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もしあなたが生きていたら

ようやく文字に残して、
気持ちと向き合えるぐらいの月日が
経ったように思う。


就活を目の前にしていた3月の初め。
ゆっくりお風呂に入っていた時、
その知らせを聞いた。

頭に浮かんだ言葉は、


「ついに人を殺した」。


頭が真っ白になって、
すぐ、
思い浮かんだ言葉だった。
拒絶して、
逃げて、
それでも切りきれないのは、
彼女の人間としての一部が
私にとっては大きすぎたから。

でも、
それすらもついに消えかけようとした。
あまりに受け入れられない現実だった。

立場上葬儀には出られない彼女と、
出たくないもう1人の思いを背負って
私は1人葬儀に行った。

後悔したくなかった。
最後のお別れと感謝の気持ちを伝えたかった。
伝えずに別れたら、
もう私は一生彼女のことを許せないと思った。
最後に顔を見たかった。

私たちのことをどれだけ思ってくれていたのか、
それまで知りながらも、
関係性もあって何もできなかった。
伝えられなかった。

あの時、
何かできていたら、
なぜ彼女の肩を持つような行動ができたのか、
あの時会ったあの瞬間何を思っていたんだろう。
立場や思いとの葛藤、
苛立ち、
憤り、
彼女への想い。
それが、紙に、しるしを押せなかった
理由だったんだろう。


今あなたが生きていたら、
今もあなたが生きていたら、
いいお肉をもらったから食べにこない?と、
美味しいお酒もらったから飲む?と、
3人で会っていたかもしれないな。

その時にこの話をしたら、
どう答えてくれたかな。

私たちと似た感情を持つ人だったから、
きっと欲しい言葉や、
誰よりも怒ってくれたんだろうな、

きっと、
自分はこうだったとか、
色んな経験の話聞けたのかな、

今私はここに住んでいなくて、
何をしていたんだろうな。

あなたが生きていたらと、
これからも何度考えるかわからない。
あなたの苦しみと
絶望と
孤独と
悲しみと
劣等に気づくことができず、
ただ世界の綺麗な部分だけ見て生きてきた私が、
もっと早く世界は汚いんだと、
どうしようもないんだと気づいていたら、
彼女にかける言葉が変わっていたかもしれない。

もっと早くに、
言葉を伝えられる自分になれていたら、
彼女の行動も変わっていたかもしれない。
それが正しいとは言わない。
でももっと、何か、違う生きる道が、
あったのかもしれない。

あなたが不幸せだったとは絶対に言わない。
最後まで、あなたらしかったのかもしれない。

あなたの気持ちは私には計り知れないし、
あなたにとってそれが
1番辛くない方法だったのかもしれない。

それでも私は、
この世界にあなたのような人が、
生きていて欲しかった。

どこかで元気に生きていて欲しかった。

あの100%のグレープフルーツジュースを見ると、
あの時の記憶が鮮明に、
あなたと過ごした5年弱が、
今もそこにあるように思い出される。
出会ってからだと9年ぐらいかな。

あのころの思春期の記憶には、
全てあなたがいて、
私たちの人格形成に間違いなく、
影響していて、
今の私を作ったんだよ。

本当にお世話になりました。
これからも、よろしくね。


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