ケンタウルス、露をふらせ!
日付が変わった8月13日、真夜中の1時。
寝る前に、ペルセウス流星群をみようと思った。夫を誘おうと思ったが、夫はこのところの忙しさから、疲れも溜まっているようで、早々と寝てしまった。子どもたちは…まぁ、いいか。
子どもらが小さいころは、折にふれて、家族みんなで星をみていたなぁ。娘も息子も、あまり星には興味がないし、毎日が忙しく過ぎていく。知らぬ間に、その習慣は廃れてしまった。星をみることは、わたしと夫の、数少ない共通の趣味だ。夫が望遠鏡をセッテイングしてくれ、土星なんかをみたなぁ。そういえば、ガリレオ衛星に、一番感動してたのは、わたしの母だった。また、望遠鏡、引っ張り出してみようか。
そんなことを思いながら、庭先で、ひとり空を見上げた。しばらくぼんやりする。目が暗闇に慣れてくる。そうしたら、いつもより空が暗く感じた。近くの24時間稼働の工場がお休みだからだろうか。
見上げた西の空に、くっきりと夏の大三角の星たちが光っている。夏の大三角は、こと座のベガ(織姫)とわし座のアルタイル(彦星)それから、はくちょう座のベネブを結んでできるもの。おっきいなぁ。よくみえないが、その間を天の川が流れているはず…
はくちょう座は、北十字とも呼ばれる、見事な十字架だ。あぁ、3等星のアルビレオがしっかり見える。アルビレオは、はくちょう座のくちばし部分の星たち。望遠鏡でみると、青と黄の美しい二重星だとわかる。このアルビレオ、空が明るいと、よくみえない。やっぱり、今日は空がいつもより暗いんだな。
東の空に目を移すと、物静かに、秋の星座たちが登ってきていた。秋の星は暗い星が多いから、パッと秋の四辺形をみつけられる。ただ、4つの星の名前は忘れてしまったなぁ。ペガスス座だったっけ。
今度は、広く西側をみられる位置に移動して、空を見上げた。再び、夏の大三角。首が痛い。でも、そんなに長居はしないつもりだから、このままでいいや。
補聴器は外してきたから、とても静かだ。いつもの耳鳴りはあるけど、落ち着いていて、ただ、自分と星空が対面している心持ち。
がらんとしているのではなく、すすきが揺れ、りんどうの花が咲き乱れるような…星空かぁ。
想像して、ふんわりした気持ちになる。このところ、宮沢賢治さんの『銀河鉄道の夜』に浸っていて、この物語にまつわるものを、いろいろ考えている。
「幸せ」や「死」について…いつもは覗かない、自分の心の奥底へ、旅するような気持ちで。
まだ、カタチにはならないけれど、なんだか、より楽しくなってきた。朗読するから、『銀河鉄道の夜』の世界を、もっと知りたいとなり、遅ればせながら、宮沢賢治さんって、どんな人だったんだろうと、思うようになった。
いつもわたしは、作品を味わうとき、最初からは調べない。まずは、自分自身でフラットに、その作品を感じたいからだ。それから、少しは調べるんだけど、こうも思う。
宮沢賢治さんをはじめ、作家さんたちは伝えたいことがあり、その作品を創るのだろうけれど、受け取り手にも想像する、自由をくれているはずだ。だから、わたしは、素直にわたしの感じたように、『銀河鉄道の夜』を朗読したらいいんだろうなぁって。
あっ。アルタイル近くに流れ星!明るいや。
ひとつみえたな。でも、もうひとつくらいはみたい!
また、ぼんやり空を眺める。気温は28度くらいかな。やわらかに風が吹いて、気持ちがいい。蚊にはまだ刺されていないみたい。気のせいかもしれないけれど、蚊がめっきり減った気がする。猛暑だからかな。いや、もう、あちこち刺されていたりして…
あっ。今度は、はくちょう座辺りに流れ星!長め。でも、お願いごと3回は無理かぁ。
そんなことを思ったら…
「ケンタウルス、露をふらせ!」※
ふいに、誰かが、頭の中で叫んだ。
あぁ、流れ星のことだったのかなぁ。まさに、「露」みたいもの。「天河石の板の上」⭐︎を流れる雨の雫みたいだもの。とってもうれしくなって、わたしも心の中で、思いっきり、叫んだ。
「ケンタウルス、露をふらせ!」
あっ、今日はペルセウスかもね…でも、まぁ、いいか。
※「ケンタウルス、露をふらせ!」
『銀河鉄道の夜』に出てくるセリフ
⭐︎「天河石の板の上」
『うろこ雲』宮沢賢治作に出てくる表現
✳︎流れ星をみたい方へ✳︎
流れ星をみるときは、望遠鏡はいりません。暗く広く空が見渡せる場所で、寝っ転がって、空をぼんやりとみるのがおすすめです。そのとき、車が来たりしない、安全な場所でお願いします。できたら、月明かりがない日、流星群の活動が活発なタイミングがいいですね。
そして、現在みえやすい、ペルセウス流星群ですが、8月12日の夜から13日未明がピークだそうです。その前後でも、流れ星がみえやすいそうですよ。
流れ星、みえますように!
☆彡☆彡
ヘッダーの写真は、冬の流れ星です。素人カメラマンさんからお借りしました。ありがとうございました♪