わたしの本棚142夜~「人生を豊かにする歴史・時代小説教室」
とてもわかりやすい本で、面白かったです。3人の作家の先生(安部龍太郎氏、門井慶喜氏、畠中恵氏)のデビューまでの努力、目指す方向をオール読物編集長の川田氏がインタビュー形式で聞き書きされています。同時に、新人賞応募者向けの実践的アドバイスも書かれています。何より、歴史・時代小説の創作過程が現代小説とは全く違うというのがよくわかります。実際の歴史の出来事や人物をベースに書かれたものが歴史小説、舞台は過去だけど、登場人物や出来事は創作された部分が大きいのが時代小説と区別されるそうです。
☆「人生を豊かにする歴史・時代小説教室」 安部龍太郎、門井慶喜、畠中恵著 文春新書 800円+税
1・畠中恵氏
2001年、「しゃばけ」で、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。最初は漫画家志望だったそうで、都築道夫先生の「小説講座」に通う。時代小説を書くときは、博物館で実物をみることを心がけていることなど世界観の広がる話を軽快に語られています。
2.門井慶喜氏
2003年、「キッドナッパーズ」で、オール読物推理小説新人賞でデビュー。2016年、評論部門で日本推理作家協会賞、2018年「銀河鉄道の父」で直木賞受賞。時系列の整理にはエクセルを使うなど、資料の整理の仕方から、歴史小説の目的は「人間」を描き感銘を与えることであり、「歴史」と「小説」で迷ったときは、史実を捨てよとの鋭い指摘でした。
3.安部龍太郎氏
オール読物新人賞、小説新潮新人賞の最終候補になり、1990年「血の日本史」で単行本デデビュー。2005年に「天馬、翔ける」で中山義秀文学賞、2013年「等伯」で直木賞受賞。デビューまでの経緯を一番語っておられました。徳川家康はお市の方と婚約していた、という説などを披露し、歴史解釈に100%の正解はないことを示唆しています。
3人の作家の先生それぞれ、作家になった経緯などが大変だったにもかかわらず時にはユーモア交えて語られています。そして、3人の先生共通しているのは、歴史時代小説を書くときは、時空が経っても、舞台となった現場を取材することを薦めておられます。
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