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【臨床栄養学】消化器疾患

病気は患ってからでは遅い。病気を患ってから、今までの食習慣や運動をしておけば良かったと後悔することになる。闘病生活が始まった後は通院と治療に時間とお金を割かれ、この病気は本当に治るのかと不安や心配にも襲われる。幸せの定義は人それぞれだとは思うが、その幸せな状態を達成するためには身体、精神、自由な時間、お金などが必要不可欠だ。病気になってしまうと、それらのリソースが問答無用で奪われてしまうためQOLが一気に下がってしまう。
こんなことは百も承知だとは思うが、病気を患っていない内はどうも現実味が湧かない。現実味が湧かないから食生活改善などの行動に繋がらない。ではどうしたら現実味を帯びるか。それは病気のことを知識として知っておくということが重要だと自分は考える。
この記事では臨床栄養学の教本を参考に、病気の概要とその症状、治療法についてまとめていきたい。自分の将来に起こり得る症状と、どんな治療法が待っているのか。それらを知っておくだけで日々健康的に過ごそうと思えるはずだ。

消化器疾患概要

消化器は、口唇から肛門まで連続する1本の管腔臓器で、食物を摂取する/摂取した食物を栄養素に分解する/栄養素を血液中に吸収する/消化しにくい残りの部分を体から排泄するという働きを担っている。食道、胃、腸などの消化管、および付属器官である唾液腺、肝臓、膵臓などの消化器系で構成されている。腫瘍潰瘍、炎症などの器質的疾患だけでなく、便秘や下痢、逆流性食道炎などの消化管運動不全に伴う機能的疾患も多いのが特徴である。

口内炎

・疾患の概要
口内炎は口腔内の粘膜(舌、歯肉、唇や頬の内側)などにできた炎症性疾患の総称である。

・症状と原因
症状は痛み、出血、食事が染みる、口腔内の乾燥や腫れ、味覚が変わる、会話がしにくいなどで、さまざまな働きが障害される。
原因は下記の4つが挙げられる。
①最近やウイルス感染
細菌感染や免疫異常など、単純ヘルペスウイルスによる急性ヘルペス性口内炎カンジダが口腔粘膜に増殖する場合がある。
②全身状態の低下
過労などの体力低下時、胃腸障害、ビタミン不足(ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビオチン、ナイアシン、葉酸など)や亜鉛不足、貧血などの低栄養状態の時など
③機械的損傷
義歯が合わない、噛んだ時に粘膜に当たる、熱いものを食べ熱傷を起こした時、口腔内の粘膜が乾燥している時など
④がんの治療
放射線療法や化学療法の副作用など

・治療
口内炎は局所的原因によるもの、全身的原因によるもの、原因不明のものの三つに分けられるが、歯垢、歯石、う蝕、歯周病、不潔な義歯は口内炎の原因あるいは増悪因子となり、まずこれらの局所的因子の治療や除去が必要である。
口内炎の原因に応じて抵抗薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬による治療を行う。
ビタミンやミネラルが原因で本疾患に生じていることも考えられ、食事療法も必要なる場合がある。

胃食道逆流症

・疾患の概要
体内の気管にある胃から食堂への逆流防止機構が十分に作用せず、胃内容物が食道に逆流する病体を胃食道逆流症と呼ぶ。逆流性食道炎はその代表疾患で、逆流内容により粘膜が傷害されることにより発症する

・原因
食事の内容、肥満、加齢、体型などによって下部食道括約筋等の食道を逆流から守る仕組みが弱まったり、胃酸が増えすぎることで起こります。
<脂肪の多い食事、食べ過ぎ>
脂肪分のとりすぎや食べ過ぎによって、何も食べていない時に下部食道括約筋がゆるみ、胃液が食道に逆流してしまうことがあります。
脂肪の多い食事をとった時に十二指腸から分泌されるコレシストキニンというホルモンの働きや、たくさんの食事で胃が引き伸ばされることで、下部食道括約筋がゆるむと考えられています。
<タンパク質の多い食事>
タンパク質の多い食事は消化に時間がかかり、胃に長くとどまるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。
<加齢>
年をとると、下部食道括約筋の働きが悪くなります。
また、食道のぜん動運動、唾液の量なども少なくなるため、逆流した胃液を胃に戻すことができなくなります。
<背中の曲がった人>
背中が曲がると、おなかが圧迫され、胃の中の圧力が高くなるため、胃液の逆流が起こりやすくなります。
<肥満>
肥満の人は、逆流性食道炎の原因のひとつである食道裂孔ヘルニアになりやすいことが分かっています。
また、腹圧が上がることで、逆流しやすくなるともいわれています

・症状
胸焼け、酸っぱいまたは苦い胃内容が咽頭まで上がってくる呑酸、咽頭炎、嚥下などである。逆流が高度の場合、嚥下困難や出血、誤嚥性肺炎などを生じる場合がある。

・治療
薬物療法では酸分泌抑制が最も重要でそれに関した薬物が投与される。薬物療法でうまくいかない場合は、外科的治療が選択され、噴門形成術などの逆流防止術や、食道切除術などが施行される。

胃・十二指腸潰瘍

・疾患の概要
胃・十二指腸潰瘍では粘膜を阻害する攻撃因子と粘膜を保護する防御因子のバランスが崩れ、胃・十二指腸壁が自家消化して潰瘍を形成するとされている。近年では薬剤(非ステロイド性抗炎症薬)による薬剤性潰瘍や、ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染が主な原因とされている。

