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自分に素直に食べる

先日の受診時に、血液検査の結果が気になるということで、お薬を増やされることになった。
自覚症状がまったくなかったので、ちょっと膝カックンとなってしまった。


もう、これ以上、受診科を増やしたくないし、お薬も増やしたくないし、それに、体調にも大きな変化はないので、診察室の扉を開けるや否や、

「こんにちは~~。
よろしくお願いします。はい。とくに変わりはありません~~~。」

と、毎回、ドクターに先制パンチを繰り出すことにしている。

そんな私の目を、まつ毛の長~いおじさまドクターは、グイっとのぞきこみ、血圧を測ったり、問診をしたり、検査データを見たりしながら、

「まあ、これまでと同じお薬でいきましょうね。」

というのが、お決まりのパターンになっていた。

このドクターの予約時刻というのがおもしろく、予約票にあるのは、13:00とか、13:15とかではなく、なぜか、13:17とか、13:03とかなのだ。

いつだったか、予約時刻変更の電話を入れた時に、病院の予約変更の担当の人と、「まじか?この時刻?」と、大笑いしたことがあった。

なんで、そんなキリの悪い時刻設定なのか。
まあ、ちょっといらちな感じに見えるドクターではあるけど。
でも、説明もわかりやすいし、ちゃんとこちらの顔も見てくれるし、まあいいんやけどね。

しかし、今回はいつものパターンにはならなかった。
ドクターは、しっかりと私の目を見つめながら、なが~いまつ毛をパチパチさせて、お薬を増やす理由を伝えてくれる。

どんなに笑顔で、体調変わりなしを伝えたところで、数値には負けるんやなあ。

そうなんか~~。
そんなことになっとったんか~~。

とか、思いつつも、いつまでも驚いているわけにもいかないので、ドクターの提案を受け入れる。

しかたがない。

そう、しょうがない。

何回、この言葉を言ってきたことか。

もう慣れっこや。

いや、慣れっこちゃうけど、慣れっことでも思わんとしょうがない。

大丈夫や。わたし。大丈夫。

ただ、しかたないではすまないことに、ちょっと食べ物に気をつけなくてはならなくなってしまった。

これまでも、薬の副作用がお腹にきてしまうので、食べ物には随分と気を使ってきた。
でも、どうやら、さらに気を付けなくてはならないようだ。
自覚もないのになあ。

く~~~。

かき氷も、カレーも、ラーメンも、揚げ物も、ずいぶんと節制してきたのに、まだ、これ以上・・・。

とほほである。


まずは、断腸の思いで、職場の昼ご飯の量を調整してもらう。
この職場の昼ご飯が、たいへん美味しいのだ。
美味しいし、栄養バランスばっちりだし、しかも、あつあつ。
毎回、今日のメニューは何かなあ~と思いながらの出勤だった。
それを、調整しなくちゃならんのか~~。

これまでだって、その昼ご飯を美味しくいただくために、当日の食事はもちろん、前日の食事内容にも気をつけてきた。
食べたいなあと思っても、機嫌よく仕事をするために、そして、楽しくお昼ご飯をいただくために、食事をコントロールすることは、必要なことであった。
そして、私は、けっこう、そのコントロールを上手にしてきた。

前の日の昼は、控えめ。
前の日の夜は、あっさりもあっさり。
当日の朝は、あっさりちょっぴり。
当日の夜は、あっさり。

それで、体調も整い、職場のお昼ご飯を、堪能することができていた。

おまけに、そんな風に、コントロールできている自分が、ちょっと誇らしかったりした。
えらいなあとか、思ってた。
ようやってるなあ、ほんまに、とも思ってた。


しかし、ここにきて、もうそんなコントロールでは、どうにもならず、肝心かなめのお昼ご飯に、てこ入れをすることとなったわけだ。

これはショックである。
ここまで、こんなに頑張ってきたのに。
かなりのショックである。

である。
であるである。



が、いや、ちょっと、であるではないような。
なんだか、全然、であるではないような。

むしろ、気持ちが、めちゃくちゃ軽くなるのを感じてしまった。
肩の荷がおりるってこういうことなのか?
というくらい、肩からす~っと楽になっていった。

もう、しょっちゅう食べ物のことを考えなくてもいいんや。
バランスを考えなくてもいいんや。

大好きな昼ご飯は、少ししか食べられへんけど、それはそれでしっかり味わったらいいことやし。
それよりも、どの食事も、その時々の気持ちや体調に合わせて、考えたらいいんやってことが、嬉しくてたまらない。

職場の昼ご飯のために、そのほかのご飯を、いつのまにかないがしろにしてきたのかもしれない。

前の日の昼も夜も、当日の朝も夜も、それぞれに考えたらいい。
もう、職場の昼ご飯を基準に、考えなくてもいい。

お腹にいれられるものは、不自由になったのかもしれないが、むしろ、気持ちは、うんと自由になった。

もしかして、わたし、かなり無理をしていたのかも。

コントロールという名のもとに、無理を重ねていただけなのかも。

”やらねばならない”ということに、とらわれていたようだ。

”やりたいこと”よりも、”やらねばならないこと”を優先する。

長年の癖が、こんなところにも、出ていたなんて。

それを、こんな形で知ることになるとは、驚きである。

今は、毎回の食事を、自分の身体と相談しながら、その時に合わせたものを食べている。
ちょっぴり寂しいメニューにはなったかもしれないが、それでも、自分でこれにしようと決められる。
”これにしとかな”
というのと、
”これにしよう”
っていうのでは、同じものを食べていても、気持ちの満足度が大違いである。
自分で決めるって、こんなにも、気持ちを解放してくれるもんなんやなあ。

本当に、大事なことを見失っていた。

もっと、自分の気持ちや、身体を、大事にしてあげんとあかんなあ。

おりしも、昨日に読みあげた本が、
「自分のために料理を作る」  星野概念・山口祐加共著
だった。

「自分の中の、小さな自分にきいてごらん。」

しっかりと聞いてみるね。
こんなに楽になるなら、何度でも聞いてみるわ。







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