kT@物理・化学

大学で学ぶ物理の基礎的なところを、ごまかさず、かつ話の流れがわかりやすいように解説して…

kT@物理・化学

大学で学ぶ物理の基礎的なところを、ごまかさず、かつ話の流れがわかりやすいように解説しています。スキ、引用、サポート、コメント、とても嬉しく思います。教科書を作ることが目標です。よろしくお願いします。

マガジン

  • 量子力学

    観測を土台として,本質を理解しやすい形で量子力学を組み直し,色々な応用まで扱う予定

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    どの記事も気に入っていますが特に面白いと思うおすすめ記事です.

  • 物理数学

    物理をやっていると出会う便利な数学たち

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    物理に関する単発記事など

  • 統計力学

    ミクロとマクロのあいだに現れる確率論的な考え方

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自己紹介&サイトマップ

私は物理系を自分で作って実験をしている研究者です.この記事を書き始めた時点では化学専攻の博士課程の大学院生でした.noteでは,私なりの話の筋の立て方と私の言葉で,主に物理の基礎を伝えていきます.夢は,教科書を作ること.分野ごとにマガジンに連載していきます. 現在の内容は次の通り.(随時更新) 序: 熱力学の目標 【熱力学1】状態の指定,温度とは何か【エネルギーと温度】 【熱力学2】自由エネルギー【熱力学におけるポテンシャル】 【熱力学3】自由エネルギー減少則【不可逆過程

    • 昔,noteは数式が書けなかったので,その頃は数式を画像として扱うことでなんとかやっていましたが,今は数式に対応しているので古い記事をそれに合わせて書き換えたいと思っていました.ようやく過去の全記事を数式に対応させました!これで美しくなりました.↓before/after

      • YouTubeに物理の問題を解くチャンネルを作りました.どうかよろしくお願いします...!https://www.youtube.com/@kT_phd 最新の動画はこちらです.テンポよく見られるショート動画の作成が今は気に入っています. https://www.youtube.com/shorts/sA2rTQXW2Bw

        • 【量子力学5】物理量と量子操作①【運動量と波動関数】

          量子力学は,非実在論に根ざした理論で,抽象的なヒルベルト空間上で状態を記述しなければならないわけです.それでは私たちの住むこの時空間での運動といった概念はどこへ行ってしまったのでしょうか? 私たちが物理的な系の運動を調べるとき,系から出てくる何らかの物理量を観測するか,もしくは系に何かを入力して出力を観測するか,どちらかです.系に何かを入力して観測をするような場合は,状態を操作することで所望の情報を取り出すといった芸当もでき,より多くの情報を引き出すことができます.いずれに

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        • 【量子力学5】物理量と量子操作①【運動量と波動関数】

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          16本
        • 熱力学
          11本

        記事

          【量子力学4】運動の法則【シュレディンガー方程式】

          物理の理論は,物理系から得られる情報の構造を与えるだけなく,現実の系の特徴に対応づけ,得られる情報が時間的にどのように変化するかを記述できなければなりません.量子力学では情報の構造が古典力学のものとは根本的に異なっていたということを前回までで見てきたわけですが,この構造の上に時間変化を扱う理論も必要になってくると言えます.そこでここでは一般的なダイナミクスを理論の中に入れることを考えます. ユニタリ変換の表現孤立系では全確率が保存して欲しいことから状態ベクトルの内積を保存す

          【量子力学4】運動の法則【シュレディンガー方程式】

          【量子力学3】密度演算子と測定の理論【量子情報】

          前回は準備された量子状態に対して測定をすることを考えていましたが,どのような状態に準備されているか知らないけれど測定をするということもよくあることです.例えば,熱平衡状態にある系を測るときや,測定したがその結果を知らないときはこのような状況になっています.このような状態を混合状態と言います.(対して,状態の知識が完全な状態は純粋状態と言います.)混合状態の記述方法を今回は考えていきましょう. 密度演算子状態がわからないときは,古典確率で重みをつけて状態を足していけばよいとい

          【量子力学3】密度演算子と測定の理論【量子情報】

          【量子力学2】量子状態【重ね合わせの原理】

          「量子状態は同じ状態にあっても射影演算子で分解する仕方が何通りもある」という考え方に適した数学の舞台としてベクトル空間が挙げられます.あるベクトル空間の元で状態を表すことにし,そのベクトルをP. ディラック(Paul Dirac)はケットベクトルと呼び$${\ket{\cdot}}$$のように書きました.ケットなるものは単なる記法ですがうまくできていて式の見通しが非常によくなります. 重ね合わせの原理前々回ベルの不等式について考えたときと同じ設定でスピン角運動量について考え

          【量子力学2】量子状態【重ね合わせの原理】

          【量子力学1】物理系の状態と観測の記述方法【ミクロとマクロの間の切断】

          ベルの不等式の破れによって,観測していない量については定まった値を持たないということがわかったので,まずは物理量を観測するということの意味をあらためて考えてみましょう.それから,量子力学ではどうやって系の状態を記述すれば良いのか考えましょう. 古典力学における状態と観測古典力学でも,観測しなければ物理系がどんな性質を持っているかわからないことは普通です.しかしこれは単に観測する前は我々が無知なだけであって,物理量はあらかじめ決まった値を持っていて,観測によってそれを見るだけ