・症状
自覚症状では心窩部痛(みぞおち)が最も多く見られる症状で、胃潰瘍では食後の痛み、十二指腸潰瘍では食後数時間から空腹時の痛みが特徴的である。その他、悪心、嘔吐、腹部膨張感、胸焼けなども高頻度に見られるが、全く無症状の場合もある。

・合併症について
①穿孔
潰瘍が深くなると、胃や十二指腸の壁に完全に穴が開く穿孔という状態になることがある。穿孔すると腹部全体の激しい痛みと出血や嘔吐が起こる。
②狭窄
幽門部や十二指腸の入り口の部分に慢性的に潰瘍の再発を繰り返すと、潰瘍の傷跡が固く、壁が厚くなり内腔が狭くなる狭窄となる。凶作になると食物の通過障害をきたすことがある。
③出血
潰瘍が深くなると出血を伴うことが多く、吐血したり下血となることがある。

・治療
潰瘍治療は合併症コントロール、潰瘍の初期治療が大切である。
出血、穿孔などの合併症が起きている場合はまずそれらの合併症のコントロールが最優先。穿孔に対しては緊急手術が原則。出血は最も多く見られる合併症で、まず内視鏡的止血処理を行う。それでコントロール困難な場合は頚動脈的塞栓術などの手術を行う。ピロリ菌が原因の潰瘍では除菌治療を行う。

クローン病

・疾患の概要
クローン病は10−20歳代の若年者に好発し、再燃と寛解を繰り返し慢性的に経過する難治性の炎症性超疾患である。動物性脂肪やタンパク質を多く摂取する、喫煙などでリスクが上がることがわかっており、先進国に多い病気だが、はっきりした原因はわかっていない。遺伝病ではないものに、遺伝的な要因が関与しているとされており、複数の遺伝子や環境因子により発症すると指摘されている。

・症状
腹痛、下痢、肛門病変、血便、発熱、全体倦怠感、食欲不振、体重減少、貧血などが挙げられる。

・治療
活動期は入院後1-2週間は絶食とし、中心静脈栄養管理で腸管安静を図る。炎症が改善したら成分栄養剤や食事を開始する。

肝炎

・疾患の概要
何らかの原因で肝臓に炎症が起こり発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状を来たす疾患の総称である。日本ではウイルス性による肝炎が80%を占める。日本では特にA、B、C型が多い。

・原因
肝炎ウイルスは、血液や体液を介して人から人へと感染するものと、不衛生な水を含めた飲食で感染するものがある。A型とE型は飲食で感染し、A型は牡蠣や二枚貝など、E型はイノシシやシカやブタなどを加熱不十分に食べたために感染する。B型とC型は血液や体液を介し、感染経路として挙げられるのは「感染者の血液を輸血」「感染者と性交渉」「感染者と注射針・注射器の共用や注射針を誤って刺す事故」「感染者が使用した器具で入れ墨やピアスの穴開けをした場合」などのケースだ。「予防対策を講じずに、ウイルスに感染した母親が子どもを産んだ」などの経路も考えられる。

・症状
通常発病は風邪のような症状(発熱、倦怠感、嘔吐、下痢、関節痛、頭痛など)で始まる。そのため感染初期は風邪と勘違いされることも多く、自覚症状がまったくないケースも少なくない。その後皮膚や白目の部分が黄色くなる「黄疸」が現れ、尿はビール瓶のような茶褐色、便は灰白色となる。肝炎に症状が見られないことが多いのは肝臓の予備力の大きさが理由だが、早期に治療することが肝硬変や肝臓がんに進行するのを予防するために重要だ。

・治療
A型やE型など急性肝炎は、入院して安静を保ち負担を避けて肝臓がダメージから回復するのを待つ。重症化や劇症化を生じたら症状に応じた治療追加が必要である。かつてはB型やC型の慢性肝炎の治療は、自分の免疫の力を高めてウイルスの増殖を抑えたり排除したりすることに効果のある「インターフェロン」という薬が使われていた。しかし最近はB型慢性肝炎に対して直接B型ウイルスを阻害する「核酸アナログ製剤」が有効であり、C型慢性肝炎では「直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)」と呼ばれる経口薬投与でウイルスをほぼ完全に除去できる。

脂肪肝

・疾患の概要
脂肪肝とは肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態で肝細胞の30%以上に脂肪空砲が認められる状態をいう。過食などにより肝臓での脂肪合成が増加することにより生じる過栄養性脂肪肝と、タンパク質の摂取不足により肝臓から末梢組織へのリポタンパク質の輸送が障害されることで、肝臓内に蓄積させる低栄養性脂肪肝が認められている。
肥満、内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性などの因子が加わることで心血管疾患の発症リスクが相乗的に高まることが報告されている.

・症状
脂肪肝により倦怠感や疲労感を自覚することもあるが、症状を自覚することは稀である。

・治療
適正な食事となる栄養療法と運動療法になる。アルコールが原因で脂肪肝となっている場合は、アルコール摂取を減らすことが重要である。

胆石

・疾患の概要
胆石は胆管や胆嚢の中に発生する結石のことである。
大腸菌の感染、赤血球が破壊されることで起こる溶血性疾患、肝硬変、食物繊維やタンパク質が少なく脂質や糖質が多い食事、それに伴う肥満などと考えられており、コレステロールを成分とする結石(コレステロール結石)が最も多く見られる。また加齢とともに発症率は高まる傾向にあるため、中高年以上の発症が多く、コレステロール結石は特に中年以降の肥満の女性にできやすい。

・症状
胆石による症状は食後30−60分くらいに右上腹部、背中や右肩などに痛みが出現し、悪心、嘔吐、発熱などを生じる。

・治療
疼痛を起こしている胆石症では、外科療法が選択される。自覚症状がない場合は薬物療法の場合もある

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