会社全体で自省に真剣に取り組むうえで重要です。
どう思いますか?
※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。