          【量子力学1】物理系の状態と観測の記述方法【ミクロとマクロの間の切断】

          序:量子力学的な世界観【ベルの不等式の破れ】

          自然界に起こる現象の諸々には何かそれより先に原因があるに違いない,と昔から人間はそのように考えてきました.原因を辿っていったときに,明らかに観測できるものだけに原因を求めていくものが科学の扱う領域であり,「再現可能な経験」が科学の境界条件と言ってよいかと思います. 天体などのマクロな物体の運動がニュートンの運動方程式で非常にうまく記述できたことが今の物理学の源流とされています.運動方程式は時間に関しての有限階の微分方程式の形ですから,現在の位置と速度,それから力という概念を

          序:量子力学的な世界観【ベルの不等式の破れ】

          ポスドクの職探し

          3月から私は所属が変わり,新しい研究を始めたところです. 去年学振PDも出していて,せっかく運よく通ったのですが,結局別の研究室を選んでしまいました.申請書を書く時間があまりなくて,正直なことをいうと,通るとはあまり思っておらず,別の研究室のポストも探していたら,より興味の一致するところを見つけてしまったのです.それでいて,学振PD通りましたと報告して喜ばせてしまったため,受け入れ先の先生には申し訳ないことをしました. 申請書もせっかく書いたので,目指す研究者像として書い

          ポスドクの職探し

          前回(半年も前になってしまいましたが)の記事(https://note.com/1380649/n/n5d29740760e5)の続きを新しい記事で書こうかとずっと思っていましたが,意外とそんなに書くことがなかったので,追記して更新しました.今年はたくさん更新できたらいいなあ...

          前回(半年も前になってしまいましたが)の記事(https://note.com/1380649/n/n5d29740760e5)の続きを新しい記事で書こうかとずっと思っていましたが,意外とそんなに書くことがなかったので,追記して更新しました.今年はたくさん更新できたらいいなあ...

          微分方程式の数値解析②【反復法のPython上でのプログラミング】

          前回,偏微分方程式を解くための方法としてクランク・ニコルソン法というものまで紹介しました.今回からは,そのクランク・ニコルソン法を用いて,次の具体的なフォッカー・プランク方程式を解く問題をPython上にプログラミングすることを考えます.一風変わったフォッカー・プランク方程式ですが,これは以前の記事で登場した,「カエル」の分布についての時間発展方程式です. $$ \newcommand{\pd}[2]{\frac{\partial #1}{\partial #2}} \ne

          微分方程式の数値解析②【反復法のPython上でのプログラミング】

          偏微分方程式の数値解析①【陽解法と陰解法とクランク・ニコルソン法】

          偏微分方程式は物理の問題でよく出てきますが,それが解析的に解けるというのはそう多くありません.しかし,微分方程式というのは時間や空間をわずかに変化させたときに物理量がどのように変化するかを表した数式ですから,少しずつ時空間のステップを刻んでちまちまと計算すれば積分した結果を近似的には知ることはできるはずです.これを手計算でやるのは途方もないので,計算機にやらせようというのが「数値的に微分方程式を解く」ということです. 偏微分方程式の離散化本稿では例としてフォッカー・プランク

          偏微分方程式の数値解析①【陽解法と陰解法とクランク・ニコルソン法】

          【物理数学】フォッカー・プランク方程式【確率論③】

          前回,マスター方程式を導きましたが,マスター方程式は時間微分と状態の積分からなる方程式なので大きな自由度の系を扱うにはなかなか複雑なものでした.今回は,状態の間の「近さ」に着目することで,マスター方程式を形式的に微分方程式の形にすることを目標にします.ただし,状態間の距離を考えることに意味がないような状況もあるので,位置や密度など,定量的に状態間の「距離」を測れるようなものに限定して考えることになります. クラマース・モヤル方程式前回導いたマスター方程式とは,過程がマルコフ

          【物理数学】フォッカー・プランク方程式【確率論③】

          【物理数学】マルコフ過程とマスター方程式【確率論②】

          マルコフ(Markov)過程とは,過去の記憶とは独立に次の運動が起こるような確率過程です.物理現象は歴史によらないということ,たとえばボールの運動はそのボールがどの工場でどう生産されたかにはよらず,今の状況さえ考えればよいということは,ある種物理学の信念とも言えるでしょう.そのため,マルコフ過程は物理学の基本過程と言ってもよいほどで,物理的な過程を理想化するときにしばしば重要な役割を果たします. マルコフ過程は条件付き確率を用いて定義されます.前回定義したように,過去のいろ

          【物理数学】マルコフ過程とマスター方程式【確率論②】

          【物理数学】確率過程の定式化【確率論①】

          ニュートンの運動方程式によって理解される運動というのは,空間が完全に空っぽであるという理想化が実は入っています.天体の運動なんかはその理想化が十分成り立ち,非常に規則的な運動として捉えることができます.しかしながら,そのような空間は実際にはどこにもなく,現実には多くの分子が飛び交う中を系は運動し,それらとの衝突によって運動はゆらぎます.したがって,何らかのゆらぎにさらされていない物理系は現実に存在しないといってよいでしょう. ゆらぎに駆動されて,系の運動の軌道は細かく見れば

          【物理数学】確率過程の定式化【確率論①】